2008年にマイクロコンパクトカーとして登場したiQ。日本カーオブザイヤーやグッドデザイン賞に輝く一方で、販売は超不振だった。今ならEV専用車として再登板させたい筆頭格なのだが、なぜ当時は売れなかったのだろうか。iQの抱える良点と問題点の両面から、再評価していきたい。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ

■小さなボディに技術を詰め込む! まさに技のデパートだ!!

徹底的に無駄を排除して作り上げたIQ

 iQは、3mを切るボディ全長で、4名乗車のリッターカーに作り上げられた。フロントオーバーハングを530mm、リアオーバーハングを455mmと極端に切り詰めることで、ホイールベースを2m確保することに成功している。

 従来の「クルマ」の概念を大きく覆したiQには、様々な当時の最新テクノロジーが詰め込まれたのだ。特に短い全長と広い室内を実現するために、6つの技術が使われている。

 まずは、ディファレンシャルギヤ反転だ。エンジンとギヤの位置関係を反転させて、ギヤをタイヤと共にエンジンの前方へ配置した。そして、センターテイクオフギヤボックスと合わせて、フロントオーバーハングの短縮に役立っている。

 小さなスペースを最大限利用するために、燃料タンクにもこだわった。超薄型燃料タンクを前席の床下に収納し、リアオーバーハングの短縮に寄与している。さらに、前席シートバックを薄型にし、後席のスペースを確保した。前席の快適さを犠牲にしていないのも良いところだ。

 さらに工夫は続く。インパネは左右で非対称なものになり、助手席の足元空間を広げている。センター置きの超小型エアコンユニットも、助手席の居住性を高めるために、有効に働いているのだ。

 マイクロカーだからこそ、スペース確保に気を使い、スペースを生み出す努力を怠っていない。投入された技術を見れば、当時のクルマとしては安すぎる印象だが、軽自動車やヴィッツと比べると、価格の高さが際立ってしまい、販売は不調だった。

■iQ最大のネガは3気筒エンジンの仕上がり

 実際にiQを使ってみると、これはこれでアリだなと感じられる1台だ。2シーターのスポーツカーに乗っていると思えばお釣りが来るし、なにせ小さいのに4人乗りというのが良いところ。

 最小回転半径3.9mや、意外と広い室内空間を見て、興味を示すユーザーも大勢いた。しかし、販売には繋がらないのがiQの泣き所だ。その原因は、試乗時に感じる不快なアレにあった。

 それは、1,000㏄モデルに搭載される1KR型3気筒エンジンが作り出す「振動」だ。1NRの4気筒1.3Lは問題が無いのだが、3気筒は乗っている間、シートとステアリング全体がブルブルと震えだす。

 3気筒だから、こんなものと言われてしまえばその通りなのだが、試乗せずに売ろうものなら、納車後にほぼ必ずと言っていいほど、ユーザーからの「ご意見」が入ってくる。iQは売る前に試乗させなければ安心して売れないクルマになってしまった。そして乗れば乗るほど、多くの場合NGが出てしまう。

 技術は高いのだが、ヴィッツ以下の車格のクルマにヴィッツ以上のお金を払うかというと、当時は難しいものだった。特に、売り手側がiQの3気筒モデルにネガを多く感じてしまったのが、iQを販売不振に導き入れた、最大の要因なのである。

■振動が無ければこんなに気持ちの良いクルマはない

運転に不慣れなドライバーでも、安心して運転できる、iQの魅力は高いだろう

 iQに乗っていると、クルマが自分の手足のように自在に動くのを感じる。3気筒の振動問題だけでも改善できれば、iQが売れる道はまだ残っているに違いない。

 そこでEVだ。EVなら、エンジン独特のあの振動は皆無。bZ4Xよりも、理想形のEVに近いのが、iQのパッケージングである。

 少人数の移動手段として、コロナ禍以降、クルマへの注目度は高まるばかりだ。運転に不慣れなドライバーでも、安心して運転できる、iQの魅力は高いだろう。

 そしてネガを払拭できる、EVとのタッグはぜひ見てみたいものだ。マイクロカーへの注目は、今後も高まり続けるであろう。

 そんな時、iQのBEVがあれば、トヨタは安泰、販売店も潤うはずだ。2016年に販売を終え、8年が経過する。今こそiQ復活の時期がきているぞ。

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