ハマダさんは商用車専門のタイヤサービスマンですが、もちろん接客も担当します。お客さんの中には、なかなかクセの強い人もいて、今では忘れられない思い出に……。そんなエピソードをご紹介しましょう。

文・イラスト/ハマダユキオ、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部

タイヤの取り扱いメーカーを取り違えた話

多くのお客さんと接するタイヤサービスマン。お客さんの中にはクセ強めな人も……

 店舗に限らず現地での出張作業で我々は多くのお客さんと接します。お客さんには業種に関係なくさまざまな方がおります。

 カスタマーハラスメント的なこともありますが、ここでは過去にあった想い出の「ちょいクセ強め」のお客さんのお話をしたいと思います。

 約20年前の出来事です。店舗で作業していると16輪の低床台車を引っ張って来た見慣れないカラーのトラクタが来店。ドライバーさんももちろん見たことなかったので、一般ユーザーか他店舗取引さんかと思い対応しました。

「おう! 台車のタイヤくれよ!」
「はい! ありがとうございます! ちなみに何本です?」
「あ〜外側4本ダメだからよ、サラ(新品)を中に入れて中のを外に出してくんね?」
「ありがとうございます! パターンは縦溝でいいですか?」
「おう! 同じヤツな」

 台車装着のタイヤサイズの縦溝の在庫は4本あったので、

「在庫もあるのでこの作業終わったら次始めますね。ちなみにお支払いは現金ですか?」
「おう! 同じヤツ買うから安くしろよ。同じヤツな!」

 この時の「同じヤツ」は、私は縦溝というジャンルとタイヤサイズ、チューブレスタイヤが同じという意味だと思ってたんですね。

 ただ多少違和感があったので、

「縦溝ですよね? 在庫ちょうど4本あったので大丈夫ですよ。いま値段出します」
「おう、そうA(他社)の縦溝な!」

 当店はメーカー直営店ですので他社メーカーさんのタイヤは在庫は当然無いのですよ。

「あ、A社さんですか? ウチはB社がメーカーなのでそのA社さんのタイヤは在庫してないんですよ」
「あ~!? どーゆーこと? ふざけんなよ、オメー在庫あるって言ったじゃねーか!」

「同じタイヤ」という意味はサイズ、パターンだけではなくメーカー名も含まれる場合も

 当時勤務してた店舗は道路沿いの看板、店舗の上にメーカー名、全体的なカラーもその他社メーカーのイメージカラーは1色も入っておりませんので、看板指しながら、

「あ、ウチはB社のメーカー直営店でA社さんのタイヤは取れなくはないですけど、すぐには揃えるのは厳しいですね……」
「は!? いや、オレ知ってんだよ! この店はAのタイヤ置いてるんだよ! 出せよ、なぁ!! Aのタイヤはこじった時によくヨレるからハネない(バースト)んだよ! B(ウチのメーカー)は硬くてダメだ!!」
「申し訳ないです! A社さんのタイヤが良いのでしたら、この先に(他メーカー系の店舗情報と道順を教えました)たぶん対応してくれるのでそちらで……」

 あとにも先にもお客さんが弊社の取り扱いメーカーを決めつけた方は以後現れておりません。

なぜか「相当スケベなタイヤ屋」になっちゃった話

 私は出身は北九州でその後三重、そして千葉へ来たので方言に関しては少しは耐性(?)はあると思います。

 ただ千葉は言葉のバリエーションは広い方だと感じます。東京に近い地域はいわゆる標準語の感じですが、多少歴史を感じる地域ですとイントネーションや単語が独特だったりします。

 ある時、出張作業で車庫での作業がありました。作業が終わり事務所に報告と伝票にサインを貰いに行きました。

 猛暑日だったと記憶していますが、かなり年配の方が対応してくれて、冷たい飲み物を振舞っていただき「大変だったから涼んで休憩してから帰れ」と仰ってくれました。

 当然狭い事務所でその方と無言で過ごすワケにはいかないので雑談でもしようと思ったのですが、

「なぁ、兄ちゃん、◯△※✕÷√@〜だな」

 ?????? ちょうど大事なところがフランス語のようなイントネーションというかニュアンスというか……フランス語知らないっすけど(笑)。当然聞き返します。

「え~と、はい、なんでしょう?」
「いや、だぁからぁ……、オメェは✕÷√@!◯△◇j4“【︽❞だろ?」

 目尻にしわを作り屈託のない笑顔で話しかけてくるから、たぶん普通の雑談なんだろうな……と。ちょっと返答に困ってると、

「あ〜◯△〜◯がわがんねぇか……、あ〜アレだよぉホレ、※〜✕✕√@! って知らねぇか?」

聞き返すことでオチが薄まることを考えると、せっかくの雑談が台無しになりますね。雑談ってむずかしい

 ますます?????です。地方独特の単語でも何となくニュアンスでわかることもあるんですが、今回はその単語どころか本文が本当に聞き取れない。

 たぶん、わかれば楽しい雑談だろうなと想像ができるだけに、何回も聞き返すのは失礼であります。

 ただ何一つヒントもなく、まるでシャイで英語のできない日本人の如く愛想笑いで「ほぉ」「えぇ」「へぇ~」で乗り切ろうと試みるも3ターンが限界。

 もう使えるワードは「はい」しか無いので、最後の最後に長文の後に「はい」と返事したら少し驚いたような、それでいて薄ら笑いを浮かべて、

「オメェはそーとースケベだな! がははは! ◯✕!®♀だな! な? お? だな!?」

 最後に大笑いされて区切りがついたので、

「じゃあ〜そろそろ戻ります! ありがとうございました! 失礼します!」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。