かつては、様々なステーションワゴンがあったトヨタ。中でも利便性と快適性を併せ持ったのが、ビスタ・アルデオだった。アルデオでは、快適すぎて宇宙人も骨抜きになり地球制服ができないというCMが思い出される。アルデオが現代に復活したら、トヨタのステーションワゴンは、もっと熱くなるはずだ。
文:佐々木 亘/写真:TOYOTA、ベストカー編集部 ほか
■ワゴンって気持ちいい! それだけでいいじゃないか
1998年にビスタの派生車として登場したのがビスタ・アルデオだ。
ボディ全長は4,640mm、全幅は1,695mmと5ナンバーサイズを維持しながら、全高は1,515mmと一般的なセダンやステーションワゴンに比べて少し高い。ホイールベースも2,700mmと長めに確保し、前後座席のゆとりは十分にある。
スポーティや上質なステーションワゴンが主流だった当時、アルデオは思いっきりユーティリティに振った。
遊び道具を積み込んで走り出す、同乗者はリビングのようにくつろげる。運転している人も乗っている人も、いつまでも気持ちいいのがアルデオのモットーであり、とにかく気持ちいいことに全力を注いで作られたクルマである。
ただし、日常的な取り回しのしやすさや駐車スペースのこともしっかりと考えた。車格は5ナンバーサイズに収め、最小回転半径は5.3mだ。全高もこのカテゴリーとしては高めだが、立体駐車場に十分収まる範囲内になっている。
乗って・使って・降りても気持ちいい。今の日本に必要なクルマって、こういうパッケージングのクルマではないだろうか。
■スペースユーティリティが秀逸すぎるぞ
前後席ともに、比較的たっぷりしたシートが奢られ、シフトレバーがステアリングコラム式になっているので、フロントシートでもサイドウォークスルーが可能だ。リアシートは5:5分割になり、170mmのスライドとリクライニング機構がついている。
また、リアシートの座面はフロントシートよりも35mm高くなり、後席からの前方視界も良好。シートスライドや座面の高いリアシートなど、ミニバンのような使い勝手の良さが、各所に散りばめられている。
さらにセダンベースのワゴンにしては、運転席の座面も高めだ。ヒップポイントは地上から590mmに設定され、高めの全高がドア開口部の高さも790mmと大きく与えている。そのため、大きく屈んだり、体を小さくしたりして窮屈に乗り込むことは無い。運転姿勢はアーバンスタイルSUVのようである。
ミニバンの使いやすさとSUVの乗りやすさが融合され、まさにクロスオーバーだ。こうした装備に加え、リアドアにはガラスハッチも加わるという念の入れようでもある。ユーティリティを重視したワゴンは、アルデオのようにあるべきだと思う。
■補助席をつけて6人乗りもOK!
登場から1年後の1999年7月には、運転席と助手席の間を埋めたマルチパーパスベンチシートを選択可能にしている。フロントシートもベンチシートにすることにより、最大6名までが乗車可能となる仕様だ。
フロント中央部の座席は、あくまでも緊急用であるが、こうした選択肢を加えてくることが実に面白い。日本で3×3の乗り方はあまり広まらなかったが、応急用でも6人乗れることで、助かるシーンは数多くあったはず。
また前席座席間の溝が埋まることにより、フルフラットにした際の室内ほぼ全面が平らになるのも良いところだ。車中泊もしやすく、アウトドアレジャーでも大活躍できるだろう。
ビスタの名前や、真面目そうな見た目とは裏腹に、アルデオは結構思い切ったことをやっていたクルマなのである。ステーションワゴンで真面目にスポーツするのも良いが、アルデオのようなワゴンが残っていたら、トヨタのステーションワゴンは、もっと多彩な成長を遂げたのではないだろうか。
ビスタの名前復活と共に、アルデオを当時のパッケージングそのままで出してほしい。ステーションワゴンの行く末に困ったら、アルデオがあるで!
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