SUVと聞いてどんなイメージを思い浮かべるだろうか? 人によって様々だと思うが、走りの良いイメージを持つ人は少ないかもしれない。しかし、走りに拘ったSUVが日本にはあったのだ。それがトヨタのC-HRである。今回はC-HRの走りにこだわった部分をピックアップし、振り返ってみよう。
文:西川昇吾/写真:トヨタ
■日本SUV史上最高の走りへのこだわり
2016年末に登場したC-HRはトヨタの新世代プラットホームであるTNGA第2弾のモデルとして登場した。現在でもボディ剛性に定評のあるTNGAプラットホームだが、やはり当時新採用ということもあり、ボディ剛性の部分では同クラスのライバルたちに比べて抜きん出ていた印象がある。
ボディ剛性は走行性能のあらゆる部分に影響するし、ドライバーに対して与える安心感や信頼性も変わってくる。これでだけでもC-HRが他のSUVに比べて「良い走り」をすると感じる部分であった。
何よりC-HRの走りへのこだわりが見えるエピソードが、ドイツのニュルブルクリンクで開発し鍛え上げたことだ。販売前の2016年5月にはニュルブルクリンク24時間レースにも参戦し、見事完走を果たしている。
そのほかにも日本だけではなく、ヨーロッパの各種道路でテストを繰り返して開発を実施した。ここまで走りにこだわった環境で開発したSUVは国産では他にないのではないだろうか。
■ヨーロッパ市場をターゲットに走りにこだわる
なぜここまでC-HRが走りにこだわったのか? それはグローバルモデルとして世界で販売しつつも、ヨーロッパを中心とした走りへの評価がクルマそのものの評価へと直結しやすい市場を特に重視したからであろう。
ニュルブルクリンクを走り込んで走行フィーリングに拘ったのはもちろんだが、低重心を感じるデザインも走りの良さを予感させてヨーロッパで受けるのを狙った結果なのだ。
また、ニュルブルクリンク24時間レースに出場したのは、より良いクルマを作る開発のためもあるが、ヨーロッパでのマーケティング効果を狙った部分もあったのかもしれない。ともかく走りの良さを求め、それを全面にアピールしたかったモデルと言えるだろう。
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■こだわりのザックス製ダンパー
そしてC-HRの各種装備やメカニズムを見てみると走りへのこだわりは随所に現れているが、マニアならば「おおっ!」と感じる部分がある。それはダンパーだ。初期のC-HRはザックス製のダンパーを装着していた。
普通のSUVならばコスト的に考えても輸入となるザックス製ダンパーの採用は見送るところだ。しかし、走りにこだわったC-HRはドイツ車を中心に純正採用されていて評価の高いザックス製ダンパーを採用した。この足回りの設定はヨーロッパ仕様も日本仕様も同じものであった。
ただ、日本市場では乗り心地に対してユーザーからの不満があったのか。マイナーチェンジで乗り心地な日立製ダンパーへと変更を受けた。
そのような背景もあったのか、走りのC-HRらしく、マイナーチェンジと同時にGRスポーツが追加された。専用チューニングのバネやダンパーそして強化したスタビライザーが装備されていた。
明確にアナウンスはされていないが、ノーマルのC-HRがマイルドになったからこそ「開発陣が求めたC-HR像はこれなんです!」と開発陣からの声がC-HRのGRスポーツからは聞こえてきそうな感じがする。
そんな走りにこだわったC-HRだが、次期モデルの日本導入は無いという見方が強い。それは残念でならないが、走りの良いSUVが欲しい人は中古車でもチェックしてみる価値は多いにアリな1台だ。
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