クルマで街中を走れば必ず目にすることになるのが道路標識。駐車禁止や進入禁止といった見慣れたものがある一方、あまり目にすることがない珍しい道路標識もあるという。見つけたら自慢していい(?)レア標識とは?

文:井澤利昭/写真:国土交通省、写真AC

■意外と知らない「道路標識」の基礎知識

 国土交通省が公開している「道路標識の基礎知識」によると、道路標識には大きく分けて、目的地や通過地の方向、距離や道路上の位置を示す「案内標識」、注意深い運転を促す「警戒標識」、禁止、規制、制限などを知らせる「規制標識」、通行するうえで守るべき必要がある事項を知らせる「指示標識」の4種類があり、それらは総称して「本標識」と呼ばれている。

 このうち「案内標識」には交差点などでそれぞれの道の行き先を案内する「経路案内」、その場所を示す「地点案内」、登坂斜線などを示す「付属施設案内」という3種類がある。

 加えて、規制の時間帯や範囲、車両区分などを補足するための「補助標識」があり、こちらは「本標識」と組み合わせて使用される。

 ちなみに標識はその種類によって管轄が異なり、「案内標識」と「警戒標識」は国土交通省や都道府県、市町村などの道路管理者が設置。

 一方、「規制標識」と「指示標識」は、都道府県の公安委員会が設置している。

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■バリーション豊かな「動物が飛び出す恐れあり」の標識

設置される地域のお国柄が出るのも「動物が飛び出すおそれあり」の標識の面白いところ。「ヤンバルクイナ」のイラストが入った標識は当然、沖縄県のみで見られるものだが、沖縄にはこれ以外にも「オキナワイシカワガエル」や「リュウキュウヤマガメ」などが描かれた標識があるという

 珍しい「標識」を語る時、まず最初に取り上げられることが多いのが「動物が飛び出すおそれあり」を知らせる「警戒標識」だ。

 山間部を走る道路などではよく見かけることのあるこの標識だけに「そんなに珍しくないのでは?」と、思うかもしれないが、この標識の面白いところは、そのバリエーションの多さにある。

 通常は、黄色地に跳ねる鹿のイラストが入っているものが一般的だが、この動物の種類は設置される場所の状況に合わせて変更することができるのだ。

 これは1986年(昭和61年)に国土交通省から通達された「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令の施行について」のなかにも「シカ以外の動物が飛び出すおそれがある場合には、適宜、当該動物の形状を表す記号を表示するものとする」と明言されている。

 この通達のなかには国土交通省が示す標準デザインとして、「サル」、「タヌキ」、「ウサギ」のイラストも示されているが、北海道なら「牛」や「キツネ」、沖縄であれば「ヤンバルクイナ」や「イリオモテヤマネコ」など、それぞれの地域ならではと思わせる動物が描かれた標識も数多く存在している。

 これら動物注意の標識は、正確な数こそ不明ではあるが、一説には150種類を超えるバリエーションが存在しているとも言われている。

 自宅近くはもちろん、遠出をした際はスタンプラリー気分で探してみるのもいいかもしれない。

■タテ・ヨコ・ナナメ、駐車の向きを示す珍しい標識

 「駐車禁止」や「駐停車禁止」、パーキングメーター近くに設置される「時間制限駐車区間」など、駐車に関する道路標識にはいくつかの種類があるが、なかでもレアとされているのが、クルマを止める向きが指示された「規制標識」だ。

 この標識には、クルマを道路に沿って駐める「平行駐車」や、道路と90度になるように駐める「直角駐車」、道路に対して斜め向きに駐める「斜め駐車」の3種類が存在している。

 とはいえこれは、宮城県石巻市などの一部にしか設置が確認されていない、標識マニアの間でもかなり知られているレアなもの。その標識を撮影した写真をアップしたSNSの投稿が、一時話題となったほどだ。

 さらに、この3つのなかでも「直角駐車」の標識は実際に設置されているものがマニアの間でも確認されておらず、国土交通省が公開している「道路標識一覧」に入っているにもかかわらず、実在しているかどうかがわからないという。

 真偽のほどは定かではないが、万が一見つけることができればスーパーレアな標識であること間違いなしだ。

■自転車だけを規制する「一歩通行」の標識が存在する!?

自転車道などに設置されることを前提とした「特定小型原動機付自転車・自転車一方通行」の標識。写真の横型に加え、縦型のデザインを採用したタイプもある

 昨今のブームもあり、ロードバイクやクロスバイクをはじめとする自転車を趣味にしているというドライバーも多いはず。道路標識のなかにも、自転車に関連するものは思いのほか多い。

 そのなかから珍しさという点で選ぶと、真っ先に候補に上がるのが「自転車一方通行」の「規制標識」だろう。正式には「特定小型原動機付自転車・自転車一方通行」と呼ばれるもので、設置される場所に合わせられるよう、縦型と横型のデザインが用意されている。

 自転車に加え、ここ最近ニュースなどにも取り上げられ、街中を走る姿もの見かけるようになってきた、免許が必要ない電動キックボードなどを対象とした標識で、文字どおりその道を走る自転車および特定小型原動機付自転車の進行方向を、矢印の向きのみに規制する意味合いを持つ。

 近年、各地で整備が進む、自転車専用道への設置を前提とした標識ではあるが、現在は、神奈川県や静岡県の一部地域でのみしか確認がされておらず、レア度が高い。

 ちなみに、通常の「一方通行」を示す標識にも車両である自転車は従う必要があり、逆走すれば道交法違反となることも。取り締まりの対象となれば、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処される可能性があるだけに注意したい。

 なお、「自転車を除く」「軽車両を除く」の「補助標識」がある道路であれば「一方通行」を逆走することは問題はないが、その場合でも進行方向の左端を走る必要があることは知っておきたい。

■銀座にも存在するという大八車が描かれた標識の意味とは?

 自転車がらみの標識でもうひとつレアなのが、斜線が引かれた赤丸のなかに今では滅多に見かけることがない大八車のイラストが描かれた標識。

  これは「自転車以外の軽車両通行止め」の「規制標識」で、かつては農地などでよく見られたものの、最近では撤去されつつあるレア標識のひとつだとという。

  道路交通法における軽車両とは「自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつレールによらないで運転する車」のこと。

  平たくいうと原動機を持たない車両のことで、自転車に加え、人力車や馬車、リヤカーなどの荷車がこれに相当する。この標識が設置される道路では、その名のとおり自転車以外の軽車両は通行することを示すものだ。

  リヤカーや馬車などというと、現存しているものも相当な田舎にしかないのでは? と思われがちだが、大都会のど真ん中にある東京・銀座のとある場所にも屋台などを規制するため、現在も設置が確認されているという。

 できて間もない故に数が少ないものから、時代の移り変わりとともに消えつつある絶滅危惧種まで、様々な理由から珍しい存在となってしまった「レア標識」。

 出かけた先で「この標識なんだっけ?」というものを見かけたら、その意味を改めて調べてみるのも面白いかもしれない。

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