フェラーリジャパンは2024年6月11日、自然吸気の6.5LV12エンジンを搭載した新型2シーターベルリネッタ、「ドーディチ チリンドリ」を都内で日本初公開した。かつての365GTB/4デイトナを思わせるスタイルだが、現場からのレポートをお届け!
文:武井寛史/写真:ベストカーWeb編集部
■スペシャルな会場でのジャパンプレミア!
フェラーリの最新モデル、「12 Cilindri」(ドーディチ チリンドリ)のジャパンプレミアが東京都内の虎ノ門ヒルズステーションタワー45階で華々しく開催された。ふだんはTシャツとジーンズ姿の私もこの日ばかりは、超高級なイタリア生地でフルオーダーした一張羅のスーツを着て出席。
世界のセレブに愛されるスーカースポーツブランドだけあって、ロケーションにもこだわっていて毎度感心させられているが、今回はどんな場所で行われるのかが楽しみのひとつだった。
12気筒エンジンを搭載したモデルはフェラーリにとってスペシャルだ。それだけに今回も非日常を体現されてくれるお洒落な演出があった。ふつうの新車発表会では車体に幕がかかっていてアンベールするのが定番だが、都内の眺望が見渡せる超高層階に主役となる車両を搬入した。
会場は完成したばかりの大作映画を特別な関係者のみが試写できるようなディレクションだっただけに、フェラーリジャパンの力の入れようがわかる。日本初上陸を記念したジャパンプレミアは、プレス向けだけではく顧客も招待して3日間に渡ってお披露目されることになる。
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■電動化時代のさなかに12気筒NAエンジン!
最新モデルに与えられた車名「12 Cilindri」は、「12気筒」という意味。日本語だとダサいが、イタリア語になるとなぜかカッコよく感じるのは昭和世代の私だけではないはず。
欧州では化石燃料を排除する方向でEVに舵を切っており、多くの自動車ブランドが政治的な取り組みに迎合するように自然吸気エンジンから徹底を発表していた。しかし、さすが我らがフェラーリ、ここにきて大排気量のエンジンを搭載したモデルを発表した。
EVのデメリットについてはここでは触れないでおくが、最近、ユーロ圏でもすべて電化するのは無理筋だと気づいたようで、ハイブリッドに方向転換している。フェラーリもグローバル企業として、環境問題は無視できないはずなので、最新モデルはハイブリッドを選択すると思っていたこともあり、個人的に心から賞賛を送りたい。
■365GTB/4デイトナを彷彿とさせるフロントマスク
先にも記したが、フェラーリにとって12気筒モデルは最も大切なフラッグシップモデルだ。1947年から続くフェラーリの聖地ともいえるマラネロの本社工場で初めて生まれた12気筒エンジン搭載モデルは、レーシングカーとして活躍した「125S」。
その後、伝統的に12気筒モデルがラインナップされるが、日本において正規輸入されたのは1964年に発表された「275GTB」になる。フェラーリが60年も前に正規に輸入されていたことには驚きだが、12気筒モデルが現在まで77年間も脈々と受け継がれていることにフェラーリの歴史の重みを感じる。
最も新しいモデルには、細部に渡ってこだわりのテクノロジーが投入されているわけだが、エクステリアデザインは、296GTBを手がけたチーフデザイナーのフラヴィオ・マンゾーニ氏を中心としたフェラーリ・スタイリング・センターが担当。歴代12気筒モデルを彷彿とさせるデザインが盛り込まれていて、個人的にはフロントマスクは365GTB/4(デイトナ)を強くイメージさせると感じた。
エクステリアにおいて注目したいのはエアロダイナミクス。低速域と高速域では、求められるダウンフォースは異なるため。フェラーリは低速ではパフォーマンスに影響はないと考え、あえてドラッグを軽減していない。その逆に高い速度域においては、車両の前後左右が加速度に応じてスポイラーが可変して最大のダウンフォースを得るシステムを採用していてとにかく芸が細かい。
■超高回転型12気筒は珠玉のフィーリングか?
車名にシリンダー数を冠するだけあって搭載されたエンジンの排気量は6,5L。最大出力は830ps、最大トルク69.1kgmを発生させ、最高許容回転数は9500rpmと超高回転型エンジン。今後、実際にドライブできる機会があれば自然吸気エンジンのエキゾーストノートを堪能したい。
アクセルを踏めば目が覚める瞬発力を持つというドーディチ チリンドリだが、ふだん公道では300km/hを出すことはない。しかし、高いスピード域からでも危なげなく制動させるブレーキシステムにも注目したい。
MRモデルの296GTBで初採用された「ABS EVO」と「6D」センサーにより制動距離が短くなった。乾燥重量でも1560kgの車重でも200km/hでも122ⅿで停まる。
フロントノーズが長く一見、前後バランスが悪そうだが、フロント48.4%、リア51.6%と重量バランスは抜群。ドライサンプ式でエンジンを低く搭載することで旋回性能に貢献しているはずだ。
そこに、より高い旋回性を追求するため、各タイヤを独立して制御する4WS(四輪操舵)システムを投入。先代モデルの「812スーパーファスト」から採用された最新テクノロジーは、少しの陀に対してリニアに反応してくれる。
基本となるシャシーは新たに開発。総アルミニウム製でショックタワーやAピラー、Cピラーに鍛造を使って軽量化と高いねじれ剛性を確保している。
ドーディチ チリンドリのプレスリリースにはサスペンションの記述はなかったが、恐らく812と同様プッシュロッド式だと思う。あり余るパフォーマンスをフェラーリ独自のアクティブセーフティテクノロジーがドライバーの技量を手助けしてくれることだろう。
■実車のパフォーマンスに期待!
とかくパフォーマンスに目が行きがちだが、今回の発表会で流されたエンツォ・フェラーリ氏の過去のインタビュー映像に「12気筒モデルは瞬時のスピードを極めることにこだわる」と語っている。
ドーディチ チリンドリは0.1秒を削って速さを追求するのではなく、長い距離を快適に移動することに重点を置いているグランツーリズモという位置づけだ。しかし、ひとたびアクセルを踏み込めば瞬時にパワートレーンがタイヤに鞭を入れ痺れるパフォーマンスを体感させてくれることだろう。
今後、私がベストカー本誌で月イチ連載中の『スーパーカー劇場』などでインプレッションレポートを読者の皆さんにお届けできることを期待してほしい。
ちなみに日本で公開されたのはクーペだけだが、スパイダーも用意される。価格はクーペが5674万円でスパイダーが6241万円。
ちなみに2024年7月5日に映画『フェラーリ』が封切りされる。フェラーリ創設者であるエンツォ・フェラーリのF1に捧げた人生を描いているようだ。予告ストーリーでは創設から10年後の話のようなので、創設当時の話がどこまで再現されているか現時点では不明だが、ドーディチ チリンドリの発表とともに2024年の夏は日本でもフェラーリに注目が集まりそうだ。
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