2024年4月に正式に販売が開始されたトヨタ ランドクルーザー250。高級感を高め、ラグジュアリーカーとしての側面が強く打ち出されてきたランクルファミリーだが、「ランドクルーザーの原点回帰」を謳い、ヘビーデューティな本格オフローダーとして登場した250シリーズに、早速悪路で試乗してみた!!

※本稿は2024年5月のものです
文/片岡英明 写真/小林岳夫、トヨタ
初出:『ベストカー』2024年6月10日号

■ランドクルーザーの原点回帰

2024年4月に販売が開始されたトヨタ ランドクルーザー250

 モデルチェンジのたびに高級志向を強めてきたランドクルーザーが、本来の役割と使命に原点回帰して250シリーズを送り出した。そこでオフロードに引っ張り出したが、結論から言ってしまうと、泥んこまみれがとても楽しいSUVだ。

 250はランクルの中核モデルと位置付けられ、質実剛健を徹底的に追求した。機能重視の外観は理屈抜きにカッコいい。ちょっと小ぶりに見えるが、強い存在感を放っている。魅力のある先進的なメカも、全部を紹介できないほど多彩だ。

 ラダーフレームは300と同じGA-Fプラットフォームを採用し、ランクル初となる電動パワーステアリングと、フロントスタビのロックとフリーを行うSDMを搭載している。駆動方式はトルセンLSD付きのハイ/ロー切り替え式トランスファー装備のフルタイム4WDだ。

■期待以上の悪路走破性!! 気負うことなく走れる

1GD-FTV型2.8Lディーゼルターボエンジンは新開発の8速ATとの組み合わせでトルクの谷間を埋めた、どこからでも扱いやすいトルクを引き出せる特性で悪路でも頼もしい

 上級グレードにはダウンヒルアシスト、クロールコントロール、アクティブトラコン、電動リアデフロックなど、悪路走破性を高める電子制御デバイスもふんだんに搭載する。今回の試乗はオフロード限定だが、惚れ惚れするほど走破性は高い。

 ZXに標準のマルチテレインセレクトは頼もしい装備である。6つのモードがあるが、走行シーンに応じた走破性能を上手に引き出してくれるオートモードは大いに重宝した、過酷なステージに乗り入れてもハンドル操作に専念できる。

 注目のSDMをフリーにするとサスペンションのストロークがぐっと伸び、接地能力が高くなる。モーグルステージではタイヤが浮く場面が多いが、1輪が浮いてグリップを失って滑った時のリカバリーも早い。アプローチアングルとデパーチャーアングルも大きいから、傾斜のきつい路面でもグイグイと走り切る。

 試乗したのは改良型の1GD-FTV型直4直噴ディーゼルターボ搭載車だが、フレキシブルで、静かだ。歩くようなスピードでモーグル走行を行なっても、とても扱いやすいと感じる。

 大きな岩が連なっているロックステージでもグンを抜く走破性を披露した。岩の表面に泥がついて滑りやすかったが、スリップしてもアクティブトラコンが上手に空転した車輪にブレーキをかけ、残りの車輪に駆動力を絶妙に配分する。

 アクセルを踏み込むとグリップを回復し、力強く前に出てくれた。上屋の揺れの動きも滑らかで、無駄な動きを上手に封じている。

 そしてこのステージで光る活躍を演じたのが電動パワステだ。タイヤからの強いキックバックを感じさせないから安心してハンドルを握れた。

 ロックステージでは比較車のプラドとランクル70に大きな差をつけた。プラドは制御音が耳に付くし、余裕も今一歩だ。電子制御デバイスの少ないランクル70は登り切るためにはそれなりのテクニックが必要になる。だがそのぶん70は自分で操っている感が強く、楽しいSUVだ。

■最新デバイスを活かして悪路も安心して走る!

70のタフネスに対し、250は洗練された頼もしさを感じさせる。悪路では安心感が大きい

 林間コースでもランクル250の優位性は揺るがない。ダウンヒルアシストは、急坂を降りる時に4輪のブレーキを自動的に制御し、選んだ車速を保ってくれる便利な装備。狭い林道の取り回し性においても、軽やかに曲がるランクル250はランクル70を圧倒した。

 中央の大型ディスプレイの解像度も高い。カメラで前方の様子を映し出すが、モーグルやロックステージでも路面を把握しやすく、絶大な安心感がある。最新の250はランクル300に乗り心地などいくつかの項目で及ばない。が、ランクル一族の次の姿を見せてくれ、買い得感、走破性などは最高レベルにある。

■ランクル250のグレード体系は?

●ディーゼル
・ZX(7人乗り):735万円
・VX(7人乗り):630万円
・GX(5人乗り):520万円

●ガソリン
・VX(7人乗り):545万円

 ランクル250の主流は2.8Lディーゼルターボエンジン搭載モデルということになる。

 マルチテレインセレクトや電動リアデフロック、フロントスタビライザーを室内からロック/フリーを設定できるSDMなどの悪路走破に頼もしいメカが標準装着される最上級の「ZX」が設定されるのもディーゼルターボ搭載車のみ。

 2.7Lガソリンエンジン搭載モデルは中間グレードの「VX」のみの設定。ディーゼルターボに設定される「GX」のみ5人乗りとなる。

●最上級「ZX」の主な標準装備

・プロジェクター式LEDヘッドランプ
・マルチテレインセレクト
・電動リアデフロック
・SDM(フロントスタビライザーのロック/フリー機構)
・265/60R20サイズタイヤ(-13万7500円のオプションで265/65R18タイヤも選択可)

■丸目ヘッドライトはディーラーオプション

「ZX」のプロジェクター式3眼LEDヘッドライト(左)と、「VX」「GX」用のリフレクター式LED(右)

 ランクル250を紹介する際、どうしても丸目ヘッドライト仕様をメイン写真に使いがちなんだけど、実は丸目はディーラーオプション。

 しかも、最上級グレードの「ZX」では装着できず、中間グレードの「VX」のみが装着可能なのだった。上写真の左は「ZX」のプロジェクター式3眼LEDヘッドライトで、右が「VX」、「GX」用のリフレクター式LEDだ。

■ファーストエディションとはどんなモデル?

最上級の「ZX」で丸目を望むならFirst Editionでしか実現できない

 ランクル250の誕生を記念して販売される特別仕様モデルが“First Edition”。最廉価の「GX」以外の2グレードに設定されている。

 さまざまな特別装備を装着しているのだが、最大のポイントが、標準仕様の「ZX」では装着できない丸目ヘッドライトが標準装着されているということだろう。逆に言えば「ZX」で丸目にしたければFirst Editionを手に入れるしかないのだ。全グレード合計8000台の限定販売。

●First Editionの主な専用装備

・丸目型LEDヘッドランプ(ZXに標準)
・265/70R18タイヤ&18×71/2Jアルミホイール(ZXに標準)
・専用デザインドアトリムオーナメント
・専用加飾付き本革シート表皮

○ZX“First Edition”:785万円
○VX“First Edition”:590万円(G)、700万円(D)

■ランクル250の納期は? 実際買えるの!?

転売対策として、過去に取引がある自社の管理顧客に絞って限定的に販売を行う店も増えてきた。「一見さんお断り」というのは厳しい……

 気になる納期は販売店だと2年以内、KINTOでは5~8か月以内とされている。納期が2年を超えると、トヨタは自動的にオーダーストップがかかるため、まだ再来年4月まで納車されるランクル250は注文できる状態だ。

 販売方法は販売店が決めており、多数の店舗が抽選方式をとっている。早い者勝ちは少数派となった。また、過去に取引がある自社の管理顧客に絞って限定的に販売を行う店が意外と多いのが今回の売り方の特徴。

 転売対策は、強制ローンや強制リースにとどまらず、自社客限定販売まで行き着いた。ただ、一見さんお断りというのは厳しすぎる気もする。

 売れ行きは好調のひと言。ファーストエディションから順に売れており、次いで量販のZX、VXのディーゼルと続く。最も手に入りやすいのはVXのガソリンだ。

 当初は、プラドユーザーの優先購入という話もあったが、価格を聞いて購入を取りやめた人も多いという。そのため、まだ販売枠を余しているお店もわずかだが確認できた。

 GW前までは管理顧客中心に販売を続け、連休明けに販売対象を一見客まで広げる販社が多い。入手困難とも言われるが、探し回ればポロっと残枠が登場する可能性もある。

トヨタ ランドクルーザー250 主要諸元

●トヨタ ランドクルーザー250のここがポイント

・ランクルのど真ん中を目指したというタフさと、街乗りでの乗り心地のよさ
・ランクル300と共通のGA-Fプラットフォームを採用。ホイールベースは2850mmでランクル300と同じ
・ランクルシリーズとしては初の電動パワステを採用
・ディーゼルエンジンは8ATと組み合わせ

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