電飾トラックといえば根強いファンが多い「デコトラ」をイメージするかもしれない。ただ、トラックメーカーとしては改造車を推奨するわけにも行かない。
いっぽう欧州では電動モビリティをアピールするため、大手商用車メーカーのルノー・トラックスが電動の電飾トラックを作った。電飾部品を追加するのではなく、通電することで発光する最新の特殊塗料を使い、トラックの車体に光を直接ペイントした。
塗装であるため改造車にはならず、メーカーとしても安心の電飾トラックは2024年7月まで欧州各国を周り、電気トラックによる運行の実態を伝えることにしている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks
ルノー「ダイヤモンド・エコー」が欧州を照らす
2024年4月10日、ボルボグループに属する欧州の大手トラックメーカーでフランスを本拠とするルノー・トラックスは、ユニークな100%電動トラックで欧州を巡るツアーを開始すると発表した。
車両は、同社のバッテリーEV大型トラック「Eテック T」をベースとする「ダイヤモンド・エコー」と名付けられた大型トラクタだ。
製造されたフランスのブール=カン=ブレス工場を4月11日に出発し、欧州の7か国・1万kmを走行する予定で、途中の60か所で地域の運送コミュニティと交流を図り、「電動モビリティのリアル」を伝えることにしている。
化石燃料からのエネルギー移行に際して電気駆動を第一の選択肢とするルノー・トラックスは、車両総重量650kgの電動カーゴバイクから、同44トンのトラクタ/建設用特装車まで、世界の自動車メーカーの中でも最も広範なバッテリーEV車のラインナップを用意している。
創業130年を迎える伝統の自動車メーカーが最新技術でトラックを飾り、商用車の変革を印象付ける。
メーカー謹製のデコトラ!?
ダイヤモンド・エコーがユニークなのは、その電飾デザインだ。トラック+電飾と言えば、日本で「デコトラ」とか「アートトラック」と呼ばれる車両を思い出すかもしれない。
有名な映画の影響などで国内外にデコトラのファンは多いが、違法改造にあたる可能性があり、最近は見かける機会も少なくなった。もちろんメーカーとしても積極的にアピールできる車両ではない。
この度、トラックの装飾のためにルノーが採用したのは、電気を流すことで発光する特殊塗料の「ルミロール」(LumiLor)だ。様々な物質の表面にスプレー塗装できるため、LEDや有機ELと比べてはるかに自由度の高い発光を実現できる。
また必要な電力が小さいので、塗装の下地に導電性の塗料を使って配線を確保するなどの工夫により、クルマに「光をペイントする」デザインが可能となった。塗料なので違法改造となる可能性も少なく、メーカーとしても安心なアートトラックを実現できるというわけだ。
デザイン自体はトラックドライバーによる投票で決めた。ルミロール技術の経験があるデーモン・ペイント社が塗装を行ない、暗闇の中で光を発する他に例のない電動トラックが完成した。
なおルミロールには他のカラーもあるそうだが、今回は灯火類への影響(法規対応)のためか単色となっている。
ダイヤモンド・エコーは4月から7月にかけて欧州7か国を巡る。各地で地元の運送業界の関係者に電動モビリティの利点と実態を伝えるとともに、ルノー「Eテック」レンジの品質と、同社の専門的なネットワークをアピールすることにしている。
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