ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はスバル フォレスター(2018年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2018年10月26日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影:平野 学
■テリーさん、スバルのデザイナーさんの心配をする
フォレスターとは「森の住人」の意味だそうである。
森の住人にもいろいろあるだろうが、この住人は木こりタイプ。ヒゲぼうぼうで、鏡を見る習慣がない人物を想像させる。
男は中身だ! という信念で生きているから身なりに関心がなく、何が美しいのかわかっていない。
子どもたちに、「おとうさん、少しは見た目にも気を遣ってよ!」と言われ、「だったらオレンジ色でもかましてやるか!」としてできたのが今回の新型フォレスターXブレークだ。
デリカD:5がアクティブギアで息を吹き返しているのを見て、オレンジ色をかませばどうにかなると思ったらしい。「D:5アクティブギア」はテリー伊藤も買っているし、と(←実話)。
正直に言って新型フォレスターは格好悪い。たぶん、ワザとやっていると思われる。
デザイナー「俺はこんなデザインにはしたくない」
上司「フォレスターはこういう格好が好まれるんだ。我慢してくれ……」
そんな会話が聞こえてきそうだ。商品は売れれば正義。そして、新型フォレスターはよく売れているのだから、ワザと格好悪くしたかいがあったというものだ。
しかし、そんな大衆に合わせたデザインばかりしていて、デザイナーはストレスが溜まらないのかと心配になる。
デザイナーとはセンスのいい人がなるものだ。しかし、自分の感性を押し殺し、一般ユーザーに受けそうなデザインに仕立てるのが実際の仕事だとすれば、その葛藤をどう処理しているのか。
新型フォレスターを見ていると、そんなことを考えてしまう。
ほかのスバル車と同様、フォレスターもメイン市場はアメリカらしい。
アメリカでは、フォレスターは大衆小型車のど真ん中という位置づけなのだろう。
安くて故障が少なく実用的。これにスバルの場合は四駆の性能が高いという付加価値が加わる。確かにシャレたデザインは必要なさそうだ(笑)。
問題は道具として優れているかどうか。その一点に絞られる。
■「いいねえ」。フォレスターは道具として本当に優れている
ここまでデザインの話ばかりしてきたのは、ほかが完璧だったからだ。デザインしか突っ込みどころがない。実は新型フォレスター、(デザイン以外は)パーフェクトだったのだ!
室内とトランクの広さは充分で解放感もある。シートに関しては後席が特によく、座面の長さに余裕があって座り心地がいい。
頭上、足元の空間も充分にあり、また、前席より高いところに座るポジションだから見晴らしもいい。さらにもうひとつ、リアのシートヒーターが標準装備というのもありがたい。
しかも、それが左右のシート別々に操作できるのだから素晴らしい。
2.5LガソリンNAエンジンの走りもよかった。
特別なところはなく普通といえば普通なのだが、走り出してすぐに体になじみ、とてもリラックスして走れるのがいいところ。乗り心地もよく、疲れない。走行中、私はずっと「いいねぇ」とつぶやき続けていた。
スバル自慢の四駆性能を試せる場所はなかったが、試さずともそれがハイレベルなのはわかる。
もちろん、アイサイトも標準装備。街乗りから高速走行、悪路まで快適に、強く、安全にこなし、それを肩に力を入れることなく鼻歌交じりにこなしてしまう格好よさもある。
それになんといっても凄いのは、こんなに万能なクルマの車両価格が291万6000円に抑えられていることだ。これはハッキリ「安い!」と言える。
最近は新車価格が高騰していて、このクラスで200万円台は少ない。万能なうえに安いときたら文句なし。試乗していて「欲しい」という気持ちがムクムクと芽生えてきた。
新型フォレスターは、本当に道具として優れている。私はこういう「見た目よりも中身で勝負!」という信念を感じさせるクルマに惹かれるタイプだということに、改めて気づかされたようにも思う。
外からデザインを眺めていた時の自分と、試乗してその真価を知ってしまった自分は、まったく別人のようだ。
「いやー、うちのはブスだから」などと奥さんのことを卑下して言っている人に「そうですね」などと同意したらえらいことになる。
それと同じように、新型フォレスターのデザインにイチャモンを付ける人がいたら、きっとこう思うだろう。「自分で言うのはいいが、他人には言われたくない!」と。
私は、冒頭でデザインについて文句ばかり垂れていたが、それは乗るときっと惚れ込むだろうという予感があったからだ。こういうのをツンデレというのだろうか。
新型フォレスターには「ツンデレSUV」の称号を与えたい。
●テリー伊藤 今回のつぶやき
フォレスターは肩の力が抜けた万能SUV。SUV本来の魅力を存分に引き出しながら、気軽に使えるのがいい。欲しくなった!
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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