新型フリードは、2024年5月10日から先行予約が始まり、正式発表は6月下旬を予定している。その正式発表を前に、テストコースにて、新型フリードに試乗することができた。注目は、1モーターから2モーターに進化した新型e:HEVの走り。はたして居住性を含め、どれほど進化したのか、深堀りチェック!

文:渡辺陽一郎/写真:小林岳夫、ホンダ

■標準仕様のエアーとクロスオーバー風のフリードクロスター

新型フリードエアー(右)とクロスオーバースタイルのフリードクロスター(左)

 大半のクルマは、発売されて5年程度を経過すると売れ行きを下げる。しかしコンパクトミニバンのホンダフリードは違う。発売は2016年だから、既に約8年を経過するが登録台数を下げない。

 2023年には1カ月平均で6464台が登録され、国内で売られるホンダ車としては、N-BOXに次ぐ2番手の売れ行きとなった。

 それでも8年を経過すると、環境/燃費性能から安全装備や運転支援まで、さまざまな機能が古くなる。

 そこでフリードは、2024年6月に新型へフルモデルチェンジする。2024年5月9日に外観デザインなどの概要が公表され、販売店では5月10日から予約受注を開始した。

 そんななか、正式発表前にホンダの栃木テストコースで、新型フリードのプロトタイプを試乗する機会を得た。はたして、先代からどれほど進化しているのか? 特にハイブリッドはこれまでの1モーターから、2モーターのe:HEVに変わったので期待値は高い。

 フリードのグレード構成は、標準タイプのエアーと、外観をSUV風にアレンジしたクロスターに大別される。ボディサイズは、全長は全車が4310mmで、全幅はエアーが1695mm、クロスターは1720mmだ。クロスターはフェンダーにSUV風の樹脂パーツが装着され、全幅を広げて3ナンバー車になった。

 ちなみに先代フリードの全長は、売れ筋の3列シート車が4265mmだったから、新型は45mm伸びた。また先代の全幅は、クロスターを含めて全車が1695mmの5ナンバーサイズであった。新型はボディを拡大したが、プラットフォームは従来型と同じで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の2740mmも踏襲されている。

■2モーターになったe:HEVの走りはどうだ?

新型フリードエアーe:HEV。1.5Lガソリン+2モーターのe:HEVとなる

 パワーユニットは、直列4気筒1.5Lのノーマルガソリンエンジンとハイブリッドだ。ノーマルガソリンエンジンは、先代は直噴式だったが、新型は一般的なポート噴射に改められた。

 ハイブリッドは、従来はi-DCDと呼ばれるタイプで、2組のクラッチを使う有段ATを組み合わせたが、新型は今のホンダ車に多く採用されるe:HEVだ。

 通常の走行では、エンジンは発電を行ってモーターが駆動する。高速巡航時には、エンジンがホイールを直接駆動して、燃費効率をさらに向上させる制御も行う。

高速周回路を運転中の筆者

 e:HEVを試乗すると、モーター駆動とあって滑らかだ。電気自動車と同様、アクセル操作に対して機敏に反応するから運転しやすい。

 動力性能をガソリンエンジンに当てはめると、2Lを超える排気量に相当する。直列4気筒エンジンもメリットで、トヨタが搭載車種を増やしている直列3気筒1.5Lに比べると、ハイブリッドについてもエンジンノイズが小さい。

先代フリードハイブリッド。先代は1.5Lガソリン+1モーターのハイブリッド

 e:HEVの走りは、従来のi-DCDと比べても上質だ。i-DCDは、有段式ATとの組み合わせでエンジンも駆動を行うから、回転数を変速の度に頻繁に上下させる。クラッチの断続も行われて変速時のショックが小さくないが、モーター駆動のe:HEVは滑らかだ。エンジンノイズも小さい。

 販売店ではWLTCモード燃費も明らかにしている。試乗したe:HEVエアーEX・2WD(6人乗り)は25.4km/Lで、先代ハイブリッドGの20.9km/Lに比べると、燃料代を約18%節約できる。新型ハイブリッドのe:HEVは、従来のi-DCDと比べて魅力を大幅に強めた。

 その一方でノーマルガソリンエンジンは、従来の直噴式からポート噴射に変わり、動力性能も少し下がった。

 先代の最高出力は129psだったが、新型は118psで、最大トルクも15.6kgmから14.5kgmに変更された。販売店によるとWLTCモード燃費もエアーEX・2WD(6人乗り)が16.4km/Lだから、先代の17km/Lよりも若干悪い。

■先代フリードのパワートレーン
HV=1.5Lエンジン(110ps/13.7kgm)
+電気モーター×1(29.5ps/16.3kgm)
1.5Lガソリン車=129ps/6600rpm、
15.6kgm/4600rpm

■新型フリードのパワートレーン
HV=1.5Lエンジン(106ps/13.0kgm)
+電気モーター×2(122ps/25.8kgm)
1.5Lガソリン車=118ps/6600rpm、
14.5kgm/4300rpm

 開発者は、直噴式からポート噴射に変更した理由として、エンジンノイズの低減と運転のしやすさを挙げている。

 確かに粗いエンジン音は新型では静かになり、実用回転域では運転しやすいが、アクセルペダルを踏み増した時の駆動力の盛り上がりは大人しい。コストの低減も大切な目的だろう。従ってパワーユニットはe:HEVが魅力的だ。

 その代わりノーマルガソリンエンジンは、e:HEVに比べると、車両重量が100kg程度は軽い(詳細な数値は不明)。そのために運転感覚は軽快だ。峠道のような曲がりくねったテストコースでは、適度に機敏で良く曲がった。

■ハンドリング、乗り心地はどうだ

新型フリードの走りはどれほど進化しているのか?

 先代に比べると、プラットフォームは共通ながら、ボディやサスペンションに改善を加えた。そのために走行安定性が幅広い場面で向上した。例えば車線を変えるためにステアリングホイールを回し始めた時、新型は先代に比べて車両が正確に反応する。操舵角が小さな段階から、車両が進行方向を正確に変え始める。

 カーブを曲がっている最中は、前輪が相応に踏ん張り、旋回軌跡を拡大させにくい。その一方で後輪の接地性も優れ、下り坂のカーブを曲がったり、危険を避ける時でも挙動を乱しにくい。全高が1700mmを超えるミニバンでありながら、従来型以上に安心感の高い運転を行える。

先代フリードの3列目シートの乗り心地をチェック。燃料タンクのために2列目に比べて床が高く、膝が持ち上がる。座り心地もいま一歩だ

 乗り心地は少し硬めだが、タイヤが路上を細かく跳ねる粗さは抑えた。硬めでも重厚な印象があり、コンパクトサイズのミニバンやSUVでは快適な部類に入る。従来型との比較でも、新型の乗り心地は滑らかさが増して洗練された。

着座姿勢と足元空間の広さは先代と同程度だが、座面の柔軟性が増して乗り心地も向上した。圧迫感は薄らいだ

 街中での運転のしやすさも向上した。先代も視界が優れていたが、新型ではインパネの上面が平らで前方がスッキリと見やすい。

 また先代では、サイドウインドウの下端を少し後ろに向けて持ち上げて斜め後方の視界を削いでいたが、新型は水平基調になって後方も見やすくなった。水平基調のデザインは、2/3列目シートからの視界も向上させ、同乗者のクルマ酔いを防ぐ効果もある。

■居住空間はどれほど進化した?

フリードエアーEXのコクピット。水平基調で視界がよい

 居住空間の広さは、先代と比較して大差はない。床の高さに変更はなく、運転席のペダルから、3列目シートまでの距離も基本的に共通だ。それでもシートの座り心地は向上している。1列目は腰から大腿部までをしっかりと支えるから、運転中に着座姿勢が乱れにくく、なおかつ長距離を移動する時も疲れにくい。

 2/3列目のシートは、先代と同じく、床と座面の間隔が不足している。床の高さはステップワゴンと同等だが、全高は85mm下まわるからだ。

 ミニバンだから頭上空間を狭めることはできず、床と座面の間隔が減り、膝が持ち上がって腰の落ち込む着座姿勢になった。

 この点は先代から受け継いだ欠点だが、シートの座り心地は向上した。特に3列目は、腰が落ち込むものの、背もたれと座面が乗員の腰から大腿部を包むように支える。

 カーブを曲がる時も体が左右にズレにくい。車内の広さに大差はないが、3列目のサイドウインドウも大きくなったこともあり、乗員の快適性は高められた。

 なおフリードの室内空間は限られているから、多人数で乗車する時は、2列目のスライド位置を細かく調節したい。

2列目シートをチェック。後端まで寄せると握りコブシ3つ分だが3列目を使う時は1つ半まで詰める

 例えば身長170cmの大人6名が乗車する時、2列目の膝先空間を握りコブシ1つ半に調節すると、3列目の膝先にも同程度の余裕ができる。開放感は乏しいが、片道1時間程度の距離なら、大人の多人数乗車も可能だ。

3列目は2列目よりも頭上が狭まるが身長170cmで握りコブシ1つ分は確保した

 この時に注意したいのが、ノーマルガソリンエンジンとe:HEVの違いだ。ノーマルガソリンエンジンでは、2列目に座った乗員の足が1列目の下側にスッポリと収まる。

 しかしe:HEVでは、2列目に座った乗員の足が1列目の下側に収まりにくい。そうなると窮屈だから、2列目のスライド位置が少し後退して、3列目の足元空間を狭める場合もある。つまり多人数乗車時の快適性は、e:HEVよりもノーマルガソリンエンジンが優れている。

2列目の膝前を握りコブシ1つ半に調節すると、3列目にも同程度の余裕が生じる

 またクロスターには、エアーが設定していない2列シートの5人乗りもある。この仕様は車内の後部がスロープ状に下がり、車椅子ごと乗車できる福祉車両も用意される。荷室の床面地上高は、3列シートは480mmだが、2列なら335mmと大幅に低い。従って重い荷物も積みやすい。

2列目に座った時、ガソリン車であれば、足が1列目の下にスッポリと収まって着座姿勢もラクだ

 2列シートの荷室は床が低いから、専用のボードを使って上下2段に分けられ、広い荷室を有効活用できる。しかも後席の背もたれを前側に倒すと、荷室の上段と繋がり、広く平らな空間になる。車中泊をする時は、上段で就寝して、下段に荷物を収める使い方も可能だ。

e:HEVでは、2列目に座った乗員の足が1列目の下に収まりにくい。膝がe:HEVよりも持ち上がる。

■新型フリードのグレード選びは?

最上級グレードのエアーEX、e:HEV

 現時点でホンダから価格は発表されていないが、すでに販売店では先行予約が始まっており、価格を明らかにしている。それでは新型フリードの買い得グレードは何か考えていきたい。

 新型フリードのグレードを選ぶ時、まずはノーマルガソリンエンジンとe:HEVの選択を考える。e:HEVは高機能なハイブリッドだが、ノーマルガソリンエンジンと比べた時の価格アップを34万9800円に抑えた。

 街中を中心に使って走行距離が伸びない場合は、軽快に曲がるノーマルガソリンエンジンを選ぶ方法もあるが、一般的に推奨度が高いパワーユニットはe:HEVだ。

 次はグレードを選ぶ。最も買い得なグレードは、e:HEVエアーEX・2WD(価格は304万7000円/6人乗り)だ。e:HEVエアーにアルミホイールや後方の並走車両を検知するブラインドスポットインフォメーションなど、21万円相当の装備を加えて、価格アップを18万9200円に抑えた。

 エアーの外観では物足りない時は、e:HEVクロスター・2WD(価格は320万6500円/6人乗り)も検討したい。e:HEVエアーEX・2WDの価格に15万9500円を加えると、外観がSUV風にアレンジされて、ルーフレールやLEDフォグランプも加わる。

フリードクロスターのガソリン車

 また車中泊などを楽しむなら、荷室の使い勝手を大幅に向上させた2列シートのe:HEVクロスター・2WD(価格は316万2500円/5人乗り)も検討したい。このように楽しく選べるグレードを豊富に揃えたことも、新型フリードの魅力だ。

 正式発表はもう間もなく、6月下旬を予定している。販売店によると5月9日から先行受注が始まっており、すでに納車は8カ月以上となっており、6月中旬に予約すると2025年2~3月になるという。欲しい人は急いだほうがいいだろう。

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