1990年初頭から長きに渡り、トヨタの高級セダンを牽引してきたアリスト。2000年代にはレクサスGSとして活躍の場を変え、2020年に生涯を終えた。名車アリストは何を描き、何を求めたのか。高級セダンの一つの答えを、2代目アリストの中から見つけてしまった…..!
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■専用プラットフォームが生んだ絶妙なパッケージング!!
プラットフォームの共用が当たり前の今のクルマとは一線を画すのがJZS16型アリスト。専用構築されたプラットフォームは、緻密なパッケージングを支える屋台骨となる。
求めていったのは、「FR車ゆえの高度な運動性能とFF車に見られる高いスペース効率の見事なまでの融合」だ。
ただし、主眼はあくまでもスポーツセダンの軸である「走り」にあり、これに加えて快適性を高いレベルへ押し上げることが必要となった。
そこで、巨大化していくクルマの進化とは逆行するように、全長は先代比115mmのダウンサイジング。ロングホイールベースは維持しながらも、ショートオーバーハングを実現する。
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■譲れない、走りに対するこだわり
パッケージングの変化は、走りにも大きな影響を及ぼすものだ。エンジンマウントは、先代よりもキャビン側に50mm移動し、バッテリーはダッシュパネル付近に配置される。さらに、燃料タンクはリアシート下にレイアウトした。
徹底的な重量物の中心配置により、前後重量配分は53:47という理想的な数値に仕上がる。ヨー慣性モーメントが低減され、ハンドリング特性はリニアでニュートラルなものへと進化した。
さらに、走りへのこだわりは、快適性も犠牲にしていない。ヘッドクリアランスは前席で10mm、後席で20mm大きくなり、アクセルペダルからリアヒップポイントまでは25mm拡張されている。
ラゲージ開口部が100mm下がり、515Lのラゲッジスペースを生み出すことができたのも見逃せない。
アリストは、走ってよし、乗ってよし、そして(荷物を)載せてよしという、クルマとしては当たり前だが実現が難しい3要素の融合を、制約の大きいスポーツセダンという枠組みでやってのけた。
そのこだわりが、どれほどのものだったか、お分かりいただけたのではないだろうか。
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■クルマが人に耳を傾ける!?
アリストは、クルマとドライバーの意思疎通にもこだわった。ペダル操作やステアリングを通じて、クルマが人に伝えるのはもちろんのこと、ドライバーの意思をクルマがどこまで読み取れるのかということに、かなり早い段階から取り組んでいる。
そこで、トルコンATのロックアップ制御や、ドライバーの意思と道路状況に応じた最適なシフトパターンを選択するAI-SHIFTを搭載した。
ドライバーがクルマの声を聞くだけでなく、クルマがドライバーに耳を傾ける。これがアリストの作り上げた人馬一体の走りであり、ドライバーとクルマの融合なのであろう。
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■頂に立ち、すべての人に愛されたクルマ
尖ったことをしなくても、各所を突き詰めていけば自然と尖りは出てくることがアリストの在り様からよくわかる。クルマの個性は、内面から滲み出てくるものであり、決して目に見えるものを押し付けることではないのだ。
アリストが描いたのは、クルマの中の「最上」である。そして最高の目的を達成するために、何をすればいいのかを考え、具体的に動いてきた。ここまで手間のかかるフルモデルチェンジは、2代目アリストをおいて他にないだろう。
求めたのは、最高のアリストを作り上げること。それが伝わる開発は、ユーザーのみならず、販売店をも動かした。結果として、作り手・売り手・使い手それぞれが、最高に愛せるクルマが生まれている。
アリストのありさま全てが、最も優れたセダンは何かという問いに対する、一つの優秀な答えなのだろう。
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