今のホンダは「2040年までに全車種をEV、FCV比率100%にする」などかつてのエンジンのホンダとはかけ離れた我々ユーザーとしては悲しい限りだが、過去にはFFミッドシップ縦置エンジンレイアウトという変態エンジンを採用するなど、野郎臭プンプンのエンジンを開発していたのだ。

文:小鮒康一/写真:ホンダ

■FFミッドシップ縦置エンジンレイアウトを採用したアコードインスパイア/ビガー

アコードインスパイアとビガー当時のホンダのラインナップの中では最上級車のレジェンドとミドルクラスのアコードの間を埋める車種として登場した

  エンジンにはさまざまな種類があり、現在はコンパクトカーに採用される直列3気筒や最もポピュラーとも言える直列4気筒、大排気量車に採用されるV型6気筒や直列6気筒などはよく知られるところ。

 そんなエンジンの種類の中でも、V型12気筒に匹敵するほどレアなのが直列5気筒なのだが、その直列5気筒を縦置きに搭載し、フロントを駆動するというヘンタイメカニズムを採用した車種があったのだ。

 直列5気筒エンジンを縦置きに配置し、前輪を駆動させるというレイアウトを採用したのは、1989年10月に登場したアコードインスパイアとビガー。

■極上エンジンを搭載した2車種

 この2車種は販売店違いの兄弟車で、当時のホンダのラインナップの中では最上級車のレジェンドとミドルクラスのアコードの間を埋める車種として登場した。

 直列5気筒エンジンは4気筒と6気筒のよさを併せ持つエンジンとされており、2LNAエンジンとしてトップクラスの性能と上級車に求められる質の高さを兼ね備えたエンジンを開発する上で、アコードインスパイア/ビガー専用エンジンとして開発されたG20A型エンジンを搭載。

 そのエンジンを重心位置を全輪車軸より後ろに下げ、重量物を車体中央に寄せて搭載する「FFミッドシップレイアウト」を実現するために縦置き。

 また、前輪駆動であるため必須となるドライブシャフトは、オイルパンを貫通させることでエンジンの搭載位置が上昇することを防ぐというようなこだわりの詰まったレイアウトとしていたのである。

 その結果、高いハンドリング性能の実現や、ロングノーズかつショートオーバーハングの美しいプロモーションを実現し、そのスタイリングはまるでFR車のようだと評された(決して最初からFRレイアウトで作ればいいのでは、と言ってはならない)。

■叶わず幻に

市販モデルにはご存知の通り4気筒のF20C型エンジンが搭載され、5気筒モデルが市販化されることはなかった

 その後は1992年に排気量を拡大し、2.5LとしたG25A型エンジンをインスパイア/ビガーに搭載したほか、93年に登場したアスコット/ラファーガや、95年にフルモデルチェンジを実施したインスパイア/セイバーにも搭載された。

 さらに1995年に開催された東京モーターショーに出展されたS2000のプロトタイプ、SSMにはDOHC VTEC化がなされたG20A型エンジンが搭載されていた。

 しかし、市販モデルにはご存知の通り4気筒のF20C型エンジンが搭載され、5気筒モデルが市販化されることはなかったのだった。

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