富士急行といえば山梨県の会社で鉄道やバス事業の他に富士急ハイランド等の施設も運営している企業だ。その富士急が箱根や熱海にも本格的に手を出したらしい。何をはじめたのかを取材したのでレポートする。2日目は温泉と離島のパワースポットだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)
■2日目に備えて…
箱根・十国峠と回ってきたメディア取材のために貸切られた富士急バス八王子営業所の日野セレガは、2日目に備えて熱海市内へと入っていく。
箱根は神奈川県で十国峠ですでに静岡県に入ってはいるが、熱海市中心部までやってくると、やはり東海バスや伊豆箱根バスというイメージが強いので貸切車とはいえ違和感を感じる。
何はともあれ、2日目に備えて熱海で宿泊しなければならない。案内されたのは熱海シーサイド スパ&リゾートだ。
■熱海シーサイド スパ&リゾート
このホテルは温泉リゾートホテルだが、なんと富士急行が運営する。富士急色がまったくしないが、間違いなく同社グループだ。ちなみに全室がオーシャンビューだ。
リゾートホテルなのでシングルルームはない。ツインの部屋をあてがわれたが、それでも相当広い。ファミリーユースで子供が一緒ならこれくらいの広さでちょうどいいのだろう。
■バイキングの食事がすごすぎる!
夕食バイキングはそれはもう豪華だ。カニから刺身まであらゆる食材が食べ放題だ。アルコールの飲み放題は後から付けることができるので、お父さんも安心して飲める。
さらに翌朝の朝食バイキングはもっとすごかった。カニや刺身はないが、旅館の朝ごはんと言ったらコレ!というものはすべてそろっている。熱海といえば干物だが、すでに焼いたものではなく、自分でコンロで焼くのでその香りがまたたまらない。
ご飯に乗せる海産物も豊富で、朝から海鮮丼が楽しめるとは思わなかった。この素晴らしい朝食を楽しもうと思えば、夕食はほどほどにしておいた方がいいのかもしれない。
■本物の温泉はビル上の露天で楽しむ!
熱海は言わずと知れた温泉地、歴史ある名湯だ。全室オーシャンビューの同ホテルは狭い平地を有効に使うためにビル状になっている。温泉も1階の庭園…というわけにはいかず上階に存在する。
しかしビルの中でも露天風呂が楽しめるような設計になっており、庭園こそないが代わりに夜景が楽しめる。露天風呂で夜景というのは山上でなければない光景だが、ここにはそれがある。
■初島航路
明朝、ホテルをチェックアウトしたメディア記者たちは、日野セレガに乗り5分ほどで熱海港に到着した。これから熱海市の離島である初島を取材するために高速船に乗り込む。
この航路も富士急行が運営する富士急マリンリゾートが運航している。よく考えたら報道関係者を送迎したバス、箱根の遊覧船、十国峠関連施設、熱海のホテル、初島へ渡る船舶、すべて富士急グループで完結している。
ついでに初島島内のリゾート施設であるPICA初島も富士急なので、付近一帯はすべて富士急ということになる。その勢力地図はもはや山梨県にとどまらないことを改めて実感した。
高速船に乗船すると約30分で初島に到着する。観光客も多いが、到着してみるとやはり先着していたのは釣り客だった。港の防波堤や堤防は絶好の釣り場で、多くの釣り人たちが釣果を競っていた。
■バス停が増えている!
初島港にはバス停がある。とはいえ路線バスは走っていない。富士急バスでお役御免になったバス停が高速船の時刻表として港に鎮座している。
初島側に改札はないので、きちんと「バス停」の前に並んで熱海行きの船を待っているのが面白い。さらに港を出ると、これまた富士急バスの旧バス停が案内板として使用されており、バスファンには興味深い。
■離島パワースポットで御朱印!
初島には2つの神社がある。そのうちの一つ「初木神社」を含めて神職は常駐していない無人の神社だが、きちんと整備されており島内統一仕様の多言語案内版もある。しかも初木神社は参拝後に御朱印の授与を受けられるのだ。
初島港の旅客待合施設兼土産物店である「シマテラス初島」には自販機や漁協ATMがあるほか、事務所では初木神社の御朱印を受けることができる。書置きだが、その場で印璽を押してくれる本物だ。
初木神社は由緒によると、熱海・伊豆山神社の境外社扱い。主祭神は初木姫命で、伊豆山の伊豆山彦と結ばれたストーリーが残る。詳細は由緒書きをご覧いただきたい。
■富士急はどこまで広がる?
今回の取材を通して、さすがリゾート開発の富士急という感じを受けたのと同時に、新たに開発した箱根や十国峠、熱海や初島を首都圏と結ぶ直接の交通機関は存在せず、いずれか一つを選択して目的地とするのであれば問題ないが、いくつかを回ろうとしたときの課題があると感じた。
富士急行のことだから、新たに鉄道路線を敷設するのはいまさら無理だとしても、バス路線で結ぶことは可能だと思われ、これから同社がどう出るのかが注目される。
都市間高速バスは富士山周辺と首都圏との間で多くの便を持っているが、果たして広げているリゾート開発地を観光客が一帯を目的地と考えるように結ぶことができるのかが勝負になるだろう。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。