車両代金のほか、登録諸費用、税金、自動車保険、メンテナンス費用など維持費がコミコミで、毎月定額の利用料を支払うことで、クルマを利用できる、トヨタのサブスクリプションサービス、KINTO。そのKINTOに新たにAR(拡張現実)を使ったクルマの機能案内をはじめ、契約情報をもとに一人一人に合わせた機能の一覧リストを無料での提供を始めた。さてどんな新サービスなのか、実際に体験したので報告したい。

文:ベストカーWeb編集部/ベストカーWeb編集部、KINTO

■クルマのサブスク「KINTO」を知っているか?

ハンドルにスマホのカメラをかざすとARでクルマの機能を案内する新サービスを開始。取り扱い説明書だと見る気もしないがこれならば見る気になる

 新車を購入する際、車両代金だけなく、頭金や税金、諸費用、任意保険などがかかってくるのはご存じのとおり。これらの付帯費用を含め、毎月定額の利用を支払ってクルマを利用するサービスが、クルマのサブスクリプションサービス(通称サブスク)だ。

 トヨタのサブスクは「KINTO」で2019年からサービスを開始し、「顧客体験のデジタル化」を推し進め、サブスクサービスの見積りから契約までの一連の手続きをWebサイトで完結する仕組みを構築してきた。

 例えばプリウスUグレードは月額1万8480円、納車目処は1.5カ月(2024年1月現在)と納期が早いのもメリットの1つだ。

 2023年には、クルマを購入後の「進化=アップグレード」と「見守り=コネクティッド」を加えた「KINTO Unlimited」をプリウスから開始し、専用の「KINTO Unlimitedアプリ」を使って、アップグレードやコネクティッドの各種サービスを展開。

 KINTOは、若年層を中心に2023年12月末の時点で累計10万件の申し込みを突破し、順調に拡大中という。KINTOが若年層に実施した調査では、「自身のクルマに付いているスイッチの用途や使い方を十分に理解」と回答したのはわずか25%しかなかったという。

■ARを使った先進的な機能説明サービス

 こうした現状を踏まえてKINTOが2つの新サービスを開始した。1つはARでクルマの機能を案内する機能「これなにガイド」だ。クルマ初心者に向けて、クルマに搭載されている各種機能をスムーズに使えるようにと、ARでクルマの機能を説明するものだ。

 ちなみにARとは「Augmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)」の略で、現実世界を立体的に読み取り、仮想的に拡張する技術のこと。

 具体的にはアプリでカメラを起動させ、スマホのカメラをステアリング左右にある各種機能のスイッチにかざすと、実在の空間にバーチャルなコンテンツを重ねて表示する。

機能スキャンのボタンをタップし、スキャンすると1つ1つのスイッチの機能が表示され、動画を含めた機能の解説を見ることができる

 実際にアプリがインストールされているスマホで体験してみた。スマホのアプリの「機能スキャン」ボタンをタップして、車内で知りたい場所にカメラをかざすと、そのスイッチの機能ガイドが確認できるというもの。

 正直、先進装備はオーナーになっても、取り扱い説明書やメーカーホームページで確認することはあまりしないと思うので、こうした機能がスマホで気軽に読めるというのは本当にありがたい。

 ARを使ったスイッチの機能解説を実際に使ってみた。ハンドル右側に配置されているスイッチにスマホをかざしてみる。

 すると、ハンドルに示されたのは、「上から運転支援する機能を操作」、「先行車の一定の車間距離での走行を支援する機能」、「オーディオの各種切り替えができる」、「オーディオのソースの変更ができる」。それぞれ、確認したい場所をタップすればそれぞれの機能解説文を読むことができる(動画解説もあり)。これだと目の前で、説明文をサクサク見ることができるので、最新装備の使い方が頭に入ってくる。

 対象車は、2023年1月から発売されているプリウスのZ(PHEV)、G、Uの各グレードで、サブスクサービスのみならず、購入など、車両の利用方法を問わず使うことができるという。

■パーソナライズ機能「My list」

パーソナライズ機能、「My list」

 2つ目は、契約情報をもとに、一人一人に合わせた機能の一覧リストの提供。これはメーカーオプションや「KINTO Unlimited」を通じてアップデートしていく機能と、契約情報とアプリを紐づけた個々の情報を一覧にしたパーソナライズリスト、「My list」が提供される。

 リスト化される機能としては、プリクラッシュセーフティ、緊急時操舵支援(アクティブ操舵機能付き)、レーンチェンジアシスト、レーダークルーズコントロール、パノラミックビューモニター、トヨタチームメイト(アドバンストパーク)など合計33機能におよぶ。

 例えば自分の愛車に気になる機能が搭載されているかどうかわからない場合、「My list」で検索すると搭載済みか未搭載か表示される。

 対象車は2023年1月に発売された、サブスク専用のUグレードのみ。ちなみに諸費用コミコミと、ソフトウェアアップグレード、ハードウェアアップグレード、コネクティッドドライブトレーナー、コネクティッドカーケアという4つの新サービスで契約すると、月額利用料は3年契約でボーナス併用なしの場合は月々5万1040円、5年契約の場合は月々4万7520円。

■コネクティッドドライブトレーナーやデジタル機能を追加

コネクティッドドライブトレーナーのイメージ

 さらにプリウス、ヤリス、ヤリスクロスのUグレードを対象に提供している「コネクティッドドライブトレーナー」に新機能を追加したほか、プリウスのUグレードを対象に提供しているアップグレードサービスの新アイテムとして「デジタルキーを追加した。

 コネクティッドドライブトレーナーは、トヨタのコネクティッドサービス「T-Connect」を通じて、急加速、急減速だけでなく、ウインカーやハンドル操作などユーザーの運転操作データを収集し、安全やエコな運転につながるポイントをアプリでユーザーにアドバイスするサービス(無料)。

 アクセル、ブレーキ、ハンドル、ウインカー、バック、の5つの安全項目で細かく分析したうえで、S、A、B、C、Dの5段階でそれぞれ評価し、これに基づいてKINTOが、安全運転につながるポイントをアプリ上でお客様へアドバイスしている。

安全アドバイス(左)とドライブ履歴。同じメニューに参加しているユーザー同士でランキングできる。燃費ランキングも表示

 このコネクティッドドライブトレーナーに今回追加された機能が「トレーニング機能」だ。運転データをもとに、安全な運転につながるペダル操作など、ユーザーごとに適したトレーニングメニューをお薦めするという。

 そのメニューをもとに、自身の目標を設定すると、それを達成するため「心がけポイント」を表示するとともに、運転後に振り返る仕組みもアプリに設けている。

 同じメニューに参加しているユーザー同士で、取り組みの度合いに応じたランキングも見ることができるという。

月間の安全ランクがAランクと判定された画面

 またトヨタとKINTOで「安全運転」と認定したドライバーに対して、KINTO独自のNFTの証明書を発行し、その証明をブロックチェーン上に記録する、モビリティ業界で初めての実証実験を2024年6月から実施している。

 KINTOでは、整備履歴や走行距離など、「車両」に残る記録と異なり、「ドライバー」に紐づく「安全運転」の証明をブロックチェーン上に残し、その証明を通じてドライバーを評価する仕組みが広く普及すれば、安心で便利なモビリティ社会の構築に貢献できると考え、モビリティ業界で初めてとなるこの取り組みを行うことに決めたという。

左から運転が終わった後にレベルごとに設定された「心がけポイント」を自己採点する画面。自己評価と達成率を見比べられる(中央)。取り組んでいるトレーニングの進捗状況が確認できる(右)

 最後に、デジタルキーの追加。スマートフォンアプリでドアのロック/アンロック操作やエンジンの始動などを可能にする機能で、プリウスではこれまでZグレードにのみメーカーオプションとして設定されていたが、今回からUグレードの納車後にアップグレードできるようになった。

 KINTOの使い勝手がいいところは、利用開始時点でいらないと思っていたオプションでも、欲しくなったら後付けも可能な「ハードウェアアップグレード」というサービスがあること。

 これは将来のアップグレードを想定し、後付けに必要な部品などをあらかじめ織り込んだトヨタ初の「アップグレードレディ設計」としたことで、これまで新車注文時にしか装着できなかったメーカーオプションも後付けできるというもの。

 例えばデジタルキーは月額に+2090円、アドバンスドパークは月額+2640円、パノラミックビューモニターは月額+3410円。

 おさらいとなるが、「ARでクルマの機能を案内する機能」は、プリウスZ(PHEV含む)、G、U、今後はヤリス、ヤリスクロスへ拡大予定。「一人一人の一覧リスト」は、サブスク専用のUグレード。「コネクティッドドライブトレーナー」はプリウス、ヤリス、ヤリスクロスのUグレード。「デジタルキー」はプリウスUグレードに新規アップグレードが可能となっている。今後、ほかの車種への幅広い展開を期待したいところだ。

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