ホンダが新型フリードの情報を先行公開してから、2ヶ月が経過しようとしている。ライバルのシエンタも一部改良を終え、両者の実力が出そろった形だ。ここまでフリードを圧倒してきたシエンタの勢いは、新型フリードの登場で変わるのか。真に売れるコンパクトミニバンはどちらなのかを、考えていきたい。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ、ホンダ
■売れ筋は最上級グレード? でもコスパはシビアに見られている
ひところは中間グレードが、そのクルマの売れ筋グレードだったわけだが、最近では最上級グレードの人気が高い。特に、小さいクルマであればあるほど、最上級グレードが選ばれる傾向にある。
シエンタでは、前述の通り最上級のハイブリッドZの7人乗り(303万6600円)が人気を集める。フリードでも同様の傾向が表れ始めているようで、e:HEVのAIR EX 6人乗り(304万7000円)が、売れ筋グレードになりそう。(※両者ともに駆動方式は2WD)
車両本体価格だけで比べれば、シエンタが1万400円安いという結果に。これくらいの価格差は、ほとんど無いように思えるが、詳細な見積もりを作り上げた後に比較していくと、地味だった1万円の差が決め手になることもある。
車体としてはシエンタの方がフリードよりも一回り小さくなり、装備や機能ではほぼ互角かといったところか。ただ、安全装備や燃費では、シエンタが後発のフリードを上回る点が多く、シビアにコスパを切り詰めれば、シエンタの方がユーザーにとって有利に働く点は多そうだ。
新型モデルということで、登場から数か月はフリードの強さが目立ちそうだが、こなれてくるとシエンタが地力の強さを見せてくる予感。毎月約1万台を販売し続ける、爆売れモンスターのシエンタを倒すのは、リニューアルしたフリードとはいえ、そう簡単にはいかないだろう。
■5人乗りモデルに対する考え方が勝負を分ける?
この手のコンパクトミニバンでは3列目に重きを置かないユーザーも多く、最初から2列仕様を選ぶ人も一定数いる。こうした5人乗りを選ぶユーザーが求めるのは、乗車人数が少ないが故のお得感だ。
シエンタでは5人乗り仕様では、Gグレードの普及率が上がってくる。また、他グレードでも5人乗りを選べるのもシエンタの利点だろう。とりわけガソリン車が人気で、シエンタのガソリンGで5人乗りの2WDなら、車両本体価格は233万7500円だ。
一方、新型フリードで5人乗りはクロスターだけに用意される。デザインや装備の充実感を売りにしていて、これまでシエンタが作り上げてきた、お得な5人乗りの王道とは大きく違う印象を受ける仕上がりだ。
車両本体価格は、フリード・クロスターのガソリン2WDで281万2700円となる。シエンタよりも50万円近く高い価格が、ユーザーを遠ざけなければいいのだが。
ただ、アウトドアシーンで活躍する「ギア」ならば、圧倒的にフリード・クロスターの出来が良い。しかし、先代シエンタで用意されたFUNBASEやGLAMPERはそれほど大きな話題にならずに消えていったことを思い返すと、ユーザーがコンパクトミニバンに「ギア感」をどこまで求めるのかは心配になるところだ。
5人乗り選択のユーザーたちが、質を取るのか価格を取るのか。フリード・クロスターの売れ行きが、両者の販売台数の伸びを、大きく左右すると言っても過言ではないだろう。
■どっちが売れる? 販売現場の様子は?
ホンダの販売現場は、今のところ伸び続けるフリードの注文に、てんやわんやしている状態だが、祭りが終わった後にはどうなることか。フリードの好調な販売で、ライバルのシエンタを気にする様子は伺えないが、果たして1年後も祭りは続いているだろうか。
対するトヨタ販売店は、冷静に現況を見つめる。先代・先々代を含めたシエンタユーザーの流出には敏感になっているものの、話題性では不利なフリードに対して、変に勝負をしようとする気配も少ない。新型フリード登場前と同じく、淡々とシエンタを売り続けている印象だ。
シエンタが作り上げた月販1万台という壁は、人気のフリードにも高い。結論として、パワーバランスの変化は限定的と筆者は読む。よって、売れるクルマはどちらかと言えば、やっぱりシエンタになるだろう。
力関係を変えるには、フリードの売り方やPRの工夫が必要になる。正式発売以降のホンダ・フリード陣営の動きに注目だ。
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