国内外で高い評価を得ている日本車があるいっぽうで、海外で大ウケなのに国内ではパッとしない日本車も数知れず。言っちゃ悪いが、“なぜ、これが人気なの?”と叫びたくなるクルマも。そんなモデルをここでは紹介したい。
文:FK/写真:スズキ、トヨタ、日産、ホンダ、Newspress UK、Newspress USA
■日本では少々地味だった日産のデュアリスが欧州では圧倒的な存在感を発揮!
“スマート&コンパクトクルーザー”のコンセプトを掲げて開発され、2007年5月に登場したミドルサイズクロスオーバーSUVのデュアリス。
軽快かつコンパクトな上半身と、SUVらしいダイナミックさと安心感を持つ下半身を融合させた個性的なエクステリアをデザインにおける最大の特徴としていたデュアリスは、発売後約1.5カ月を経過した段階での受注台数が累計1万163台に達するなど好調なスタートを切った。
先述したデザインはもとより、ちょっと小ぶりなSUVはデイリーユーズでの使い勝手がよく、見た目もスタイリッシュかつ都会的であり、低中速トルクを向上させたMR20DEエンジンと新世代エクストロニックCVTの組み合わせもキビキビした走りをもたらしたデュアリス。
すべてにおいて及第点が与えられる優等生だったことは間違いなかったが、裏を返せば個性がなかったこともまた事実。それが災いしたのか、その後のセールスは低迷して2014年3月に国内での販売は終了した。
そのいっぽうで、海外では“キャシュカイ”の車名で大人気を博しているデュアリス。2007年3月に欧州市場での発売を皮切りにアフリカ、中近東、オセアニア、中国をはじめとするアジア、中南米市場など世界へ投入され、各国で高い評価を得ているのだ。
2007年11月の最終週に欧州で累計販売台数が10万台に到達すると、2011年1月には世界販売台数100万台を達成。欧州の日産車ラインナップにおいても4年連続で販売台数ナンバーワンを獲得するなど、日産の屋台骨を支えるヒットモデルとなった。
そんなキャッシュカイは現在も販売が継続されており、2022年には英国における自動車販売台数第1位を獲得。2024年4月には大幅に改良された次期モデルも公開され、大きな注目を集めている。
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■中国でバカ売れの日産・シルフィがめちゃくちゃカッコいい!
2012年12月に発売を開始したシルフィは日本やアメリカといった主要市場だけでなく、中国、タイ、中南米といった新興市場を含めた世界約120ヵ国で販売されたグローバルセダン。
洗練された美しいデザインとクラスを超えた高い快適性を特徴としたシルフィ。
パワートレーンも新開発の1.8LエンジンのMR18DEと副変速機付のエクストロニックCVTを採用して力強くてスムーズな走りを身上としていたが、“乗ってみたいか?”と問われれば……おじさん臭が漂う見た目もあって、お世辞にも“はい”とは言い難いモデルであった。
その後、2015年1月には専用16インチ切削光輝アルミホイールや本革シートと専用合皮ドアトリムなどを採用した特別仕様車のGルグラン、同年8月には専用デザインのエアロパーツや16インチ切削光輝アルミホイールなどを装備してスポーティ感を高めた特別仕車のSツーリングを発売したものの起爆剤とはならず、2021年10月に国内での販売が終了した。
しかし、海外では根強い人気を誇っていたシルフィ。上海モーターショー2019において、最新のニッサン インテリジェント モビリティ技術を搭載した新型が世界初公開され、同年7月に中国での販売を開始した。
その内容を見てみるとスポーティかつ低い重心が目を惹く流線形のエクステリアデザイン、日産デザインを象徴するVモーショングリル、最新のHR16DE型エンジンとエクストロニックCVTの組み合わせなど、どれをとってもカッコいいったらありゃしない。
このパッケージだったら、中国市場で2020年からセダン市場で3年連続販売台数ナンバーワンを維持し、2022年度の販売台数も42万台以上に達するのもナットク! 日本でも売ればいいのに……。
■世界一にも輝いたホンダのCR-Vだけに今夏の復活は当然でしょ!
“Comfortable Runabout Vehicle”の頭文字を取った車名のとおり、生活のあらゆるシーンを快適かつ自由に走り回る移動体を目指して1995年に誕生したCR-V。
セダンの快適性にミニバンのユーティリティ、さらには高い機動性を併せ持つSUVは北米や欧州、アジアなど、世界各国で販売されるグローバルカーとしても人気を集め、2016年にSUV世界販売台数ナンバーワンを達成するとともに各国で数々の栄誉ある賞を獲得。
もちろん、日本においてもその人気は高かったが、先述のように世界各国の評価を鑑みると“もっと売れてもよかったのでは?”と思わずにはいられない1台ではないだろうか。
北米では現在も販売が継続されているCR-Vだが、国内では2022年11月のZR-V発表を受けて2022年12月に販売が終了。
その最終モデルは2018年8月にガソリンモデルが先行で発売されたが、発売から約1カ月後の累計受注台数は5000台を超え、月間販売計画(販売計画1200台/月)の4倍以上となる好調な立ち上がりを示した。
好調な立ち上がりを示した要因となったのはSUVならではの力強く頼もしい走破性を想起させる外観デザイン 、全グレードに標準装備した先進の安全運転支援システム、高い質感と使い勝手のよさを追求したインテリア、低燃費と力強い走りの両立、広くて快適な居住空間など枚挙に暇がない。
また、7人乗りの3列シート仕様も設定されていたことからミニバンから乗り換える子育てファミリー層からも支持を得ていた。
そんなCR-Vが2024年夏、水素を充填して走るFCEV(燃料電池自動車)にAC充電機能をプラスしたe:FCEVとして復活。ホンダがゼネラルモーターズ(GM)と共同開発した燃料電池システムを搭載した次期CR-Vの動向にも注目を。
■トヨタのカムリをもってしても国内のセダン市場縮小には歯止めがかからず……
1980年に日本で誕生して以来、100を超える国や地域で販売されているカムリ。米国で15年連続乗用車販売台数ナンバーワンを獲得するだけでなく、2016年には販売台数が世界累計1800万台超えを達成するなど、名実ともにグローバルモデルとしての地位を確立した。
そんな“人気モデル”のカムリが発売から約24年後の2023年12月に国内販売を終了。
ちなみに、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が発表した2023年1~12月乗用車ブランド通称名別順位でカムリは8825台の50位にランクイン。日本でも決して売れていないというわけではないが……。
2017年7月に登場した先代型カムリはTNGAに基づくエンジンとプラットフォームの一新を受けたが、その一番の魅力は磨き抜かれた美しいスタイリング。
外観のデザインはエンジンと乗員レイアウトを下げることで低重心シルエットを実現し、フロント周りもスリムなアッパーグリルと立体的なロワグリルを対比させてワイドなスタンスを際立たせている。
また、インテリアも部品の小型化やレイアウトの見直しでインパネの厚みを抑えたほか、エンジンフード、カウル、ベルトラインを下げて視界を良くするなど、スポーティかつ広がり感のある空間を実現している。
他にも、液体封入式エンジンマウントの最適配置による上質な乗り味、ボディのねじれ現象を抑制する環状骨格構造の採用による優れた操縦安定性、最大熱効率41%と高出力を両立したダイナミックフォースエンジン2.5Lと進化を続けるハイブリッドシステム(THSII)の組み合わせによる33.4km/Lの低燃費と優れた動力性能の両立など、特筆点は枚挙に暇がない。
世界的に評価が高いカムリの新車が、その生まれ故郷である日本ではもう買えないとは、何とも皮肉な話である。
■インドで大人気のスズキバレーノは“なんで日本では売れなかったの?”
スズキの小型乗用車作りのノウハウを駆使し、デザイン、居住性、走行性能、安全性能などコンパクトカーに求められる要素を高次元で調和させたバレーノが発売されたのは2016年3月。
その後、2020年7月に国内での販売が終了し、わずか4年という短い車生に幕を閉じた。それだけに日本ではマイナー車のイメージが強いが、その中身を見てみると“販売終了が惜しい”と言わざるを得ないスペックだったことがわかる。
例えば、走りを重視する人も満足できるターボモデルの設定。燃費とパワーを両立する新開発の1L直噴ターボエンジンは、直噴化と過給器によって1.6L自然吸気エンジンに相当する高出力、高トルクを実現。トランスミッションにもダイレクトなシフトレスポンスを味わえる6速ATを採用するだけでなく、6速マニュアルモード付きパドルシフトも装備されていた。
加えて応答性が高く、安定感のある操縦性とロングドライブでも快適でしなやかな足回りもまた秀逸で、サスペンションフレーム構造を最適化することで軽量化と高剛性を両立。フロントとリアにはスタビライザーを採用するなど、コンパクトハッチバックたる軽快な走りも見どころであった。
また、Bセグメント用の新開発プラットフォームによるゆとりある居住空間と荷室スペースの確保や衝突被害軽減システムをはじめとする先進安全技術の導入など、グローバルコンパクトカーとして欧州をはじめ、世界の市場に展開された。
先述のとおり、日本では2020年7月に販売が終了したが、インドでの人気は絶大を誇り、2021年11月には累計販売台数が100万台を突破。2022年2月にはフルモデルチェンジを行い、インドをはじめ、アフリカ、中南米、中東などでの販売が発表され、現在も販売が行われている。
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