最近はハズレと思うものがほとんど見当たらないSUV。だけど、過去にはまったくと言っていいほどパッとしなかったSUVも少なからず存在した。ここでは、そんな悲しい運命を辿ることになった4台を紹介したい。
文/FK、写真/日産、ホンダ、マツダ、三菱
■ゲテモノ感もなんのその! 今こそ欲しいぞ「日産スカイライン クロスオーバー」
クーペとSUVの融合から生まれた流麗で躍動感のあるデザインが最大の特徴だったスカイラインクロスオーバーが発売されたのは2009年7月。
この頃の本家スカイラインといえば北米市場に導入されたV35型の流れを汲んだ12代目のV36型が販売中だったが、大幅な路線変更を行ったV35型&V36型はスカイラインのイメージを大きく変えた世代でもあった。
それゆえに賛否両論が巻き起こり、国内での人気は低迷。そんなスカイライン混迷期に登場したのが、スカイラインクロスオーバーというわけだ。
このような時代背景から、少々ゲテモノ感を漂わせるスカイラインクロスオーバーだが、そのスペックを見るといまでも魅力あふれる内容に驚かされる。
まずはエンジン。クラストップレベルとなる330psの最高出力を誇る3.7LのV6エンジンは力強さと扱いやすさ、高回転まで軽快に吹け上がる伸びのよさを実現。
これに組み合わせられるマニュアルモード付7速ATも幅広いカバーレンジを有するギヤ比によって伸びやかで途切れのない加速を実現するなど、スカイラインを名乗るにふさわしい運動性能が与えられていた。
また、高級車にふさわしいしなやかで上質な乗り心地を実現するとともに、駐車ガイド機能付きアラウンドビューモニター・車線逸脱防止支援システム・前方車両接近警報・インテリジェントクルーズコントロールといった多くの先進装備も採用されていた。
しかし、本家スカイラインと同様にセールス的に成功を収めることができず、2016年に生産終了。
SUVブームにまったくといっていいほど乗ることができなかったスカイラインクロスオーバーではあったが、現在の中古車市場ではタマ数こそ少ないものの100万円以下で買える個体も多く、お買い得感は高い。
個性的なSUVを求める人にとっては、実はうってつけの1台かも!?
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■アクが強い外観だけではない! 実は中身もかなりイケてた「ホンダHR-V」
斬新なスタイル、優れたユーティリティ、爽快な走りを5ナンバーサイズに収まるコンパクトな車体に集約した新ジャンルのSUVとして1998年9月に登場したHR-V。そのDNAは絶大な人気を誇るヴェゼルに受け継がれている。
一方、ヴェゼルの前身モデルに当たるHR-Vは対照的に一代かぎりで姿を消したSUVとして知る人ぞ知る存在だ。
既存のカテゴリーを超える新しい提案ともいえる“ワゴンでもクロカンでもないひと目でわかる斬新なスタイリング”がひと際目を惹いたHR-V。
全高を抑えながら地上高を高く取って大径タイヤを組み合わせた、若者をターゲットとしたジェットフィール感覚のハイライダースタイルは少々アクが強かったものの強烈な個性を主張。
また、爽快なハンドリングとスポーティな走りもHR-Vの大きなアドバンテージだった。エンジンは排出ガス中の有害物質を10・15モード、11モードともに国内排出ガス平均規制値の10分の1レベルに低減した1.6LのVTEC(最高出力125ps)と1.6L SOHC16バルブ(最高出力105ps)の2種類を設定。
トランスミッションも理想的なシフトコントロールを可能とするプロスマテック制御を採用した無段変速機のHMM-S(ホンダマルチマチックS)にだけでなく、5速MTも採用されていた。
さらに、ボディ変形量の最小限化と乗員傷害値低減を高次元で両立した衝突安全設計ボディをはじめ、歩行者傷害軽減ボディに前席頭部衝撃保護インテリアなど、世界最高水準の安全性能も達成。
このように意外と見どころが多い1台だったが、2006年に販売終了。現役当時は地味な存在だったHR-Vだが、現在の中古車市場における平均価格は70万円前後と年式のわりに価格は少々高めな印象。
とはいえ、現行モデルでいえばライズやロッキーと同クラスのSUVで使い勝手もいいとくれば、ちょっと気になるという人もいるのでは?
■ランエボのSUV版ともいえる「三菱エアトレック」は登場した時代が悪かった!?
RVの走破性と乗用車の居住性を両立し、既存のRVを超える次世代クロスオーバーSUVとして2001年6月に登場したエアトレック。
“スマートオールラウンダー”をコンセプトに開発されたエアトレックのパッケージは広い居住空間と確保するべく2625mmのロングホイールベースが採用されるとともに、16インチの大径タイヤなどによって195mmの最低地上高も確保。シート着座地上高も600mmに設定することで、楽な乗り降りも可能にしたSUVであった。
また、全高を1550mmに抑えて立体駐車場に入庫できるような配慮がなされるなど、現代のSUVに通じる新しい都会派SUVとしての側面も持ちあわせていた。
インテリアも運転席と助手席間のウォークスルーや6:4分割式リアシートを採用するなど、日常的な使い勝手も良好であった。
一方、走りの面でもこだわりのスペックを有し、2.4LのGDIエンジンにシフトタイミングの最適制御を図りつつドライバーの違いに対応する学習制御を導入したINVECS-IIスポーツモード4ATを採用。4WD車にはVCU付センターデフ方式フルタイム4WDも設定されるなど、魅力的な装備も充実していた。
その後、2002年6月にはランエボ譲りの2L4G63インタークーラーターボモデルが追加され、2003年1月には大型前後バンパーや車体のリフトアップ、精悍なフロントマスクや大型ルーフレールなどRVテイストを施したスポーツギアを発売するなど進化を果たしたエアトレックだったが、2005年に後継モデルに当たるアウトランダーの登場によって生産終了。
三菱自動車のリコール隠しが問題になったタイミングと販売時期が重なっていたこともあって不発に終わったエアトレック。それだけに現在の中古車市場でもタマ数は極めて少ないが、平均価格は70万円前後と割安感は高い。
■見た目も走りもスポーティだった「マツダCX-7」は図体のデカさが仇となった
スポーツカーとSUVの特徴を融合させたスポーツクロスオーバーSUVをコンセプトに、2006年12月に発売されたCX-7。
同年5月に北米市場で販売を開始し、その洗練されたスタイリングや優れた走行性能などが好評を博していたCX-7は、「アドバンスト・フロンティア」をデザインコンセプトとしたスポーツカースタイリングを実現。
インテリアも搭乗者にはゆったりとしたくつろぎを提供する室内空間を提供しつつも、ドライバーにはスポーツカー特有のコックピットに座った時の高揚感を演出するなど、内外装ともにスポーティさを強調する仕上がりが大きな特徴でもあった。
エンジンはCX-7専用にチューニングされたMZR 2.3LのDISIターボエンジンを搭載。2000rpmから4500rpmまではほぼフラットに最大トルクを維持し、最高出力を5000rpmで発生させるなどクラストップレベルの加速力を実現。
スポーツカーらしい走りをより際立たせる6速ATのアクティブマチックを全車に標準装備するなど、まさにマツダらしい「Zoom-Zoom」を体現した走りの楽しさも提供した。
また、CX-7における特筆点として忘れてならないのは、最先端の安全技術によってクラストップレベルの安全性を実現したことだ。
4輪アンチロックブレーキシステム・電子制御制動力配分システム・トラクションコントロールシステム、駐車支援システムを全車に標準装備するとともに、衝突時の衝撃エネルギーを車両全体に分散させながら吸収することによってキャビンの変形を抑える高剛性・安全ボディのMAGMAを採用。
車両本体価格も306万~366万円と比較的リーズナブルだったが、海外市場を意識したボディがやや大柄だったことなどが災いしてセールスは伸び悩み、2012年に販売終了。
不人気車だったこともあって現在の中古車市場でもタマ数が少ないCX-7だが、平均価格は60万円前後と手が出しやすい状況にある。
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