本田技研工業(以下、ホンダ)の名車「ホーネット」が、新型モデル「CB1000ホーネット(CB1000 HORNET)」となって復活する。
ホーネットは、昔からのバイク・ファンならご存じのとおり、1990年代中盤から2000年代前半に大ヒットした人気シリーズ。250ccや600cc、900ccといった豊富なラインナップを誇り、いずれも高性能なエンジンを幅広いライダーが扱いやすい特性に調教。アップライトなポジションなどにより、ストリートを軽快に走れることが魅力のネイキッド(カウルレス)モデル群だ。
その後継モデルといえる新型は、近年人気が高い「ストリートファイター」と呼ばれる最新のスタイルを採用。サーキット走行にも対応したフルカウルモデルとなり、2017年型「CBR1000RR」に搭載された1000cc(正確には999cc)・直列4気筒エンジンを搭載するなど、高い動力性能を持つことが注目だ。
そんな新型CB1000ホーネットを「第51回 東京モーターサイクルショー(2024年3月22~24日・東京ビッグサイト)」で取材。まだ、発売日や価格などの詳細は明らかになっていないが、現在わかる範囲で特徴などを紹介しよう。
この記事の画像を見る(34枚)ホンダの名車、ホーネットとは?
1996年モデルのホーネット(写真:本田技研工業)ホンダのホーネット・シリーズは、1996年に登場した250ccモデル「ホーネット」が元祖だ。最高出力40PSを発揮する249cc・直列4気筒エンジンには、レーシングマシン直系の「カムギア・トレーン(カムシャフトを歯車で駆動する方式)」機構採用などにより、高回転まで一気に吹け上がる心地良い加速感を実現。街中からワインディングまで軽快に走れる動力性能や軽量な車体と、当時人気のオーソドックスなネイキッド・スタイルなどで大ヒットを記録する。
その後、ホンダは、1998年に600cc(正確には599cc)・直列4気筒エンジンを搭載した「ホーネット600」を発売。2001年には、大排気量バイク・ブームの影響もあり、900cc(正確には918cc)の「CB900ホーネット」を市場投入する。大きなトピックは、当時のホンダ製スーパースポーツ「CBR900RR」の1998年モデルに搭載された900cc・直列4気筒エンジンを採用したことだ。
1998年に登場したホーネット600(写真:本田技研工業)2001年に登場したCB900ホーネット(写真:本田技研工業)スーパースポーツとは、世界最高峰2輪レース「MotoGP」などで培った技術などを投入したフルカウルのスポーツバイクのことを指す。公道走行だけでなく、サーキットで競うレースなどにも対応した高性能モデルで、現在でも世界中で人気の高いジャンルのひとつ。CB900ホーネットは、そうしたハイパフォーマンスなエンジンを搭載しつつ、公道で扱いやすく、俊敏な走りも楽しめる大型ネイキッドモデルとして、幅広いユーザーから大きな支持を得た。
新型ホーネットの特徴:ストリートファイタースタイル
ストリートファイタースタイルを採用した新型CB1000ホーネット(筆者撮影)今回発表されたCB1000ホーネットも、2017年型CBR1000RRというスーパースポーツ用エンジンを搭載しているという点では、往年のCB900ホーネットと同じ方程式を踏襲している。ただし、外観については、どこか昔のバイクを彷彿とさせるCB900ホーネットとは異なり、最新のストリートファイターというスタイルを採用しているという相違点がある。
ストリートファイターとは、猛獣のようなアグレッシブなフォルムと、公道でも乗りやすい装備などを持つネイキッドバイクのジャンルだ。その起源はエクストリームバイクなど、アクションスタント競技用バイクが発祥だといわれている。
新型CB1000ホーネットのリアビュー(筆者撮影)前輪を浮かすウィーリーや後輪を浮かすジャックナイフ、後輪を滑らせて走るドリフトなど、まるで曲芸のような動きを披露するのがこうした競技。バイクには、フルカウルのスーパースポーツのカスタマイズ仕様を使うことも多かった。例えば、ハンドルは、低い位置にセットするベース車のセパレート式から、高い位置で小まわりなどもしやすいバーハンドル式に変更。また、カウルを取りはずしたモデルも多かった。そうしたバイクたちは、もともとの高い動力性能をライダーが制御しながら、派手なアクションを披露することで、とくに海外では大きな人気に。同様のスタイルを採用したカスタムバイクも、ストリートファイターという名称で大きなブームとなる。
そうした市場動向もあり、2輪車メーカーでも同様のスタイルを採用した市販車を数多くリリース。現在では、125ccなどの小排気量クラスから1000ccの大排気量クラスまで、さまざまなモデルが販売されている。
新型ホーネットの特徴:パフォーマンス
イタリア「EICMA2023」で公開されたCB1000ホーネットの欧州仕様車(写真:本田技研工業)スーパースポーツの高性能なパワートレインを、シャープなスタイルの軽量な車体に搭載したネイキッドバイクがストリートファイター。新型のCB1000ホーネットも、まさにその法則を採用している。ちなみに、このモデルの欧州仕様車は、2023年11月にイタリア・ミラノで開催された2輪車見本市「EICMA2023(通称:ミラノショー)」で世界初公開。日本では、今回が初披露となる(2024年3月15~17日開催の「第40回 大阪モーターサイクルショー2024」で先行公開)。
主な特徴は、まず小型デュアルLEDヘッドライトを採用したフロントフェイス。先端が突き出たようなシャープなデザインは、まるで猛禽(もうきん)類のクチバシのようだ。また、燃料タンクは、前方部分をワイドにすることでインパクト感も演出。後方のニーグリップ部に向けて細く絞り込んだ形状とすることで、旋回時の乗りやすさなども両立する。
エンジンに関しては、2017年型CBR1000RRと同様のものを搭載(写真:本田技研工業)エンジンには、先述のとおり、2017年型CBR1000RRに搭載されたものを採用する。最高出力110kW(149.6PS)以上、最大トルクは100N・m(10.19kgf-m)を超えるトルクを発揮するというから、かなりハイパワーだ。
ただし、ベースとなった2017年型CBR1000RRのエンジン・スペックは、最高出力141kW(192PS)/13000rpm、最大トルク114N・m(11.6kgf-m)/11000rpm。CB1000ホーネットでは、パワーやトルクをやや落としているようだ。おそらく、そのぶん、低回転域から出力がでる設定とするなどで、より公道で扱いやすくしているのだろう。とくに信号待ちなどからの発進では、より鋭いダッシュ力を発揮することが予想できる。
また、最新の電子制御システムも採用。アクセル開度を電子信号に変換する「TBW(スロットル・バイ・ワイヤシステム)」を搭載し、ライダーのスロットル操作に対しリニアな出力特性を実現する。さらに路面状況や好みなどに応じて選択可能な3タイプのライディングモード、加速時の後輪スリップ制御やスリップしやすい路面での安心感に寄与する「HSTC(ホンダ セレクタブル トルク コントロール)」なども装備する。ほかにも、「アシスト&スリッパークラッチ」の搭載により、シフトダウン時に発生しやすい急激なエンジンブレーキによる後輪ホッピング(後輪が浮き上がる挙動)も軽減。これらにより、高い走行安定性や安全性を実現する。
CB1000ホーネットのフロントフォークまわり(筆者撮影)車体には、新開発のツイン・スパー・フレームを採用。スチール製ながら、レーシーな雰囲気を醸し出す。また、足まわりでは、圧縮・伸側ともに調整可能なショーワ製41mm・SFF-BP(セパレート・ファンクション・フォーク・ビッグ・ピストン)倒立サスペンションを装備。これは、片側フォークに減衰機構とスプリング、もう片側のフォークにはスプリングのみを装備するタイプのサスペンションだ。機構をシンプルにすることで軽量化に貢献し、フォークの上下動における摺動(しゅうどう)抵抗の低減も実現。ショーワ製ユニットプロリンク・リアショックとのマッチングにより、軽快なハンドリングを実現するという。
ライバル車や価格などについて
カワサキ「Z H2 SE」(写真:カワサキモータースジャパン)スズキ「GSX-S1000」(写真:スズキ)ヤマハ「MT-10」のスタンダード仕様(写真:ヤマハ発動機)以上が現在わかっているCB1000ホーネットの概要で、国内の発売時期や価格などはまだ不明だ。ライバル車としては、例えば、国産車の場合、ヤマハ「MT-10/SP」、カワサキ「Z H2/SE」、スズキ「GSX-S1000」、あたりになるだろう。3モデルの価格(税込み)は、MT-10/SPが192万5000円~218万9000円、Z H2/SEが201万3000円~229万9000円といずれも、190万円を超える。一方、GSX-S1000は143万円とかなり安い設定だ。これらに対し、CB1000ホーネットの価格がどれくらいとなり、先行する3モデルを追撃するのかも注目だ。
東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちらCB1000ホーネットは、スーパースポーツがベースになっているが、あくまで公道にメインを置いたストリートファイターだ。そのため、前述のとおり、出力特性は公道で扱いやすい低中速域を重視した設定とし、足まわりも路面の凸凹を考慮した公道対応のセッティングになるだろう。そして、もし筆者の予想が的中していれば、きっとこのモデルは、リッターモデルに乗りたい大型バイク初心者から、公道でのスポーツライディングを楽しみたいベテランまで、幅広いライダーが楽しめるマシンに仕上がっているはずだ。
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