2013年1月24日にマイチェンを実施してSKYACTIVパワーユニットを搭載したマツダ プレマシー。ウィッシュ、フリードとのライバル三つ巴8番勝負をプレイバック! 果たして選ぶならどれ!?(本稿は「ベストカー」2013年5月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏、スーザン史子、永田恵一、渡辺陽一郎
■新型プレマシーここが進化のポイントだ!
もはや「国民車」ともいえる盤石のポジショニングを確立した乗用タイプミニバン。その最新ニュースとして、1月24日にマツダプレマシーがマイチェンを実施してSKYACTIVパワートレーンを搭載した。
というわけで定番のライバルウィッシュと、販売面で圧倒的なリードを誇るフリードハイブリッドとガチンコ三つ巴対決を敢行し、最新ミニバンの使い勝手や走りっぷりを再確認。
フリードは全幅1695mmの5ナンバーサイズでプレマシーやウィッシュと比べるとひとクラス下のカテゴリーとなるのだが、人気のハイブリッドの価格は214万9000円でプレマシー20S-SKYACTIVの220万5000円やウィッシュ1.8Sの213万円と同じ価格帯。
実際、フリードユーザーの多くはプレマシーやウィッシュクラスと比較検討しているというから、やっぱり無視できぬ存在なのだ。
さて、ここでプレマシーのマイチェンについてザザッとおさらいいたしましょう。
外観はまったく変更がないのでついつい見過ごしてしまいそうになるのだが、151ps/19.4kgmを発揮する2L SKYACTIVガソリンエンジン+6速AT(SKYACTIV・ドライブ)を搭載したのがポイント。
これによりJC08モード燃費は従来の13.6km/Lから16.2km/Lに大幅アップしている。実に20%の燃費向上。エコカー減税75%の対象にもなっているのは嬉しい。
内装は最小限の変更だが、ハーフレザーシートの採用やピアノブラックセンターパネルの採用など、質感の向上が図られているのも見逃せない。
●ここがプレマシー進化のポイント
・2L直噴SKYACTIV Gエンジンを搭載
・高効率6速SKYACTIVドライブAT新搭載
・JC08モード燃費=16.2km/L達成! エコカー減税75%対象
・荷室床下のアンダートランクの深さを50mmから200mmへと拡大して容量をアップ
・上級グレードにハーフレザーシート、ピアノブラックセンターパネル採用
・SKYACTIV技術搭載車、4WD車に電動スライドドア標準装備
■ハンドリングチェック! ミニバンだって大いに走りを楽しみたい
最近、クルマで一番大切なのは「やっぱし楽しさだよね」と思うようになってきた。けれど私のイメージする「楽しさ」って自動車メーカーがアピールしているのと少し違う。
自動車メーカーの言う「楽しさ」には「速さ」というファクターを多く含む。だからこそパイロンスラロームなど、スポーティに走るイメージを使う。
私の考える楽しさは速度まったく関係なし。街中を普通に流している時でも感じられなくちゃならぬ。つまり絶対的なハンドリングというより運転していて感じる「気持ちのよさ」であります。
普通に走っていて気持ちよいクルマに乗りたいのだった。
という観点からすれば、プレマシーだけ明らかに違う。なぜか? 凝った足回りを使っているからにほかならない。まずダンパーのメーカーは、ボルボなどと同じ欧州工場で作られた『テネコ』社の製品。こいつの動きが滅法よい!
普通に走っていてもしなやかなのだ。さらにダンパーの取り付け部分に欧州車のような「補強」をカマせてます。
結果、減衰力を高めても乗り心地はまったく悪くならないのだった。だからこそ開発チームの思いどおりのハンドリングを実現できたワケ。乗り比べたら誰でもわかります。
◎ハンドリングチェック採点:プレマシー 9.5点/ウィッシュ 8点/フリードHV 7点
(文:国沢光宏)
■乗り心地チェック! ミニバンだから2列目3列目の乗り心地をチェック
3台で最も乗り心地に優れるのはプレマシーだ。
プレマシーはフル乗車時に掛かる荷重の想定や、「全高の高さによるロールの発生を抑制」といった要件に対応しスプリングが硬くなりがちとなるぶん、乗り心地では不利なミニバンでありながら良質なダンパーの採用や入念なボディ補強などの効果により、3列すべてのシートでしなやかな乗り心地を実現。
乗り心地のよさは路面の悪い道路だとさらに実感できる。タイヤサイズは15インチが標準となっているが、足回りが非常によく動いているのでオプションの16インチ、17インチを選んでも乗り心地が損なわれることはないだろう。
プレマシーに続くのがフリードハイブリッド。フリードハイブリッドもプレマシーほどではないが、足回りがよく動いており、合格点を付けられる乗り心地に仕上がっている。ハイブリッド化による重量増に対応しボディが補強されていることも乗り心地の向上に一役買っている。
ウィッシュは3台のなかでは唯一乗り心地では不利な16インチタイヤを履いていることに加え、ダンパーの動きが渋いこともあり、2台に比べるとしなやかさに欠ける乗り心地となっている。
高速道路の路面の繋ぎ目や舗装が若干悪い程度の道であれば乗り心地の悪さを認識するケースは少ないが、大きな路面のギャップや道路の補修後のようなところに差し掛かると大きな突き上げを感じる。
この傾向はシートが後ろになるほど強い。購入前には乗り心地が納得できるか確認した方がいいだろう。
◎乗り心地チェック採点:プレマシー 8.5点/ウィッシュ 7.5点/フリードHV 8点
(文:永田恵一)
■高速は? 街中は? 実用燃費を徹底テスト
燃費計測はベストカーではお馴染みの、東京都文京区ベストカー→首都高経由で東名御殿場インター→国道138号経由で中央道河口湖インター→中央道、首都高経由でベストカー、という休日のドライブを想定した全長約260kmのコース(高速道路約210km、一般道約50km)で行なった。
燃費トップはフリードハイブリッド。ただし発表されているJC08モード燃費との差が一番大きいことも気になるが、これはモーターのアシストが小さいことや、ハイブリッド化による重量増が90kgと大きく高速道路での燃費が伸び悩んだことが要因だろう。
2番手のウィッシュはエンジンにポンピングロスのないバルブマチックを使う点以外特に目立つメカニズムは使っていないが、唯一のヒンジドアということもあって3台で一番軽い車重を生かし、全区間でフリードハイブリッドに肉薄する燃費を記録。
アイドリングストップすらなしでこの燃費を記録したことは高く評価できる。ただし燃費を重視した副作用なのか、アクセルレスポンスに代表されるドライバリティはいま一つだ。
プレマシーは3ナンバーボディに加えスライドドアであるため、車重が3台で一番重いこともあり3番手となった。
しかし、トルクフルな2Lエンジンを搭載することや、ウィッシュに比べ車重が120kgも重いなどの不利な要素を考えれば大健闘といえる燃費と評価できる。
(文:永田恵一)
■新型プレマシーのここが気になる 編集部員のチェックポイント
じっくりと乗ってみると、プレマシーの魅力を改めて発見することができたので報告したい。
まずはドライビングポジション。シートに腰を下ろして足を伸ばすと、自然な位置にペダルがあることに気づく。特にアクセルペダルは真っすぐ右足を伸ばした位置にあり、微妙なペダル操作がしやすいのだ。「当たり前だろ!」と思われるかもしれないが、意外とそうではないクルマが多いのだ。
スライドドアも使い勝手のいいポイント。狭いスペースでの乗り降りはスライドドアが圧倒的に有利。フリードもスライドドアでいいなぁと思った。ただ、素早い開閉には向いていないので乗り降りが頻繁だったらウィッシュのヒンジタイプのドアのほうがいいだろう。
■主婦で母親、スーザン史子がチェック! プレマシー ウイッシュ フリード 本当の使い勝手とは?
2歳の息子を持つカーサン史子は、次の5つの項目に注目。
まず「室内の広さ」。室内長や室内幅ではほぼ互角のプレマシーとウィッシュ、ウィッシュは室内高が75mm高いのがポイント高し。フリードはほかの2台に比べると少々タイトだが、ボックス型なので空間を補っている印象です。3台とも合格!
「乗り降りのしやすさ」では、ウィッシュがややリード。今回の3台のなかでは唯一のヒンジドアながら、ステップが少し斜めに下がっているぶん、出入りがしやすい。
「両側スライドドア」では、プレマシーとフリードに加点。開口幅はプレマシーのほうが86mm大きくて使いやすいかな。
「室内ウォークスルー」はプレマシーの圧勝! フリードとウィッシュは2列目が6:4分割で、ウォークスルーにはならず。子供を乗せると荷物も多いし、3列目までウォークスルーできるとポイント高いのよね~。
「2列目&3列目シートアレンジ」は、プレマシーとウィッシュがほぼ互角。
ただ、座面が軽く、より簡単にアレンジできるのはプレマシー。2列目中央のカラクリ7thシートは、小物入れにもなって便利。
ISOFIX対応のチャイルドシートなら脱着も簡単なので、2席から3席へのアレンジもしやすい。
フリードの難点は3列目シートの収納。両側に跳ね上げるタイプだし、シートも重いので、腰痛持ちのワタシには堪えるわ~。ちなみに跳ね上げた後も、フロアはフラットにはなりません。
子供とのお出かけはアクシデントの連続。この前は麦茶を大量にこぼされてトホホ。プレマシーならクリーナブルシートでこぼし汚れにも強いし、センターウォークスルーも可能。
シートアレンジしやすいことも考えるとプレマシーでキマリかな!
(文:スーザン史子)
■ワタシにもチェックさせてよ 「NEWプレマシー」の○と×
プレマシーはもともと走りのよいミニバンだったが、SKYACTIV Gの搭載でさらに洗練された。
最大トルクは19kgmから19.4kgmに向上し、発生回転数は400回転下がって4100回転になる。実用域の駆動力が高まった。吹き上がりもよく、動力性能に不満はない。
一方、JC08モード燃費は13.6km/Lから16,2km/Lに向上し、ミニバンでは燃費が優れた部類に入る。エコカー減税も75%に達した。
足まわりに大きな変更はないが、現行型は登場した時から走行安定性が良好。操舵感は過敏にならない範囲で小さな舵角から正確に反応し、運転を楽しめる。危険回避時を含めて後輪の接地性も優れ、安心感が高い。
とはいえマイナスポイントもあり、選ぶ時に注意したいのは3列目のシートが窮屈なこと。サイズが小さく、膝の持ち上がった姿勢になり、足元空間も狭めだ。
ミニバンでは背が低いから、3列目を畳んだ時の荷室も広くはない。自転車などの積載には適さない。斜め後方や真後ろの視界がよくないので、縦列駐車などを試乗で試したい。
それでも2列目をベンチ&セパレートの兼用とするなどアレンジは多彩で、スライドドアも備わる。
通常は4名で乗車し、稀に短距離を多人数で移動する使い方に適する。燃費がよく、価格も割安だから背の高いミニバンよりも合理的だ。そしてクルマ好きも納得できる運転感覚が、選ぶ価値を感じさせる。
(文:渡辺陽一郎)
■ズバリ総括! 本当に使えるミニバンとは? 国沢光宏の結論
結論から書けば同じ3列シートのミニバンとはいえ、3車でキャラが大きく違う。
重さと高さと長さを比べるようなことだからして、それぞれ得意分野を持つ。
例えばプレマシーでいえば、スライドドアと走りの質感だ。ステーションワゴンに限りなく近いシルエットを持つミニバンは、基本的に普通と同じタイプのドアとなっている。
ヒンジタイプのドアだってまったく問題ないけれど、チャイルドシートを使ったり、高齢の方を乗せるような時はスライドドアが便利だ。加えて走りの項でも書いたとおり、このカテゴリーで最も気持ちよく走る。
ウィッシュの持ち味は、総合バランスのよさ。身長183cmの私でさえ座れる3列目シートに代表される「使い勝手のよい室内スペース」を確保しながら、流れのよい道なら案外実用燃費よかったりする(アイドルストップが付いていないため信号待ちの多い交通状況だと伸び悩む)。
それでいて1.8Lなので、リーズナブルなプライスを付けられます。クルマ好きとしちゃ少し物足りないものの、だからこそミニバンカテゴリーの売れ筋になっているのだった。
フリードハイブリッドは「ちょうどよい」大きさが好ましい。なんたって5ナンバーサイズで、全長も3車種のなかじゃ圧倒的に短く取り回し良好。
肝心の燃費は、今回のように流れのよい道だと目立たない数値になってしまう。されど様々な条件でテストしたら、やはり優位な数字を出せることだろう。
もちろんプレマシーと同じくスライドドアのメリットも忘れちゃイケナイ。この価格帯のミニバンを考えているなら、ぜひとも「キャラが違う」3車種を乗り比べてみたらいい。やっぱりクルマ選びは「味見」してみましょう。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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