2代目ヴェゼルの登場から3年が経過し、ビッグマイナーチェンジモデルが発売。今回、ヴェゼルのマイナーチェンジモデルの試乗会が行われたので、どれほど進化したのか確かめに行ってきた。

文/ベストカーWeb編集部、写真/平野 学

■内外装の改良はパッと見分からないレベル

マイナーチェンジ前のヴェゼル。グリルとフロントバンパーに注目!

 そもそもマイナーチェンジモデルの試乗会を開催すること自体、大変珍しいことだが、それだけホンダがヴェゼルに対する本気度が伝わってくるというもの。

フロントグリルが四角くなりバンパーの形状も変更されている

 まず、エクステリアデザインの変更から。パッと見、マイナーチェンジ前のモデルとの違いに気づく人はいないかもしれないほど。フロントグリルは逆台形だったものが、横に長い長方形の形状になり、フロントバンパーのデザインも変更され、アダプティブドライビングビームが採用されたこともポイント。リアコンビランプはフルLED化され、水平基調の2本のラインとなり、全体的にクリーンなイメージとなった。

大型の上段トレイとスマホのワイヤレス充電ができる下段トレイ

 インテリアは今回の改良で、前席センターコンソールを左右対称デザインに変更。センターコンソール中央の上段トレイにはスマホ2基がきっちり収納できる大型トレイ、助手席からもアクセスしやすく置くだけで充電できるワイヤレスチャージャー(メーカーオプション)を備える下段トレイを用意している。

 しかし、個人的に高く評価したいのが後席だ。全グレードで大型リアヘッドレストとストラップ付きリアセンターアームレストが標準装備となったのだ。これにより、後席の快適性が大幅にアップし、後席に乗る家族のことを考えると嬉しいニュースだろう。

後席ヘッドレストが大型化。写真はPLaYパッケージ

■PlayパッケージとHuNTパッケージ

2トーンカラーのe:HEV Z PLaYパッケージ

 PlaYグレードといえば半導体の供給不足により、受注停止となってしまった2トーンカラーの超人気グレード。従来はグレードとして設定されていたe:HEV PLaYを、e:HEV ZのPLaYパッケージとして新たに設定し、AWDとパノラマルーフの選択が可能となった。

 e:HEV PLaYのパノラマサンルーフの調達が難しく長納期の要因にもなっていたそうだが今回からメーカーオプションとしたことで以前のような長納期が解消されたそうだ。

 フロントグリルに配置したトリコロールのアクセントの配色を変更したほか、ドアロアーガーニッシュはアクセントを効かせたブルーに変更することで、個性や遊び心を表現。

e:HEV Z PⅬaYパッケージのコクピット

 インテリアは、従来のe:HEV PLaYで好評のグレージュの色味を継承しながら、ピンストライプ/ステッチにライトブルーを効かせている。インテリアはグレージュの色味を変更し、ブラックとのコントラストを際立たせるとともにピンストライプ/ステッチにライトブルーを効かせた爽やかなコーディネートとしている。

新たに追加されたe:HEV HunTパッケージ

 そして今回のマイナーチェンジで最大のトピックスといえるのが、新たにHuNT(ハント)パッケージがラインナップに加わったこと。

 アウトドアだけでなく都市でも楽しめるよう、エクステリアでは、専用ルーフレールをはじめ、専用デザインのアルミホイール、カッパ―メタリックのフォグランプガーニッシュを装備。インテリアではプライムスムース×ファブリックにカーキ&ネイビーの専用カラーのコンビシートとし、ファブリックの素材には撥水・撥油機能のあるFABTECT(ファブテクト)を採用している。

HuNTパッケージのインパネ

■さて、マイナーチェンジしたヴェゼルの走りをチェック!

ヴェゼルe:HEV AWDの走りをチェック!

 まず試乗したのはe:HEV ZのAWD。試乗コースは雪道やオフロードコースではなく、箱根のワインディングを走った感想となるのであしからず。

 ヴェゼルAWDモデルのリア駆動力はもともと高かったが、今回のマイナーチェンジで雨や雪、アイスバーンなどの低ミュー時など滑りやすい路面でのトラクションコントロールのブレーキ介入タイミングを見直すことであらゆる路面でも安心感を追求したという。

 パワートレーンは基本的に1.5L、2モーターハイブリッドのe:HEVがメインとなるが、1.5LガソリンもAWDモデルにのみ設定を残している。

 天候晴れの箱根のワインディングを走らせた。コーナー手前でのブレーキングでの不安は一切なく、そのまま走っても思い通りにトレースしていってくれるので走りがほんとに楽しい。

 コーナー出口でアクセルを踏んで加速していく状況でもグリップの高さを感じさせてくれる。AWDモデルのダンパーやスプリングなどサスペンション回りに変更はないというが、マイナーチェンジ前のAWDと比べると、ハンドリングと乗り心地のバランスがよくなっている。雨天時のコーナリングや雪道など滑りやすい路面でもっと試したかったというのが本音だ。

ヴェゼルe:HEV PLaYパッケージ

 さて、試乗前の説明会に出て、期待感ワクワクで早く乗りたくなったヴェゼルe:HEV PLaYパッケージ(FF)。説明を聞いていると、マイナーチェンジで「ここまでやるか!」と唸ってしまうほどの改良内容だったからだ。その内容を見ていこう。

 バッテリーの使用範囲を約8%拡大し、エネルギーマネージメント制御変更によるEV走行領域の拡大、エンジンのオン/オフ頻度30%低減により、市街地でエンジン使用頻度を低減。

 エンジンからハイブリッドモードに切り替わる際のタイムラグを低減し、高速道路やワインディングの勾配変化によるエンジン回転数の変動を抑制。

 さらには電動パワーステアリングのソフトを変更し、車両挙動の分かりやすさと安定感を演出。またフロントダンパーの減衰力を緩め、縮み側の減衰力をやや強くし、その一方でリアダンパーの微小入力域の動きをよくしたことで、乗り心地と操縦安定性が向上。

 最後は静粛性の向上だ。フードインシュレーターの吸音材容量を約20%アップしたのをはじめ、ダッシュアウターインシュレーターの目付量を約40%アップ、ダッシュインシュレーターをハイブリッドインシュレーターに変更。

 さらにルーフライニングのインシュレーター厚2倍にアップ、インパネ統合インシュレーター厚約15%アップ、フロントフロアカーペットにフィルム層追加など、防音材の最適配置や追加で、エンジン始動音低減とロードノイズの静粛性が向上したという。

■あまりのよさに脱帽してしまった!

想像以上に好印象だったヴェゼルe:HEVの走り

 では実際に走ってみてどうか? 走り出しから違った。市街地で普通にアクセルを踏んで加速していく時のスムーズさにまずは驚く。さらに巡行時、ハイブリッドは、エンジンのオンオフにより切り替えが不快に感じることが多いのだが、それもうまく抑えられている。

 コンパクトSUVはホイールベースの短さやコストをかけないサスペンションにより、乗り心地があまりよくないのが普通だが、このヴェゼルe:HEVは、下からコツコツという突き上げもなく、乗り心地は上質。

 市街地からワインディングへ登っていく時に、明らかに違うと感じたのはハンドリングのよさと静粛性の高さ。アクセルを踏み込んでいってもリニアに反応するし、コーナ-手前からステアリングを切っていっても思い通りにトレースしていく。さらにSPORTモードに切り替えてアクセルを踏むと応答性が俊敏になるので、走りが実に楽しいのだ。

 静粛性については、高い速度域を走行しても、1クラス上の静かさ。これはレーンチェンジ時にアクセルを踏み込んだ際も同じ印象だった。とにかくハイブリッドモードの切り替えがスムーズで、ストレスを感じないので、それに輪をかけて静かだと感じるのかもしれない。

 コンパクトなサイズで軽快で運転しやすい、ストレスを感じないスムーズな加速フィール、上質な乗り心地とバランスよく両立させているリニアなハンドリング、1クラス上の静粛性を今回の試乗で感じとることができた。

ヴェゼルe:HEV X HunTパッケージ(FF)は299万8600円と300万円を切る価格に注目!

 ビッグマイナーチェンジしたヴェゼルは、よくぞここまでホンダが本気になってやってくれた、と唸るほどで、ライバル車はもうこのレベルには届かないかもしれないと思ったほどだった。

 ただ、e:HEV Zの価格が319万8800円というのは納得できるが(ちょっと高いけど)、e:HEV Z PLaYパッケージが355万6300円と諸費用含めると400万円近くになる点が大いに気になる。いっぽう、Xグレードベースのe:HEV X HunTパッケージが299万8600円と300万円切りということにも注目。おススメは一番人気となりそうなe:HEV Zもしくはe:HEV X HunTパッケージになるだろう。

 はじめ(登場時)からやってほしかったという意見も聞こえてきそうだが、これは発売から3年経ってわかる、熟成しないとわからない改良ではないだろうか。ぜひ、一度、ディーラーでヴェゼルの試乗車に乗って欲しい。その片鱗をみせてくれるはずだ。

最安価格は1.5Lガソリン車のGで264万8800円

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