ご縁あって自分の生まれた年よりも古い年式の旧車に乗る機会が訪れた。現代のクルマに慣れ切った筆者にとって、良くも悪くもギャップの大きさに戸惑うばかり。今回は試乗で感じたブッたまげポイントをストレートにお伝えする。

文:デグナー12(Team Gori)/写真:デグナー12、写真AC

■エンジン始動にいちいち必要な儀式って?

冷間時のエンジン始動で操作するチョークレバー。戻すタイミングはエンジンの温まりを伺いながら

 今回試乗したクルマは昭和48年式のダットサンサニー。アラフォー世代の筆者が生まれる前から存在するクルマである。エンジンは気温や気圧に合わせた燃料噴射量の調整が必要なキャブレター仕様。コンピューターで燃料の噴射量を制御している現代のクルマと違ってエンジンを始動させるだけでも特有の手順が伴う。

 まず戸惑ったのがエンジン始動前に行うチョークレバーの操作。気温が低い時にチョークレバーを引き、エンジンに入る空気の流入を絞ることで、始動性をよくするというもの。今でも一部のトラックやバンに残っている装備だが、中々お目にかかれるものではない。

 また、アクセルを踏みながらキーをひねる動作は、ボタンを押すだけでエンジンが始動する現代のクルマに慣れ切った筆者にとって儀式も同然。始動性をよくするための儀式だが、アクセルの踏む量が多すぎるとカブるというプレッシャーもあり、始動前からドキドキハラハラ。

■しっかり踏み込まないと止まらないブレーキに冷や汗

ヘッドライトやワイパーのスイッチはハンドルとは別の場所にあり、一つ一つの操作に戸惑うばかり

 エンジン始動に成功し、恐る恐る走りだして安心したのも束の間。ブレーキを踏んでも全く制動しない。それもそのはず、マスターバックと呼ばれるブレーキの倍力装置がないため、制動はドライバーの脚力次第。その分、自分の足とブレーキがダイレクトに繋がっている感覚で、ペダルタッチはレーシングカーのよう。赤信号など停止する場面では気を抜けない。

 ブレーキ以外にも筋力が必要とされるのがハンドル。もちろんパワステなんてついていない。走り出してしまえばそれほど気にならないが、駐車時のハンドル操作はかなり力が必要。とても片手で回せるような重さではなく、パワステの有難みを思い知ることに。

■停止時にも儀式があるってマジか!!

現代のクルマとはまるで異なるエンジンルーム。コンピューターが儀式をこなしてくれる現代のクルマに対し、この年代のクルマはドライバーがやるべき儀式が多い

 エンジン始動時に儀式が必要なことは前述の通りだが、エンジンを切る時にも儀式が必要。空吹かしをし、エンジンに残ったガソリンを燃焼させるというものだ。次回のエンジン始動時にプラグのカブリを防ぐ目的があるが、現代のクルマはエンジンを切った後に燃料をカットしてしまうため、不要な儀式となっている。

 何かと操作の違いに戸惑う点が多いが、それ以上に驚いた点はエンジンのレスポンス。アクセル操作に対してダイレクトにエンジン回転がついてくる感じは現代のクルマにはない。筆者もこれまで様々なクルマに乗ってきたが、踏み間違い防止の安全制御や燃費向上のために、新しいクルマほどアクセルに対するエンジンのピックアップは鈍いように思う。

 また、気候条件でクルマの調子が変わるあたりはクルマと対話しているよう。そういう意味では当たり前のようにエンジンがかかり、自動でギアが変わり、ブレーキやハンドル操作まで自動になりつつある現代のクルマは優秀すぎて無機質に思えてくる。気軽に乗れるクルマではないが、諸先輩方はこのようなクルマを乗り回していたと思い、とっても恐縮した次第。

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