2023年11月に発表されたレクサスのコンパクトクロスオーバーSUV「LBX」。「サイズのヒエラルキーを超えた次世代LEXUSモデル」とされるLBXだが、高級コンパクトカーというコンセプトは、これまでに成功した事例が少なく、レクサス車といえども、どれだけ受け入れられるのかは微妙なところ。はたして、レクサスLBXはレクサスの思惑通り売れているのだろうか。

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:LEXUS

サイズに起因するイメージと常識を覆したモデル

 1989年の創業以来、ユーザーに新しい価値や最新の技術を提供することで、カーライフを豊かにしたいという想いをかたちにしてきたレクサス。近年は車両の基本性能を磨き上げ、カーボンニュートラル社会の実現に向けて電動化を推進しており、世界のあらゆる市場のニーズに寄り添いつつ、ブランド価値の向上を目指してきている。

 そんなレクサスのラインアップに新たに加わったLBXは、冒頭でも触れたように、「サイズのヒエラルキーを超えたクルマ」として、これまでの高級車の概念を変える、コンパクトサイズながらも走りやデザインも上質、をコンセプトに開発されている。

 プラットフォームには、TNGAのGA-Bプラットフォームを、専用開発を施したうえで採用することで、高い運動性能を追求しているほか、音や振動の発生源を抑制する源流対策を徹底的に行い、高い静粛性を実現。パワートレインには新開発のハイブリッドシステムを採用し、スタイリングは、コンパクトさを感じさせないダイナミックなプロポーションで、インテリアは、内装色やシート素材、刺繍パターン等をユーザーが選び、約33万通りの組み合わせから1台をオーダーメイドすることが可能など、レクサスブランドならではのこだわりがこれでもかと詰め込まれている。これによって、コンパクトクラスとは思えないような走りと上質な内外装、質感、静粛性を実現しており、車両サイズに起因するクルマのスタビリティや振動、ハンドリングなどのイメージと常識を覆した、そんなモデルに仕上がっている。

コンパクトクラスの枠を超えた存在感を感じさせるダイナミックなデザイン。室内は決して広いとはいえないが、走りの質感は高い
LBXは全長4,190mm×全幅1,825mm×全高1,545mm。ヤリスクロスと比較すると、車幅は60mm広く、全高は45mm低い。前後のフェンダーは拡幅されており、ローアンドワイドな佇まいに仕上がっている
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レクサスが欧州での存在感アップを狙ったモデル

 LBXはイタリアのミラノで発表となった。このことから、欧州をメインターゲットとしていることがわかるが、なぜ欧州をメインターゲットとしたのか。

 欧州市場でもっとも売れているのはコンパクトカーだ。なかでも近年はクロスオーバーSUVタイプの勢いがある。筆者はLBXが発表となったイタリア・ミラノに住んでいるが、イタリアでは、レクサスはあまり「高級ブランド」というイメージがない。ディーラーもトヨタとレクサスが同じフロアに並んでいたりすることが多く、「レクサスってトヨタなんだよね?何で名前を分けてるの?」という感覚だ(と思う)。おそらくこのLBXには、欧州で競争率の高いコンパクトカテゴリーでレクサスの存在感を高め、現地でのブランドのイメージを変えたいという、いわば「一発かましてやろう」というレクサスの思惑が込められてるのではないだろうか。

LBXのインテリア。水平基調のトリムが落ち着きとゆとりを演出している

受注は好調、おかげで生産が間に合っていない

 2024年3月末のデータによると、受注を開始した2023年11月からのLBXの受注台数は国内と欧州合わせて約2万2000台。当初の販売計画は月販3,500台だったので、5か月で2万台超は、計画をはるかに上回るペースだ。

 受注好調であることから、いまは生産が間に合っていないようで、2024年6月末現在のLBXの納車待ちは、6~8か月程度とのこと。まだ、ミラノの街中でLBXを目にすることはほとんどないが、そのうち多く見かけるようになるのだろう。

 レクサスの公式ウェブサイトを見ると、通常38,000ユーロ(日本円で約646万円)〜という価格が、現在はプロモーションにより29,900ユーロ(日本円で約508万円)〜に値下げされている。「思ったほど売れないから値下げしたのか??」とも思えるが、タイミングからして、ここで市場拡大を狙った攻勢をかけるキャンペーンなのだろう。クルマの完成度は確かなのだから、ぜひ勢いをつけてもらいたいところだ。

LBXの走行イメージ。街中からワインディングロード、高速道路でもドライビングを楽しめる

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 若い人だけでなく、「もうあまり大きなクルマには乗りたくない」と考える熟年のドライバーなどにもリーチするモデルとなるLBX。ぜひとも、このLBXでレクサスの欧州でのブランドイメージを覆し、競争の激しいカテゴリーで存在感を高めてほしいと思う。

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