日本は世界有数の模型大国であり、ありとあらゆる種類の模型製品が発売されている。とりわけ乗り物が題材に選ばれる機会は極めて多く、街中を走る路線バスや高速バスもその一つだ。

文・写真:中山修一
(バスの模型の写真付き記事はバスマガジンWEBもしくはベストカーWEBをご覧ください)

■模型は何のためにある?

癒し系アイテムの一つでもある「模型」

 見たり触れたりして気に入った物を、手元に置いておきたいと考えるのは人の心というもの。ところが、大きすぎる、値段が高すぎる、法律で無理、二次元の中にしか存在しない等々、本物を手に入れるのが不可能な物だって珍しくない。

 しかし、せめて形だけでも自分のものにしたい……そんな時、模型(モデル)に出番が回ってくる。本物の身代わりになって付かず離れず、持ち主の心に開いた細やかな穴をそっと埋めるのが、嗜好品として世に出た模型が持つ役割の一つだ。

■伝統ある題材

 今や工業製品をはじめ、動物、アニメキャラ、架空のメカ類、食べ物に至るまで、模型にならない題材はもはや存在しないのでは? と勘ぐりたくなるほどだ。

 中でも乗り物は古くから模型化が旺盛。鉄道、飛行機、船、自動車など、各ジャンルまんべんなく揃い、実物が登場した年代ごとに様々な製品がリリースされ続けている。

 近年で大きく変わったのは製品の形態かもしれない。その昔、模型と言えば自分で組み立てて色を塗る、キット形式が大半を占めていたが、最近はメーカー側で組立や仕上げまで済ませた「塗装済完成品」のほうがむしろ主流になった。

■何気に新しいジャンル?

 自動車のジャンルで模型化される実車といえば、普通乗用車やスーパーカー、レース用車両などが長きにわたっての花形だ。

 一方で大型車の場合、映画人気にあやかった昭和のデコトラは別として、子供向けのオモチャではない、もっと精密な模型はあまりなく、路線バスのような商用車が注目されるようになったのは2000年代に入ってからだ。

■一番人気のサイズはコレ!!

 1:8、1:24、1:32、1:87などなど、模型は色々な縮尺(スケール)で作られる。2024年現在のところ、1:150スケールが日本で特に数の多いバス模型のサイズだ。

1:150スケールのバスの模型と500円玉の比較

 この1:150スケールは、いわゆるNゲージと呼ばれる鉄道模型の規格=1:150スケール/レール幅9mm、に合わせたのが所以だ。ちなみに国際規格のNゲージは1:160スケール/レール幅9mmとなっている。

 日本の鉄道車両は比較的小柄なため、1:160では車体が小さくなりすぎる都合により、やや大きめの1:150としたのが通説だ。世界的に見ても巨体を誇る新幹線の電車だけは対象外で、Nゲージも国際規格の1:160で作られている。

■精密バスモデルの草分けにして頂点

 1:150スケールのバス模型は複数の模型メーカーから発売されている(た)。ひときわ目立つのが、俗に「バスコレ」と呼ばれるブランドだ。

1:150スケールのバスコレはNゲージとの相性が大変良い

 バスコレが初めて世に出たのは2003年。それまで1:150規格のバス模型といえば、Nゲージの電車の脇に添えて全体的な見栄えをよくする程度の、肉料理を頼むと付いてくるクレソンのような役割でしかなかった。

 そのため製品ラインナップは極小で、なおかつ精密さも大して考慮されていないものばかり、という状況がずっと続いていた。それなりに精密なバスの組立キットもあるにはあったが、こちらは1:144でちょっと大きめだ。

 何かと乏しかった1:150のバス模型事情の中、突如現れたバスコレはカッチリとしたディテールに加え、どのバス事業者の車であるかまで細かに表現しており、当時初めて見た時は、純粋にバスを模型で楽しめるクオリティに大変驚かされたものだ。

■天下を取る勢いのラインナップ

 バスコレが発売されて既に20年以上が経った。その後バスコレは勢いを増すばかりで、今やラインナップの数がいくつまで伸びたのかと確認してみたところ、模型店で販売されるシリーズだけで300種類を超えていた。

バスコレは車種も新旧合わせて豊富

 一般販売品だけでなく、バス事業者が特注して自社で発売する、事業者限定商品という枠組みも存在し、それを合わせると更に膨れ上がること請け合いだ。ちなみにバスのイベント等でブース前に行列ができていると、事業者限定バスコレが絡んでいる確率が高い。

 ふと気になり、47都道府県を走るバスで、まだ模型化されていない地域があるかも軽くチェックしてみると、全ての都道府県の、どこかのバス事業者の車がバスコレに存在していると分かった。都道府県レベルでなら既にコンプリートしているのが凄い。

 集めたり、眺めたり、Nゲージと競演させたり、オプションパーツを用意すると走行できたりもする。選ぶのに迷うほど種類満載で、楽しみ方の幅も広い。特定の製品だけを見ても、今やバス模型も立派に独立した一ジャンルを築いたと言える。

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