最近5ナンバータイプのミドルクラスミニバンがどんどん減ってきている。ノアやヴォクシーにステップワゴンと指先で数える程しか残ってないし、個性と言える要素も少なく大分似たり寄ったりなクルマが多い。しかし、今から20年前は各社個性派ぞろいのミドルクラスミニバンが群雄割拠していたのだ。
文・写真:ベストカーWeb編集部
■カラクリ仕掛けの個性派シートだったプレマシー
最近はCX-60などが出るなどSUV市場に特化しているマツダだが、ほんの15年前まではミニバンのラインナップもそこそこ揃えていた。それぞれ個性あるミニバンであったが、その中でもちょい大きめミニバンのプレマシーは超絶個性派シートを導入していたのだ。
マツダ プレマシーは初代のみヒンジドアを採用していたが、2005年2月登場の2代目からは両側スライドドアを採用した。それと同時に、6人乗りにも7人乗りにも出来る「6+one」をコンセプトとした2列目シート「カラクリシート」が搭載されていたのだ。
カラクリシートの機能は多種多様で、助手席側の座面を持ち上げると中にはセンターシートとシートベルトが収納されており、引き出すことで3つめの座席が出現する。後は、助手席横の大型センターアームレストを背もたれにセットすれば7人乗りキャビンの完成だ。
さらに、シートが収納されていた部分は約6,3Lの物入れスペースとして活用出来るので、靴やちょっとした荷物の収納もラクラクだ。
また反対側の運転席側シートにも同様の仕掛けがあり、先程と同じく座面を持ち上げると今度は中にセンターコンソールとシートベルトを差し込むバックルが収納されており、引き出すことでちょっとした荷物置きやドリンクを収納可能となる。
そして、先程の大型センターアームレストを下げることで快適な6人乗りシートへと変貌するのだ。
■パノラミックルーフを標準装備した初代ラフェスタ
最近だとエルグランドの次期型が出るとウワサの日産は、今やミニバンがセレナとエルグランドの二種類となってしまったが、今からちょうど20年前に開放感バツグンのパノラミックルーフを標準装備した初代ラフェスタが誕生したのだ。
2004年12月登場の初代ラフェスタは、小さめのボディにゆとりある室内の「使い勝手のいいミニバン」にしたい開発陣のこだわりがあり、開放感がある室内を実現するために数少ない「パノラミックルーフ」を採用したのだ。
これは、他のミニバンが一列目と二列目で分かれている「ツインサンルーフ」を多く採用する中で異例のことだった。
パノラミックルーフは、ルーフが開けられない代わりに一列目と二列目を隔てないので、シェードを開ければ、昼は晴天の空、夜は満点の星空を眺めることが出来るのは、他のミニバンにない圧倒的な個性であろう。
この他にもラフェスタのこだわりとして、運転席の着座位置を高くするとともにボンネットフードを低くスラントさせていているため、前方視界がよく、クルマの前にいる子供の発見など、安全面でもライバルを一歩リードしていたのだ。
また、ライバルであったアイシスやウィッシュよりも車両価格が抑えられており、エアコンもオーディオも付いて178万5千円からのスタートであったのに加えて、標準装備であるパノラミックルーフをレス仕様することで、さらに約7万3千円程安くなったというから驚きだ。
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■トヨタとホンダが荒れに荒れたウィッシュとストリーム
最近では両社ともに電動化が進められて、トヨタはBZシリーズ、ホンダは0シリーズと続々と電気自動車のラインナップが揃ってきた。国内では長らく両社が4輪車市場において2強となっているが、その中でも有名なのがウィッシュとストリームによる「ミニバン戦争」だろう。
2000年代のちょい大きめミニバンの先駆者と言っても過言じゃないのがトヨタのウィッシュとホンダのストリームであるが、ウィッシュが2003年登場なのに対して、ストリームは2000年登場と時期はそこそこ離れていた。
両車とも7人乗りで、初代からスライドドアではなくヒンジドアを採用しており、ボディサイズも全長4550mm×全幅1695mm×全高1590mmと全く同じだったが、ホイールベースは初代ウィッシュのほうが30mmとわずかに長い。
ボディサイズは同じであるが、ウィッシュとストリームにもそれぞれ個性があり、例えばウィッシュには2列目の後部座席を倒すと広大なテーブルが出現するシートバックテーブルを採用。
ストリームもホンダ独自のVTECエンジンで、低重心ならではの走りが楽しめたりとそれぞれの個性を活かしていたのだ。
しかし、ミドルクラスミニバンが群雄割拠していた時代も長くは続かず、この後のノアヴォクやセレナがミドルクラスミニバンとして台頭してきたことで、だんだんとそのシェアが奪われ、最終的にその座を譲る形で全車種生産終了した。
どのクルマも素晴らしい出来だったので、今の似たり寄ったりなミドルクラスミニバン市場に一花咲かせる意味も込めて、いい意味で「尖った」ミニバンが現われることを期待しよう。
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