クルマに対する印象や感じ方は人によってさまざま。そこが「クルマ評価」の面白いところだ。では、複数の自動車評論家に一台のクルマを評価してもらったらどうなるだろう? というわけで、ここではトヨタ クラウンスポーツを三名の自動車評論家のみなさんに試乗&評価していただいた!!
※本稿は2024年5月のものです
文:国沢光宏、斎藤 聡、松田秀士、ベストカー編集部/写真:トヨタ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年6月26日号
■クラウンはもうオジサンだけのものじゃない!
2023年10月に発表されたトヨタクラウンスポーツ。新生クラウンシリーズの第2弾として送り出されたその姿は、奇しくも同年9月にフェラーリが送り出したプロサングエとそっくりだと話題にもなった。
そんなクラウンスポーツは、クラウンクロスオーバーよりも全長を210mm、ホイールベースを80mm短縮し、アスリートのような筋肉質な張り出したリアフェンダーが特徴的だ。これまでのクラウンのイメージを覆すかのごとく、21インチホイールも履きこなす。
本誌では2024年1月26日号でHEVを、2024年3月26日号でPHEVを鈴木直也氏の評価レポートで掲載。今回は国沢光宏氏、斎藤聡氏、松田秀士氏が評価していく。どのような印象を持たれたのか注目だ!!
●トヨタ クラウンスポーツ(Z)諸元表
・全長×全幅×全高:4720×1880×1565mm
・ホイールベース:2770mm
・車両重量:1810kg
・エンジン形式:2.5L 直4 DOHC+モーター
・最高出力:186ps/6000rpm
・最大トルク:22.5kgm/3600~5200rpm
・モーター:F=120ps/20.6kgm R=54ps/12.3kgm
・WLTCモード燃費:21.3km/L
・価格:590万円
■クラウンらしさは継承しつつ、走りと内外装の質感が大進化!(国沢光宏)
15代クラウンの大失敗を受けて開発に取りかかった“新クラウンシリーズ”の先鋒となるクロスオーバーは、少しばかり質感不足だったように思う。
乱暴に言えば「売れなかったらクラウンも店じまいですね!」と考え、コストをかけなかったんだろう。インテリア素材など樹脂のまんまでした。
しかし2番手となるスポーツの開発途中から「新クラウンシリーズ、いけるかも!」。そんな流れのなかで開発が進んだこともあり、クロスオーバーよりお金をかけたという。
結果、明らかに上質なクルマに仕上がった。デザインは新しいトヨタのトレンドをしっかり掴みつつ、インテリアだって大幅にクラウンらしくなっている。
走りも「曲がるクルマを作れば楽しいだけでなく安全」というフェイズに進化。実際、スポーツで雪道を走ると、往年のスバルや三菱が持っていた「いいね!」という味が出てきた。21インチという大きいタイヤを履きながら、乗り心地だってよい。
おすすめは優れたリセールバリューとクラウンスポーツにふさわしい圧倒的な速さとを持つPHEV。東京都なら補助金が100万円も出るため、事実上ハイブリッドと同じ予算で買える。ぜひ試乗してみることをすすめたい。
●国沢氏採点チェック
・ハンドリング:9点
・加速性能:9点
・静粛性:9点
・内外装の質感:9点
・乗り心地:9点
・コストパフォーマンス:9点
■生まれ変わった現代のクラウン! FRらしい乗り味も欲しかった(斎藤 聡)
クラウンスポーツとはどんなクルマなのか。大雑把にいうと、クラウンスポーツは高級クロスオーバーSUVに生まれ変わった現代のクラウンということなのだろう。
クラウンスポーツは走りの性能もいい出来だと思う。クラウンセダン、同クロスオーバーと比べると操舵感や操舵に対するクルマの動きがスッキリしている。この点がスポーツたる所以なのだろう。
操縦性について書き加えると、後輪操舵のDRSが(スポーツモードにすると)低速では小回り性を、高速では安定性を高める。
クラウンスポーツのHEVはAWDで後輪駆動トルクがそれほど大きくないので、明確に効果が体感できるのか? と思ったが、特に高速直進性や高速コーナリング時に安定感が増しているのが実感できた。
その一方で、じつはとても保守的なクルマづくりだなあ、という感想もなくはない。
スポーツをクロスオーバーSUVと考えるとRAV4やハリアーと同じプラットフォームをベースに上質なクラウンスポーツを作るというのは理解しやすくはあるのだが、FRプラットフォームを採用したセダンのFRらしい乗り味が個性的だったので、ことさらクラウンスポーツにもと考えてしまう。
●斎藤氏採点チェック
・ハンドリング:9点
・加速性能:7点
・静粛性:8点
・内外装の質感:8点
・乗り心地:6点
・コストパフォーマンス:7点
■安定感、乗り心地、スポーティさ、何を求めるかでグレードが変わる(松田秀士)
進化した2.5L・THSハイブリッドのE-Fourを搭載するクラウンスポーツには、HEVのZと、PHEVのRSの2グレードがある。ポルシェの新型? と目を疑ったほどグラマラスなリアフォルムは妖艶だ。
ドライブすると見切りのよさが印象的。ダッシュボードが真っ平なので1880mmの車幅をつかみやすい。ドアミラーもドアボディマウントなので斜め前方の視界がいい。
室内静粛性と乗り心地は想像していたほどでもなかったが、自律直進安定性と操舵初期の操舵応答性はシャープで、スポーツと名付けただけあるハンドリングだ。
PHEVのRSはZよりもプラス200kg車重が重いが、フロントモーターのパワーが大きいので加速性能はなかなかのもの。重いぶん、特に市街地走行での安定感と乗り心地がいい。
ただしスポーティさを求めるのならZだろう。両モデルともリアモーターのパワーは同じなので、前後パワーバランスのよさと200kg以上軽量なのはワインディング向きだ。
最後にPDA(プロアクティブドライビングアシスト)のDA(減速アシスト)は優秀だ。一般道での追突事故防止に意味のあるデバイスだ。
●松田氏採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:8点
・静粛性:6点
・内外装の質感:8点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:9点
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