クルマに対する印象や感じ方は人によってさまざま。そこが「クルマ評価」の面白いところだ。では、複数の自動車評論家に一台のクルマを評価してもらったらどうなるだろう? というわけで、ここではホンダ WR-Vを三名の自動車評論家のみなさんに試乗&評価していただいた!!
※本稿は2024年5月のものです
文:岡本幸一郎、竹岡 圭、橋本洋平、ベストカー編集部/写真:ホンダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年6月26日号
■発売開始1カ月で月販販売計画の4倍の注文!
新たなエントリーSUVとしてインドから上陸、2024年3月から発売が開始されたホンダ WR-V。
1.5Lガソリンエンジンのみ、2WDのみと割り切ったモデルとなっているが、全グレードが250万円以下というコスパの高さから発売開始1カ月で月販販売計画の4倍の注文数という好調な立ち上がりを見せている。
本誌では、渡辺陽一郎氏が2024年5月26日号の『お買い得SUV検証』企画内において初公道試乗を行っている。そこでは、運転支援装備は少々物足りないが、乗り心地と室内空間の広さは◎。エンジンのパワーと操安性も不満のないレベルに仕上げられていると評された。
今回は、岡本幸一郎氏、竹岡圭氏、橋本洋平氏が斬っていくが、その評価はどうなる!?
●ホンダ WR-V(Z)諸元表
・全長×全幅×全高:4325×1790×1650mm
・ホイールベース:2650mm
・車両重量:1230kg
・エンジン形式:1.5L直4DOHC
・最高出力:118ps/6600rpm
・最大トルク:14.5kgm/4300rpm
・WLTCモード燃費:16.2km/L
・価格:234万9600円
■贅沢を知ると物足りないが、割り切れば必要十分な実用性(岡本幸一郎)
このクルマの情報を知った時に、新興国向けに用意したクルマを、せっかくだから日本でも売るのかなぐらいの認識だったんだけど、思ったよりも日本も開発に関わっているらしい話を聞いた。
そのわりにはハイブリッドも4WDもなければ、先進運転支援機能が見劣りしたり、贅沢を知ってしまった日本人には物足りなく感じられるだろうけど、そのあたりを割り切ったからこそこの価格が実現したのなら、それでいいじゃないかと思う。
価格もサイズも手頃で見た目が無難で、車内や荷室が広くて、いかにも便利に使えそう。目新しさもなければ付加価値もないけど、着実なニーズはある。実車を見て、細かいことは抜きにして、これは売れそうだと直感した。
見ていて、かつて大ヒットした初代CR-Vを思い出した。似たようなサイズで、ハイカラ系に進んだヴェゼルとは、いろいろ違うからこそあえて作り分けた意味がある。
走りも結構よくできていて、多くを求めなければこれで充分。全体的に上手くバランスしていて意のままに操れる。リーズナブルで合理的で、若々しくて楽しそうな雰囲気を感じさせるあたりには、往年のホンダが思い起こされて、ちょっと懐かしい気もした。
●岡本氏採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:7点
・静粛性:7点
・内外装の質感:6点
・乗り心地:7点
・コストパフォーマンス:9点
■ガシガシ使える魅力があるからこそ、4WDの設定が欲しい!(竹岡 圭)
とにかく広いっ! が第一印象。ベースとなったフィット&ヴェゼル兄弟も、ライバルと比べると大きめ&広めですけれど、もうひと声デカイッ! 広いっ! んです。
例えばヴェゼルと比べても、デザイン的によりワイルドというか、カジュアルというかという感じですし、インテリアもよく言えばシンプル。悪く言えば素っ気ない印象。でも、これはこれで、エクステリアとのバランスが、イイ感じで取れているように思うんですよね。
パワートレーンも、ガソリンエンジンしかないというのが潔く、でもそれならばこそ、4WDが欲しかったというのが、個人的な本音です。
平たく言えば、多少汚れたりしても気にせずガシガシ使いたいクルマなんですよ。オフロードだってなんのそのと、グイグイ行っちゃいたいわけです。となると、あぁ4WDだったら……と思うシーンが絶対出てくるような気がするんですよねぇ。
でも、気になる点は逆にそこだけ。この価格でこのパッケージングは買いでしょう! 荷物をドンドン放り込んで、風の向くまま気の向くまま、ぶらり旅に出ちゃうなんていうのも、きっと似合うハズ。そしてなんとなく、そんなライフスタイルを夢見させてくれるのも大きな魅力です。
●竹岡氏採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:8点
・静粛性:7点
・内外装の質感:7点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:10点
■割り切ったけど、必要な性能はぎゅっと詰め込んだ優等生(橋本洋平)
上級グレードのZ+で250万円以下ってところが非常に魅力的なWR-V。インド生まれなせいか、かなり割り切った仕上がりだ。
駆動方式はFFのみで、ハイブリッドは当然のごとく存在しない。パーキングブレーキは昔懐かしのハンドブレーキだし、ACCは30km/h以下になると切れてしまう。今の時代の当たり前は存在しない。
けれどもクルマとしての完成度はなかなか高い。ヴェゼル譲りのプラットフォームのおかげもあり、後席はかなりゆったりで乗降性も抜群。頭上空間も余裕がある。ラゲッジだって底は深いし、ベルトラインが高いから荷物を積み重ねてもOKだ。
走れば最低地上高195mmのおかげか見晴らしはなかなか。スクエアなデザインにより見切りもいい。最小回転半径は5.2mでUターンも楽々。パワーユニットは過不足なく、アクセルを踏めばステップアップシフト&ステップダウンシフトが可能なG-Design Shift制御のCVTで気持ちいい。
ロードノイズはやや大きめだが、足はフラットでボディのねじれも使い、荒れた路面もうまくいなす。気軽に使えるスニーカー感覚がたまらなくちょうどいい。
●橋本氏採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:6点
・静粛性:6点
・内外装の質感:6点
・乗り心地:8点
・コストパフォーマンス:10点
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