トーヨータイヤのスタッドレスタイヤ「OBSERVE GIZ3」」(以下「GIZ3」)を、都下のアイススケートリンクで、従来の「OBSERVE GIZ2」(以下「GIZ2」)と比較しながら試乗することができた。

◆研ぎ澄ましたのは“アイス性能”、新コンパウンド採用で長く効くタイヤへ進化

トーヨータイヤ OBSERVE GIZ3(オブザーブ GIZ3)

前身のGIZ2だって、ガリットから改名した最初の世代に比べて、アイス性能やウェット性能がかなり向上したように記憶しているが、GIZ3はさらに高いアイス性能を目指して開発された。しかもその効き目がより長く続くように設計されているという。

GIZ3のアイス性能にかかわる進化の最大のポイントとして、柔軟性を高め経年劣化を抑制する「持続性高密着ゲル」および柔軟性を高める「サステナグリップポリマー」を配合した新たなコンパウンド「密着長持ちゴム」の採用により、低温でもゴムが柔らかさを保ち、路面との密着性が増すことが挙げられる。

アイス路面でのブレーキ性能はGIZ2比で実に22%もの向上を果たしたというから驚く。多くの場合、新旧比で1割も向上していれば御の字のところ、2割超というのは相当なものだ。

◆試乗して驚くハンドリング性能とグリップ力の進化

トーヨータイヤ OBSERVE GIZ3(オブザーブ GIZ3)

GIZ3とGIZ2を実際に乗り比べても、違いは明らかだった。比較車両として用意されていたのは、販売台数の多さと16インチというサイズを鑑みて、カローラスポーツのFF車だ。あえて4WDではなくFFにしたのは、FFでも安定して走れる新商品の性能をより体感できるからだという。

走り始める瞬間から印象が違って、GIZ3は滑りが小さく、気持ち素早く発進できる。ついで円旋回を試すと、GIZ3のほうが手応えがあり、これほど滑りやすい路面でありながら粘着感らしきものを感じる。旋回スピードの限界も、11km/hや12km/hという世界の話だが、わずかながら高いことがわかる。なお、旋回タイムは4%短縮と伝えられている。

トーヨータイヤ OBSERVE GIZ3(オブザーブ GIZ3)

これには既存の技術や前述の新しいコンパウントに加えて、斜めに交差して倒れ込みを抑制し、アイスブレーキやトラクション性能に寄与する「ヘリンボーンサイプ」や、ブロックを連結してアイスとドライを問わずブレーキやトラクション性能に寄与する「アッセンブルブロック」といった新しいパターン技術により接地圧が均一化され、路面の細かい凹凸に対して密着性が向上していることも効いているに違いない。

定常で円旋回した状態からアクセルをジワっと踏み増すと、どちらもアンダーステアが出るが、GIZ2は比較的すぐにふくらみはじめるのに対し、GIZ3はねばりながら徐々にふくらむという違いもあった。

トーヨータイヤ OBSERVE GIZ3(オブザーブ GIZ3)

円旋回しながらステアリングを切り増したときの反応も、GIZ2はついてこなかったり遅れてついてきたりするところ、GIZ3 はある程度は舵が利くあたりも違う。ステアリングを素早く操作すると、より印象の違いが大きくなる。

GIZ3はグリップ限界が上がっていて、その範囲内でできることが増えているので、クルマがの動き方がより素直になっているように感じられた。ドライバーに対するインフォメーションも明確で、滑っても先の動きが読めるので、全体的にGIZ3のほうが安心感は高い。

◆とっさの時の安心感もアップするブレーキング時の制動も大幅に良化

トーヨータイヤ OBSERVE GIZ3(オブザーブ GIZ3)

その先では短いストレートで20km/hからのフル制動を試したのだが、GIZ2はそもそも加速しようとしたときに滑ってしまい、20km/h出すのに少し苦労した。

ブレーキングしてABSが作動するときのピッチのきめ細かさも違って、GIZ3のほうが緻密に制御されるように感じられ、より短い距離で止まることができた。ABSが作動しながらもGIZ3は路面を捉えている感覚があるのに対し、GIZ2ももちろん減速するのだが、大げさにいうとツーッと前に滑ってしまうような感覚がある。感触としては、たしかに伝えられているとおりGIZ3のほうが2割ぐらい短く止まれる。

トーヨータイヤ OBSERVE GIZ3(オブザーブ GIZ3)

GIZ3とGIZ2を乗り比べると、お伝えしたような印象の違いと実際の性能の違いがあった。しかもGIZ3は、ゲル量を増量して経年変化による性能低下を4年後でGIZ2の半分以下に抑えたり、転がり抵抗を10%も低減したり、環境への配慮でポリマーの一部に自然由来のサステナブル素材を使用するなど、乗ってわかったこと以外にも多くの特筆すべき特長を持っている。まったくもって技術の進化には驚かされるばかり。わずか4年でここまで進化するとは恐れ入る思いだ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。