中国の自動車業界で、PHV(プラグインハイブリッド車)の新型車投入や技術開発を強化する動きが相次いでいる。中国市場でEV(電気自動車)の需要拡大がスローダウンする中、PHVは伸び続けていることが背景だ。
3月後半だけで、少なくとも4つのメーカーがPHV関連の発表を行った。国有自動車大手の長安汽車は3月18日、同社の第2世代のレンジエクステンダー型EVプラットフォーム(車台)を採用した新型車「深藍G318」をお披露目した。
(訳注:レンジエクステンダー型EVは、航続距離を延長するための発電専用エンジンを搭載したEVを指す。中国の販売統計上はPHVに分類される)
3月24日には、民営大手の吉利汽車の関係者が一部のメディアに情報をリーク。同社の次世代のPHVプラットフォームを採用した新型車の航続距離が、車載電池とガソリンタンクを満タンにした場合に最大2000キロメートルに達するとアピールした。
2023年の販売台数85%増
さらに3月30日、国有大手の東風汽車集団が新開発のPHVプラットフォームを採用した第1号モデル「風神L7」を発表。同じく30日、国有中堅メーカーの奇瑞汽車も新型PHV「風雲A8」を発表した。
中国の自動車市場では2023年のEVの販売台数が668万5000台に達したが、前年比の増加率は24.6%に低下した(訳注:2022年の前年比伸び率は81.6%)。一方、同年のPHVの販売台数は280万4000台とEVの4割強だったものの、前年比の増加率は84.7%と大幅な伸びを示した。
2024年に入り、EVの販売環境は(参入メーカーの多さや価格競争の激化などにより)ますます厳しくなっている。中国汽車工業協会のデータによれば、2024年2月のEV販売台数は春節(中国の旧正月)の連休が重なった(ために営業日が平常月より少なかった)影響で、前年同月比21.8%減の29万4000台にとどまった。
ところが、同月のPHVの販売台数は18万3000台を記録し、前年比22.4%の増加を記録。EVと比べた勢いの違いが鮮明になった。
PHVはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド機構をベースに、電池だけを動力に使う純電動走行や外部電源からの充電にも対応している。純粋なEVにつきものの電池切れの心配がないほか、エンジンを燃焼効率が最も高い回転域で運転できるため、トータルの燃費も優れている。
BYDはエントリークラスのPHVの価格をエンジン車並みに引き下げ、人気に火をつけた。写真は同社の低価格PHV「秦PLUS DM-i」(BYDのウェブサイトより)そうした長所を中国の消費者に知らしめた先駆者は、EVの最大手でもある比亜迪(BYD)だ。同社の2023年の販売台数は、EVが157万4800台だったのに対してPHVが143万8100台に肉薄。同年に中国市場で販売された全てのPHVの51.3%を占めた。
ここに来てPHV強化を打ち出すメーカーが相次ぐ中、BYDは守勢に回るどころか、競合他社をさらに突き放す構えだ。
最大手BYDは42万円値下げ
BYDは既存車種に年次改良を施した「2024年モデル」を2月から順次発売しており、それらの価格を2023年モデルより平均2万元(約42万円)以上も引き下げている。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら同社の祖業は電池であり、車載電池の部材から完成車まで自社で一貫生産できる「垂直統合モデル」を築き上げた。最大手の規模がもたらすスケールメリットも加わり、コスト競争力では他社の追随を許さない。
それだけではない。BYDの創業者で董事長(会長に相当)を務める王伝福氏は、2023年の通期決算の説明会で、同社の第5世代のPHVプラットフォームを5月に発表すると明らかにした。このプラットフォームを採用した新型車は、車載電池とガソリンタンクが満タンの状態から最大2000キロメートル走行できるという。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月1日
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