2019年から販売されているポルシェ911シリーズ(992)が2024年5月にマイナーチェンジ。フェイスリフトを受けると同時に、911史上初となる電動パワートレーンが設定された。「T-ハイブリッド」と呼ばれるマイルドハイブリッドシステムの詳細をレポートする。
※本稿は2024年6月のものです
文:木村好宏(Kimura office)/写真:ポルシェAG ほか
初出:『ベストカー』2024年7月10日号
■「タイプ992」が第2世代へ進化!
2019年から販売されているポルシェ 911シリーズ(992)がフェイスリフトを受けた。ただし外観での大きな変更はわずか。ウインカーがヘッドライトに内蔵され、フロントのアクティブエアインテークが縦型のスリットになった程度だ。
最大の変化は911GTSがついにハイブリッド化されたことである。「T(ターボ)-ハイブリッド」と呼ばれるシステムは、3.6Lに排気量アップされた水平対向6気筒エンジンに、ビターボに代わり一基の電動ターボを採用したもの。
このタービンには電気モーターが組み合わされており、過給能力と11kWの回生能力を持ち合わせている。
その結果、エンジンで485ps/58.1kgmとプラス5psのパワーアップを得ている。この新エンジンは補機類のベルトを廃止。さらに現行の3Lボクサーよりも高さが110mm低くなっている。
また8速PDKには最高出力54ps、最大トルク15.3kgmを発生する電気モーターが挟み込まれており、スタータージェネレーターとパワーアシストの機能を持っている。ただしEV走行はできない。
そしてこのシステムをサポートするアーキテクチャーとして、フロントアクスルの上に400Vの高電圧電池が搭載されている。このハイブリッドシステムによってシステム出力は541ps、最大トルクは62.2kgmへと向上している。
■0-100km/hが3.0秒とEV並みの実質加速
ポルシェがこのマイルドハイブリッドシステムを導入した大きな理由は重量とレイアウトの問題である。27kgの高電圧電池を含んでT-ハイブリッドを搭載したニューGTSの空車重量(DIN)は1595kgと現行GTSと比べてもおよそ50kgのエクストラウエイトですんでおり、2+2のキャビンも不変だ。
注目の性能は0-100km/hが3.0秒、最高速度は312km/hと発表されている。最高速度では大きな差はないが加速は現行モデルと比べると大幅に短縮されている。
ポルシェの発表によればスタートして2.5秒後の到達距離は現行GTSの14.5mに対して新しいGTSは21.5mと7mも先行している。すなわちシグナルスタートではEV並みの実質加速が楽しめるというわけである。
またその実力はニュルブルクリンク北コースにおけるタイムトライアルでも証明されており、GTSの最速ラップは7分16秒93で現行GTSモデルよりも8.7秒速い。これは明らかにコーナーからの脱出や上り坂でのピックアップ性能の向上によるものだろう。
ところで、もっとも重要な問題の排気ガス測定値や燃費に関しての数値だが、暫定的にCO2(WLTP)は251~239g/kmと、現行モデル(258~244g/km)よりも向上している。
新しい911はドイツではすでに注文が始まっており、価格はGTSクーペが17万600ユーロ(19%の付加価値税込み:約2900万円)から。デリバリーは2024年末から始まる。日本でも予約受注が開始され、911カレラGTSは2254万円からとなる。
■T-ハイブリッドシステムとは?
「T-ハイブリッド」はエンジンに電動ターボ、そしてギアボックスにスタータージェネレーター、さらに400Vの高電圧バッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッド。軽量かつコンパクトで911のレイアウトを壊さないがEV走行はできない。
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