2024年7月17日から認証試験の不正で生産を停止していた、ロッキー&ライズHVの生産を1年2カ月ぶりに生産を再開するとともに7月18日から出荷も再開した。奇しくもライバルメーカー、スズキが同日、「10年先を見据えた技術戦略」を発表した。今後ダイハツの舵取りはどうなるのか、現時点でわかっている3つの気になることを解説していきたい。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、ダイハツ、スズキ

■7月17、18日、認証試験不正で停止していた車種の生産・出荷が再開!

7月17日に生産が再開したロッキー(トヨタ版はライズ)

 ようやくロッキー&ライズHVの生産・出荷が開始されたことにより、型式指定を取り消された車種以外の全現行生産車種の生産・出荷が再開となった。

 今後のダイハツはどうなるのか? 2024年4月8日に行われた会見では、2024年3月からダイハツ工業の代表取締役社長に着任した井上雅宏氏(前トヨタ自動車南米本部長)が、確認体制の抜本的な改革により再発防止を誓うとともに、今後のダイハツの方向性を語った。

 不正問題発覚当初、「ダイハツの事業範囲見直し」が語られたことから、「国内に関してダイハツは軽自動車専門メーカーになるのか」という噂も流れたが、発表された再建方針をみると、今後もダイハツは、軽自動車だけでなく、小型登録車の開発も続けるという。ただし、小型車に関しては、開発から認証までトヨタが責任をもって確認し、ダイハツへ委託するというかたちをとることになっている。

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■新型ムーヴの発売は2025年春!

両側スライドドアを採用する新型ムーヴ。G、RS(ターボ)はエアロ仕様(2023年5月頃に配布されていた簡易パンフレットより)

 では具体的にダイハツ車が今後どうなるのか、気になる3つのポイントを見ていきたい。まず1つは新型ムーヴの発売について。2023年7月3日に登場を予定していた新型ムーヴ。しかし、衝突試験の不正問題からフルモデルチェンジが延期されている。

 いったい新型ムーヴの発売日はいつになるのか、ヤキモキしている人も多いだろう。現在入っている最新情報では、年内の発売は難しく、2025年春になるという。

 新型ムーヴを待つ理由のひとつに、後席ドアが従来のヒンジドアから両側スライドドアに切り替わった点が挙げられる。ちなみに両側スライドドアは、スーパーハイトワゴンには当たり前になっている装備で、ワゴンRやムーヴクラスのハイトワゴンには採用されてこなかった。

標準仕様のL、Xグレード。ムーヴシリーズ初のスライドドア採用となる(2023年5月頃に配布されていた簡易パンフレットより)

 新型ムーヴのラインナップは、これまで標準車とカスタムの2本立てだったが、標準モデルの1本立てとなるものの、標準仕様のLとXに加え、エアロ仕様としてGとターボのRSを用意される。

 グレード体系は、下からL(約129万円)、X(142万円)、G(約163万円)とRS(181万9500円)と全4つのグレードをラインアップ(4WDもあり)。

 全車、新型プラットフォーム、DNGAが採用となり、先進安全装備のスマートアシスト3が標準装備化。さらにメーカーオプションでブラインドスポットモニター(6万8772円)を選ぶことができることになった。

 WLTCモード燃費はNAモデルが22.6km/L、ターボは21.5km/Lとスライドドアで車重が増えているのに現行モデルよりも燃費がアップ!

 インテリアは4.2インチTFTモニターのほか、10インチのナビ(ドラレコセットで約40万円前後)を選ぶこともできる。室内空間は、段差のあった後部座席フロアの中央部分がフラットになったことにより快適性が増している。

新型ムーヴはグレードにもよるが電子パーキングブレーキなど、先進装備満載(2023年5月頃に配布されていた簡易パンフレットより)

■軽乗用ハイブリッド車開発中止!

2024年7月17日、スズキの「10年先を見据えた技術戦略」の会場に展示されていた、新型スイフトに搭載された熱効率40%という驚異的なZ12E型ガソリンエンジン

 スズキは2024年7月17日、「10年先を見据えた技術戦略」を発表した。具体的には、軽から小型車まで100㎏軽量化(アルトは600㎏を切れないかと鈴木俊宏社長が提案)、スイフトのZ12E型で実現した悲願の熱効率40%という高効率エンジンを全エンジンに横展開、現状、エンジン36kW+モーター出力2kWの12Vマイルドハイブリッドのモーターを10KWに変更した48Vスーパーエネチャージを採用していく、という。

 いっぽうでダイハツは、ロッキー&ライズにe-スマートハイブリッドを搭載した時の記者会見で軽自動車への展開が示唆されていた軽ハイブリッドの開発を中止したという。

 e-スマートハイブリッドのエンジンは、エンジンで発電し、その電力を使用してモーターで走行するシリーズ方式。ダイハツはその軽自動車版のe-スマートハイブリッドを開発中だった。

ロッキーのe-スマートハイブリッドはシリーズ式ハイブリッド

 ロッキー&ライズに採用されたe-スマートハイブリッドのWLTCモード燃費は28.0km/Lで、1.2LのNAエンジンは20.7km/Lだから大幅な燃費の向上が見込まれていただけに残念だ。

 ちなみに、軽商用EVについては、トヨタ、ダイハツ、スズキによる協業で2023年度に発売する予定だったが認証試験不正のため、2024年春に延期された。

 2022年6月22日、ダイハツが特許庁に「e-ATRAI」、「e-HIJET CARGO」、「e-SMART ELECTRIC」を商標登録しているので、今後発売されていくかもしれない。

■新型トール&ルーミーの発売は2027年以降に延期

ダイハツトールとOEM版のトヨタルーミー。ルーミーは販売ランキングの上位に食い込んでいる

 ダイハツは今後も小型車の開発は続けるものの、開発から認証までトヨタが責任をもって確認し、ダイハツへ委託するというかたちをとることになった。気になるのは隠れたヒット車、コンパクトハイトワゴンのトールと、トヨタへOEM供給しているルーミーの新型がいつ発売されるかだろう。

 現行モデルのパワートレーンは、ダイハツ製の排気量1L、直3エンジンで、WLTCモード燃費はターボ版が16.8km/L、NA版が18.4km/L。ちなみにヤリスは1.5L、直3NAエンジンで21.3km/L、ロッキー/ライズが1.2L、直3、NAエンジンで20.7km/L、現行のロッキーe-スマートハイブリッドは28.0㎞/Lだから、新型トール&ルーミーに積むことになればそれ以上の燃費になることが期待される。

搭載されるパワーユニットは1.2L、直3+モーターになる可能性が高い。低燃費に期待(ベストカー編集部作成の予想CG)

 新型トール&ルーミーのハイブリッドシステムは、トヨタのシリーズパラレル式ハイブリッドではなく、ロッキー&ライズで採用されたシリーズハイブリッド、e-スマートハイブリッド搭載モデルのみとなる。エンジン排気量はロッキー&ライズと同じ1.2Lもしくは1Lのどちらかになるだろう。

 新型トール&ルーミーの発売は、現行モデルの新法規対応(バックモニター義務化、側面衝突時の乗員保護、後面衝突時の乗員保護等)に対応するために時間がかかっているため、早ければ2027年秋頃になると予想。再起までの道のりは茨の道かもしれないが、ダイハツがんばれ!

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