今年も内閣府をはじめ各省庁から「熱中症対策の一層の強化について」各関連団体・各関連民間事業者に協力依頼が出される季節となりました。

 「熱中症にご注意を!」といっても、なんだか耳にタコ的なフレーズになってしまい、聞き流してしまいがちな今日この頃ですが、でも、やっぱり熱中症はコワい! 実は熱中症によるトラックドライバーの発症率は結構高いんです。いま一度「熱中症にご注意を!」

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、図/陸上貨物運送事業労働災害防止協会

運送業は熱中症の発症が3番目に多い業種

熱中症は現場での応急処置が非常に重要。速やかに体を冷却し、体を横にし、水分・塩分を摂取することが重症化防止につながる

 国土交通省が全日本トラック協会をはじめ関係各団体に要請した「夏季における運転者の体調管理の徹底」によると、

 1.始業点呼時に運転者の健康状態を確実に把握するとともに、運転者に対して、運行中に体調の異変を感じた時に、無理に運行を続けると非常に危険であることを理解させ、運行中に体調の異常を少しでも感じた場合、速やかに営業所に連絡する等の指導を徹底すること。

 2.脱帽をはじめとする一層のクールビズの取組を進めるとともに、こまめな水分・塩分補給を指導する等、運転者が乗務しやすい環境を確保すること。

 ……という2項目があげられている。

 職場における熱中症のうち運送業が占める割合は、休業4日以上の死傷者数で約14%で、これは建設業、製造業に次いで3番目で、死亡者数では約5%(同7番目)となっているそうだ。

 つまり、運送業では熱中症による死亡者数こそ多くはないものの、死傷者数は他の業種と比べて比較的多く、運送業は熱中症が多く発生している業種ということができる。

なぜトラックドライバーが熱中症になるのか?

熱中症の死傷者数は、建築業、製造業に次いで運送業は3番目。死亡者数としては少ないが、多く発生する業種である

 では、なぜトラックドライバーに熱中症が多いのだろうか? 長距離ドライバーの場合、同じ体勢で長い時間運転していると、知らず知らずのうちに水分不足に陥ることが考えられるが、そればかりではないだろう。

 長距離ドライバーは、トイレに行けないことが多々あるため、水分補給を控えるドライバーも多い。また、そもそも高速道路のSAやPAが混んでいて満足に休憩が取れないことがあるし、荷役に際しても待機場所や時間によってはアイドリングストップの励行を促されることもある。

 地場のトラックでは、手積み手降ろしの集配ドライバーや引越便のドライバーなどは大量に汗をかく。忙しさにかまけて水分補給を疎かにすると、熱中症に襲われることにもなりかねない。

 このほかにも「2024年問題」でクローズアップされた労働環境の問題も大きいだろう。トラックの運転は緊張を強いられる職業であり、慢性的な疲労が蓄積するし、リフレッシュする時間も不足している。日頃の運動不足による体力の低下も考えられる。

ドライバーと事業者の双方の対策の必要性

 熱中症を防止するためには、トラックドライバー自身が自衛することが大切だが、事業者側にも対策してほしいことがある。

 陸災防「陸運と安全衛生」7月によれば、最も重要なのは「有効な休憩場所の整備」だという。これは荷主など荷役先の事業者にもぜひ考えてもらいたい事柄だ。

炎天下で作業することが多いドライバーは要注意

 また、冷房の効いたトラックの運転席も休憩場所として有効だが、日差しを遮るサンシェード等があったほうがより効果的だという。

 さらに休憩時間の延長、休憩サイクルの増加、作業者に無理をさせないことが非常に重要で、そのほか組織として熱中症教育や体制づくりをすることにより、組織全体で熱中症対策を考えていくことが大切だとしている。

 熱中症は充分に対策していれば発症を防げる確率も上がる病気だ。梅雨も明けて、これから夏本番。ぜひとも熱中症にご注意を!

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。