バス運転士不足の問題解決のため、これまでにいくつかの制度改革が決定し、実施されている。これらが今後どう解決につながるのかを検討してみた。

文:古川智規(バスマガジン編集部) 写真:東出真
(写真はすべてイメージであり本文とは関係ありません)

■二種免許学科試験の多言語化

外国人にも言語の壁が取り払われる二種免許の学科試験

 まず、バスの運転に必要な大型二種免許をはじめとする二種免許の学科試験の受験言語が多言語された。これは実施済みの地域もあれば、これから実施される都道府県もある。第一種免許は外国人居住者増加のためにすでに以前から多言語化されていたが、旅客を乗せる第二種免許は実施されていなかった。

 外国人が運転するタクシーやバスは大丈夫なのかという問題以前に、日本人の日本での職業を奪うことになりかねない二種免許の取得を困難にすることで、日本人の職業を守るという側面が強かったはずだ。

 しかし、当の日本人がなりたくない職業になってしまったことから、運転士が不足し日常生活に支障をきたし始めたことから、背に腹は代えられないとばかりに外国人にも門戸を開かなくてはならなくなった。

 外国人による運転士のなり手が増えるかどうかは、今後の推移を見守る必要があるものの、主な乗客を構成する日本人が不安を覚えないかどうかに注目が集まりそうだ。誠に勝手な理屈だが、こうなっているのは事実だ。

■大型免許のAT限定免許

車両はすでにATかMTかの選択はできない状態になっている

 トラックやバスでもAT車が主流になり、日本で製造する路線バスタイプではすでにMT車は製造していない。それを追随する形で、大型免許(一種・二種にかかわらず)にAT限定免許が導入される予定だ。

 現役の運転士からは運転技術の継承や、乗り心地の問題等で異論はあるものの、すでに製造していないMT車は減少の一途だ。MT車が事業者からなくなる過渡期において、免許により運転できる出来ないの車種が発生する可能性はあるものの、現状を追認し将来を先取りした形だ。

■事業者には朗報?

時間や費用が圧縮されるメリットがあるAT限定

 AT限定免許が登場すると、MT車の教習時間が無くなる。これにより現状は運転免許取得費用を事業者が負担しているので、時間的にも費用的にも事業者負担が節約できることは間違いない。

 一人や二人の育成ならば大したことはないが、何十人、何百人の運転士を今後継続して育成することを考えると、チリも積もれば何とやらで、大きな費用圧縮につながる。

■支払方法を限定したバスの運行

多機能運賃箱が設置されているハイウェイバスもある

 運賃の支払い方法はバスに限らず交通機関では現金決済が基本になっている。もっとも事前にネットで予約をして事前決済をし、デジタル乗車券を発行する高速バスでは事実上、現金決済はほとんどない。

 もちろんコンビニやターミナルでの現金支払い手段も残されてはいるが、いずれにせよ事前予約によるものなのでゆっくり支払い方法を選択できる。

 一方で路線バスに話を移すと、定期券や1日乗車券等の企画乗車券は事前に購入するものの、現状では現金での支払いやICカード乗車券、または一部ではクレジットカードによるタッチ決済で支払いを行うのが一般的だ。

 規制緩和で支払い方法を限定するバスが規制緩和で可能になった。本来は乗車拒否に当たる事例だが、この緩和により一部ではすでに実施が表明されていて、現金やICカーでは支払えず、最終的にタッチ決済のみにする目的だと思われる。

 事業者は保有するバスの台数分の運賃箱について、特にICカードによる決済について定期的にシステム更新を行わなければならず、昨今登場した新紙幣のような数十年に一度の出来事でも運賃箱の更新が必要だ。その費用は莫大なものになり、事業者の経営を圧迫しているといわれる。

 クレジットカード専用にしてしまえば、カードのタッチ決済機器だけを設置すればよく、現金の計算も必要ないので事業者としては労力や経費の削減につながるメリットがある。運転士の労力削減にもつながる可能性はある。

■乗れない乗客とは?

クレジットカードだけだと決済に困る乗客も出てくる?

 こうした場合に困るのが乗れない乗客が出てくることだ。クレジットカードを持っていない、または持てない人はバスに乗れなくなるのだ。持っていない人は背に腹は代えられないので作ればよいのだが、問題は持てない人だろう。

 バスでの運賃決済が銀行のデビットカードに対応するのであれば、そちらで対応可能だが、いずれにしても新たな銀行口座の開設やデビットカードの発行をしなければならず、乗客側に手間と負担がかかる。

 これらの施策が5年以上前に行われていれば、それほど混乱はしなかったのだろうが、コロナ騒ぎでコロナを理由に便数や路線を削減してしまったので、事の本質を隠してしまう結果となったのは反省する必要があるだろう。

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