1996年に初代ステップワゴンによって人気に火がつけられて以降、ファミリーカーとして人気が定着したミドルクラスミニバン。トヨタの「ノア/ヴォクシー」とホンダ「ステップワゴン」、日産「セレナ」と、各社の主力モデルがしのぎを削っているが、2024年6月現在の登録台数では、セレナが一歩優勢、ノアが2番手と、現在は、セレナとノアが登録台数を競い合っている状況。この2台でどちらにするべきか、悩んでいる人も少なくないだろう。

 もちろんどちらもいいクルマには違いなく、どちらを選んでも後悔することは少ないだろうが、よりお買い得なのはどちらなのか!?? 比較をしてみよう。

文:吉川賢一/写真:TOYOTA、NISSAN

ハイウェイスターが人気のセレナ ただ50万円のメーカーOPが必須装備なのは意地悪

 まずは、セレナとノアの売れ筋グレードを確認しよう。セレナの人気グレードはハイウェイスターVだ。車両価格はガソリン2WDで税込326万円~。e-POWER(2WDのみ)は税込368万円だ。ハイウェイスターVは最上級グレードLUXION(e-POWERのみ)に次ぐ高額グレードとなるため、基本的な装備はひと通り装備されている。

 しかしながら、アラウンドビューモニターや高機能プロパイロット(ナビリンク付)、プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)、12.3インチカラーディスプレイ(標準は7インチサイズ)などがセットパッケージ化されており、ユーザーが取捨選択することができず、しかもオプション価格は税込48万8400円と高額。このセットオプションを選んだ時点で、車両価格はガソリン車で375万円、e-POWERは417万円でまで跳ね上がる。ちなみにプロパイロットパーキング付きとなると、オプション価格は税込55万1000円にもなる。

 通常機能のプロパイロットは標準装備されているので、カーナビをディーラーオプションのナビゲーション(9インチサイズで税込20万円程度)にしたり、ディスプレイオーディオ(9インチサイズで税込9万8千円)にとどめてスマホをリンクしてナビゲーションとする、または社外製ナビを導入するなどをすれば、比較的リーズナブルに済ませることもできるが、「アラウンドビューモニターだけは欲しい」ということはできない。これだけの内容が含まれたメーカーオプションが50万円を切っているのは、「日産の良心」ともいえるが、ユーザーが必要に応じて選択ができないのは、ちょっと意地悪だな、とも思う。

新しいデジタルVモーションを採用し、先進的イメージが強くなった新型セレナ
2枚の液晶ディスプレイが目立つインテリア。ノアよりもセレナのほうが未来的に感じる
3列シート7人乗りのシート配置はこれまでと変わらない
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ノアは最上級S-Zグレードが最人気 リセールも期待できる

 一方、ノアで人気なのは、5段階あるうちの最上位グレードにあたる「S-Z」だ。車両価格はガソリン2WDが税込332万円、ハイブリッド(2WD)は税込367万円だ。ノアは、ベースグレードのXも売れており、最上級グレードと最廉価グレードに人気が2極化しているようだ。

 S-Zは最上級グレードというだけあり基本的な装備が充実している。S-Z 2WD はグレード専用の17インチタイヤホイールを装着しており(セレナは最大16インチ)、レーダークルーズコントロールやレーンキープアシストなどのトヨタセーフティセンスはもちろん標準装備だ。コネクトナビ対応の7インチディスプレイオーディオも標準装備されており、スマホと連携すればナビとして利用することができる。

 重要なメーカーオプションは、10.5インチHDディスプレイのナビシステム(S-Zの場合は税込19万円)のほか、緊急時操舵支援やレーンチェンジアシスト、ブラインドスポットモニター+安心降車アシストなどだ。アドバンスドパークとパノラミックビューモニターはセットパッケージ化されており(ハイブリッドで約12万円、ガソリン車で約9万円)、ガソリン2WDのS-Zにこのセットパッケージをつけても税込み約340万円と、比較的リーズナブルに住む。セレナと違い、メーカーオプションを自由に選択できるのはノアの魅力。ちなみに高いリセールが期待できるのもS-Zグレードだ。

先代ノアのグリルを継承し、横3本の太いラインを採用した新型ノアのS-Z
アップダウン操作をするシフトレバータイプを採用したインテリア
7人乗りのシート配置はこれまで通り

燃費を求めるならノアハイブリッド一択、ただ電動フィーリングが好ましいのはセレナ

 パワートレインは、セレナは、2.0L直4ガソリンエンジン(最高出力110kW、最大トルク200Nm)と、1.4L直列3気筒ガソリンエンジン発電のe-POWER(最高出力120kW/最大トルク315Nm)の2種類。燃費はガソリンが13.4km/L、e-POWERが20.6km/Lだ。一方のノアも、2.0L直4ガソリンエンジン(最高出力125kW、最大トルク202Nm)と、1.8Lガソリン+THS IIハイブリッド(72+70(モーター分)kW、142+185(モーター分)Nm)の2種類。WLTCモード燃費は、ガソリンが15.1km/L、ハイブリッドが23.4km/Lだ。

 燃費に関しては、ガソリン車の比較だと、交通環境や運転方法で逆転も大いにありうるほど、わずかな差だが、ハイブリッドの比較では、ノアの圧勝。やはりトヨタのハイブリッドは他社よりも一枚も二枚も上手。燃費を重視する人はノアが答えとなるだろう。

 ただし、ドライブフィーリングの面では、新型セレナe-POWERのほうが走行フィーリングは好ましい。高速走行中は、絶えずエンジンが発電を続けるが、そのエンジン音はかなり抑えられていて快適だ。ノアハイブリッドは、モーター走行をするタイミングもあるのだが、加速したときには「ガーガー」というエンジンがうなる、ややチープな音が聞こえてくることがあり、電動走行時の静けさとのギャップが悪影響している。走りの質感を求めるのであれば、セレナe-POWERのほうが適しているだろう。

よりお得なのは…「ノア」のほうか!??

 このように、どちらも優れるクルマであるだけに、どちらがお買い得かを考えるのは非常に難しいところ。ただ、お得感を求める、という視点でみれば、必要なオプションだけを選ぶことができ、さらには燃費もいいノアのほうが優れているかもしれない。

 ノアの現行モデルが登場したのは、2022年1月、セレナの現行モデルが登場したのは、同じく2022年の11月、どちらもデビュー直後はコロナ禍の影響で生産調整が行われ、販売面での本領発揮が難しかった。2024年に入り、ようやく落ち着いてきたことから、どちらがよりユーザーに選ばれるミドルクラスミニバンに仕上がっているのかは、今年2024年の結果でみえてくることだろう。はたして、ユーザーに選ばれるのは、よりお得なノアなのか、それとも先進性が光るセレナなのか!?? 今後の動向が非常に楽しみだ。

過去10年の国産ミドルクラスミニバン販売台数。ステップワゴンが一歩後退し、主にヴォクシーとノア、セレナの3台がしのぎを削っている。ノアは新型モデルとなって以降、ヴォクシーと人気が逆転している

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