オールシーズンタイヤを超えたオールシーズンタイヤ。ダンロップタイヤの住友ゴムが7月22日に発表した「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」は、夏タイヤとしての卓越した性能を実現しながら、冬場の積雪路のみならず凍結路面をも安心して走ることができるサマー&ウインターの「二刀流」。従来のオールシーズンタイヤの冬性能を大きく超えながら、相反する性能が求められるドライ路面での操安性や乗り心地、静粛性を高いレベルで両立した、その秘密とは!?
文:梅木智晴(ベストカー編集委員)/写真:住友ゴム工業、ベストカー編集部
常識を覆す発想の転換。これは進化ではなく発明なのだ!!
「シンクロウェザー」を従来のタイヤカテゴリーに当てはめて説明するなら「オールシーズンタイヤ」ということになる。それはつまり、サマー専用タイヤでもなければウインター専用タイヤでもないからだ。しかし、このタイヤを単にオールシーズンタイヤの最新モデルとカテゴライズしてしまったのでは、本質をお伝えすることはできない。
なるほど、発表会で明らかにされたCM映像を見て納得した。メジャーリーガー、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手がシンクロウェザーのCMキャラクターとして登場したのだ。二刀流を実現し、世界に名を馳せる大谷選手は住友ゴムが次世代のタイヤ技術として満を持して投入するシンクロウェザーの無限の可能性とシンクロする。
だからこそ、山本悟住友ゴム工業社長が発表会で語った「これは進化ではなく発明なのです」という発言にもつながるのだ。シンクロウェザーは路面状況や季節によってタイヤを交換するのではなく、タイヤが気温や路面状況に応じて性能を変化させる。まさに発想の転換。常識への挑戦でもあったのだ。
温度や水分に反応してゴムの硬度が変化するアクティブトレッドがキーテクノロジー
シンクロウェザーの開発を実現したキーテクノロジーとなったのが「アクティブトレッド」と名付けられたゴム技術。ゴムの配合に2つのスイッチとなる化学的反応を組み込むことで、路面状態の変化や気温の変化に応じたゴムの硬度変化を引き起こす。
気温の高い日のドライ路面ではガッチリとした剛性感のあるトレッドゴムだが、雨が降ったウエット路面では水分に反応してゴムがソフトに変化する「水スイッチ」の作用でトレッドゴムが柔軟性を帯び、接地面積を稼いでウエットグリップを高めるのだ。
また「温度スイッチ」が作用すると、雪上はもちろんのこと、凍結路面でもトレッドゴムが柔軟性を高め、しなやかに氷上路面を捉え、高いグリップ力を発揮するのだ。従来のオールシーズンタイヤでは氷上路面は推奨せずというのが一般的だったが、シンクロウェザーは氷上路面も対応可能。その証として「スノーフレークマーク」よりもさらに厳しい基準で審査される「アイスグリップシンボル」が付与されている。
本格的スタッドレスタイヤの「WINTER MAXX 02」との氷上制動試験では2ポイント劣るものの、ほぼ同等の性能を証明。いっぽう、ウエット制動試験ではダンロップのサマータイヤ「ENASAVE EC204」に対し6ポイント上回る高性能を見せつけた。
性能に見合ったプレミアムな価格だが、サマー&スタッドレスの2セット所有よりもコスパ、タイパに優れる
シンクロウェザーはオープン価格ではなく、希望小売価格が設定されている。発売開始は10月1日なので、実勢価格は現時点ではわからないが、同サイズの一般的なサマータイヤに対し1.5~2倍程度の価格となる。
たしかにタイヤ単体の価格を見ればけっしてお安くはないのだが、サマータイヤとスタッドレスタイヤを2セット所有することを考えればシンクロウェザーは1セットで済むため必ずしも経済的負担が大きいということはない。年に2回のタイヤ交換にかかる手間と費用、外したタイヤの保管場などのコストやタイパを考えれば、むしろお得とも考えられる。
それでも、きちんとシンクロウェザーのメリットとデメリットを理解したうえで装着して欲しいという考えから、当面は一定の研修を受けた販売員がいる認定店のみでの販売でしっかりとシンクロウェザーの認知度を広めていきたいという。
シンクロウェザーの発売開始は10月1日。まずは15インチから19インチの40サイズのラインナップだが、サイズは順次拡大の予定だという。
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