クルマの走りのキャラクターの話題となると、必ずと言っていいほど上がるキーワードが「ホイールベース」だ。ホイールベースが違うと何が異なるのか? いまさら聞けないクルマのホイールベースについて見てみよう!

文:西川昇吾/写真:メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン ほか

■ホイールベースが変わると基本的にどうキャラクターが変わるのか?

ホイールベースの話題になると車名が挙がるのがランチア ストラトス。2180mmの超ショートホイールベースだ

 ホイールベースとは、前のタイヤの中心から後ろのタイヤの中心までの距離のことだ。この距離が長ければ「ロングホイールベース」と言われるし、短ければ「ショートホイールベース」と言われる。基本的に日本ではホイールベースは「mm」で表すことが多い。

 クルマが唯一路面と設置しているパーツがタイヤだ。ホイールベースはそのタイヤの前後間を表している訳だから、ホイールベースが変わればクルマのキャラクターは大きく変わる。

 基本的にホイールベースが短いと俊敏性に優れていて素早く曲がることがメリットと言われるが、その分安定性に欠けるのがデメリットと言われる。

 反対にホイールベースが長いと安定性に優れることがメリットだが、デメリットとして素早く曲がるのが苦手と言われるほか、最小回転半径が大きくなり小回りが苦手になりやすい。

 それ以外にも細かなメリットデメリットはあるが、走りのキャラクターだけで言えば、ホイールベースの長い短いによって、曲がるのが得意か? 安定して真っ直ぐ走るのが得意か? のどちらかに基本的にはキャラクターが分かれることになる。

■最近はロングホイールベースがトレンド

車内空間を広くとるためにロングホイールベース化したフォルクスワーゲン ID Buzz LWB。「LWB」はそのままズバリ「ロングホイールベース」の略だ

 近年はホイールベースを長くするのがトレンドとなっている。特に軽自動車を始めとしたコンパクトカーでその流れは顕著だ。その理由は小さなボディサイズで直進安定性を確保したいという狙いもあるが、室内空間を広くしたいという狙いが大きい。

 走行には必ず必要なタイヤだが、室内空間の確保を考えると邪魔な存在となる。では室内空間を広く取るためにはどうすればいいのか? そうするとタイヤは自然と車体の出来るだけ前後に追いやられる。そうなるとホイールベースが長くなるのだ。

 コンパクトカーではボディサイズが小さいため直進安定性の確保も難しいし、室内空間を広く取りたい。だから走りを考えても、利便性などの市場ニーズを考えてもロングホイールベース化はメリットが多いのだ。

 勿論、小回りが効かないというデメリットもあるが、コンパクトカークラスならば同クラスのライバルに比べて小回りが苦手というのはあまり痛手にならないことが多いだろう。

 ミドルサイズ以上のモデルとなると同クラスのライバルでもホイールベースはまちまちなことが多く、それそれのメーカーの考え方が出ていると言える。

■ホイールベースが短いとコーナーが速いって訳じゃない

メルセデスAMG・F1 W15。長いホイールベースでも素早くコーナーをクリアする。旋回性能の良し悪しはホイールベースの長短だけで決まるわけではないのだ

 ちなみにホイールベースが長いと直進安定性が高くて曲がるのが苦手と序盤で述べたが、世界一のモータースポーツであるF1で走るマシンのホイールベースは長い。

 2022年のレギュレーション改定で3600mm以内に定められ、それよりも前のレギュレーションから短い規定になったのだ。ホイールベースは乗用車だと3000mmを超えると長いと言われる。F1のホイールベースはそれ以上なのだ。にもかかわらずF1マシンはコーナーをとてつもない速度で駆け抜けていく。

 コレにはタイヤのグリップやダウンフォースなど様々な要素が影響しているが、ホイールベースに関して言えば安定性が高いということが影響している。サーキット走行という高速域になるとホイールベースが短いとコーナリング時に安定性に欠け、スピンしやすくなりコントロールが難しいということだ。

 反対に低速域でのコーナリングが多いジムカーナなどではホイールベースが短いマシンの方が、クイックに曲がり得意なこともある。

 一概にホイールベースだけで多くが決まる訳ではないが、クルマのキャラクターを見てみたいのであれば、同クラスのライバルとホイールベースを見比べてみると面白いかもしれない。

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