アップタイプのマフラーやブロックパターンのタイヤなどを装備し、オフロード走行にも対応するネオクラシックなバイクが「スクランブラー」。昔から、カスタムバイクとしても人気でしたが、最近は、国内外のメーカーでも、同様のスタイルを採用した市販車を数多くリリースしています。
例えば、ホンダの「CL250」や「CL500」、ヤマハの「XSR125」など。また、海外モデルでも、トライアンフが「スクランブラー400X」という新型を2024年に発売し、普通二輪免許で乗れる輸入車として注目されています。
ここでは、そんなスクランブラーモデルについて、その名前の由来などから主な特徴などを紹介。また、いわゆるオフロードバイクとの違いなどについても検証します。

文/平塚直樹 Webikeプラス

 

 

     

スクランブラーバイクのルーツとは?

 スクランブラーとは、英語で「scrambler」。直訳すると「スクランブルをする人」みたいな意味になりますね。

 スクランブルというと、領空侵犯に対する「緊急発進」といった意味がありますから、どことなく戦闘機などに使われる軍事用語のような感じもします。でも、バイクでいうとことのスクランブルは、「はい上る」とか「よじ登る」といった意味。つまり、スクランブラーバイクは、「オフロードなどの坂道をグングンと駆けのぼる」バイクということになります。

 スクランブラーバイクの元祖は、1950年代や1960年代に作られたモデルで、オンロードバイクをベースに、オフロード走行に対応させたモデルだといわれています。

 例えば、1962年に登場したホンダの「ドリームCL72スクランブラー」。現行のCL250やCL500の元祖となる250ccモデルです。

 

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 ホンダが当時販売していたオンロードモデル「CB72」のスクランブラー版といえるのがこのモデルです。当時は、日本はもちろん、欧州や北米などでもまだまだ未舗装路が多かった時代。

 ところが、本格的なオフロード車はまだ存在していなかったため、オンロードバイクを使い、マフラーをアップタイプにしたり、サスペンションのストローク量を増やすなどで、悪路走行向けにモディファイしていたことが特徴です。

 国産初のスクランブラーとして発売されたこのモデルは、日本や北米などで大ヒットを記録。その後、シリーズ化され、50ccや125cc、250ccや450ccなど、さまざまな排気量のモデルが人気を博しました。

 その往年の名車が持つ車名や雰囲気などを引き継いだといえるのが、現行のCL250とCL500。アップタイプのマフラーや上体が起きる自由度が高いポジション、フロント19インチ・リア17インチのホイールやセミブロックパターンタイヤなど、まさにスクランブラー的なスタイルや装備を誇っていることが特徴です。

 

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映画でも活躍したスクランブラーバイク

 ほかにも、1959年に登場したトライアンフの650ccツイン(2気筒)モデル「TR-6トロフィー」も、往年のスクランブラーバイクとして有名です。オンロードモデルの「T110」と同系のエンジンを搭載し、当時、北米のオフロードレースなどで大活躍したモデルですが、1963年に公開されたハリウッド映画「大脱走」に使われたことでも知られています。

 

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 映画ファンならご存じの通り、第2次世界大戦を描いたアクション大作が大脱走。主人公のスティーブ・マックィーンをはじめ、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンなど、当時の人気アクションスターが数多く出演し、まさにオールスターキャストで映画化した戦争ドラマです。

 その劇中で登場するのが、軍用仕様のTR-6トロフィー。名優スティーブ・マックイーン扮するアメリカ兵が、ドイツ軍の捕虜収容所から脱走するために、このバイクを駆って疾走。有刺鉄線付きの大きなフェンスを超える迫力のジャンプを披露し、大きな話題となりました。

オフロードバイクの源流がスクランブラー

 話はやや脱線しましたが、このように、メーカーが、オンロードバイクをベースに、オフロード走行にも対応する装備を施したのがスクランブラーバイクだといえます。昔からのバイクファンには、カスタムバイクのスタイルとして知る人も多いでしょうが、その成り立ちは、市販車が先だといえます。

 ちなみに、その後、前輪を後輪より大径化したり、専用の前後サスペンションなどを装備した、いわゆるオフロードバイクが登場。スクランブラーが、オンロードバイク的なフォルムなども残していたのに対し、それをより進化させ、さらに悪路走破性に特化したスタイルや装備を持たせたのがオフロードバイクだといえます。

 その意味で、スクランブラーは、現在のオフロードバイクの源流となるバイクだといえるでしょう。

 

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普通二輪免許で乗れるスクランブラーに注目

 スクランブラーバイクは、前述の通り、近年、国内外のメーカーがさまざまな市販モデルをリリースしています。

 例えば、大排気量モデルでは、803cc〜1079ccの豊富なランアップを揃えるドゥカティの「スクランブラー」シリーズ。

 

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 また、BMWモトラッドでは、1169ccのボクサーツイン(水平対向2気筒)の「R nine Tスクランブラー」を用意します。

 

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 さらに、トライアンフでも、1200cc・並列2気筒の「スクランブラー1200/1200XE」、900cc・並列2気筒の「スクランブラー900」などをラインアップしています。

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 加えて、近年は、スクランブラーのスタイルを持つバイクでは、普通二輪免許でも運転できるスクランブラーバイクが充実していることも特徴。近年、増加するバイク初心者などに対応するモデルが続々と登場していることも注目です。

 例えば、国産車では、前述したホンダのCL250。また、ヤマハの原付二種モデル「XSR125」も、ブロックパターンのタイヤやアップライトなハンドル、丸目一灯ヘッドライトなどを装備。これらにより、スクランブラー的なスタイルを持つ1台だといえるでしょう。

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 ほかにも、ホンダの125ccモデル「CT125・ハンターカブ」や、「クロスカブ50/110」といったモデルも、アップタイプマフラーなどを装備し、街乗りからアウトドアまで幅広いシーンに対応。こうした装備により、やはりスクランブラーバイクの仲間だといっても過言ではないでしょう。

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 さらに、輸入車では、2024年にトライアンフから「スクランブラー400X」が登場。398.15cc・水冷単気筒エンジンを搭載するこのモデルも、大排気量モデルの多い輸入車ながら、普通二輪免許で運転できるスクランブラーとして注目されています。

 

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街乗りからキャンプまで楽しめるバイク

 これら各モデルの共通点は、レトロな雰囲気と、ワイルドなテイストを合わせ持つこと。また、都会にもマッチするスタイリッシュなバイクとして、幅広い層に認知されていることも同様です。

 

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 しかも、フラットダートなど、ある程度のオフロード走行にも対応。街乗りだけでなく、最近人気のバイクキャンプなど、アウトドアでも楽しめることも魅力といえます。特に、普通二輪免許に対応するモデルは、バイクのエントリーライダーなどが、通勤・通学などの普段使いからツーリングまで、多様なシーンで気軽に乗れる相棒として最適です。

 ともあれ、肩肘を張らずに、オン・オフ両方の道を走れ、さまざまなスキルや年齢のライダーに対応するのがスクランブラーバイク。その奥深さなどにより、今後も根強い人気を誇ることが予想されます。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/389440/

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