運転席から前を走るクルマを見たときに「カッコエエなぁ」と思うのはよくあること。そんなリアデザインの魅力を、おなじみのデザイン論客、自動車評論家の清水草一氏に語ってもらったぞ!(本稿は「ベストカー」2013年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)

TEXT/清水草一

■発端はトヨタ オーリス


トヨタ オーリス…今回の企画のきっかけともなったオーリスは「常識に尻を向けろ」のCMで、個性的なリアスタイルを印象づけた。清水氏も高評価のオシリである

 後ろ姿の美しいクルマはスバラシイ。運転中は、フロントフェイスよりテールの方がはるかにじっくり眺められる。よって、抜かれた時の後ろ姿こそが「顔」とすら言える。つってもまあ、やっぱ顔はフロントフェイスなわけですが、抜かれた時の姿が美しいと、前に回って顔を確認したくなるのは、クルマも人も同じだすね。

 では、後を引くリアビューを持つデザインはどんなデザインかというとですね、まあそれは「いいデザイン」としか言いようがないわけですが、それでも「いいな」と思うパターンのようなものは、いくつか挙げることができる。

■噴射口型リアデザイン

 リアがまるでロケットやジェット機の噴射口のように感じるデザイン。ロケットやジェット機は速さの象徴であるため、クルマも速そう=カッコよく感じる。ウェッジシェイプや、コーダ・トロンカ(ティアドロップを途中でバサッと切り落とした形)はその代表。

 たとえばフェラーリ・テスタロッサ。スパッと切り落とした巨大なリアは、テール一面に横桟グリル状の覆いがついていることで、より噴射口感を高めている。

フェラーリ テスタロッサ…“噴射口型”スタイルのテスタロッサは、切り落とされたようなリアに横桟が入り、まるでジェット噴射口を思わせるリアビューとなっている。フェラーリデザインの色気に加えて、このメカメカしさがたまらない!

 初代フェアレディZやロータスエリーゼは、コーダ・トロンカ型噴射口の一例。その他、ほとんどのスーパースポーツカーがこのパターンに当てはまる。R32以降の歴代GT-Rもこれだ。

日産 GT-R…R32以降、丸4灯のテールを採用するGT-Rシリーズも“噴射口型”のリアビュー。宇宙戦艦ヤマトの波動エンジンのようなテールランプは、強烈な加速を暗示している!?

 リアウイングや巨大な排気マフラーなど、付加物で噴射感やスピード感をより増幅させるパターンもある。かつてのゾク車は、まさに付加物だけで速さ感を出しており、それをカッコいいと感じる感性も確実に存在する。

■潜水艦型リアデザイン

 テールを切り落として噴射口型とせず、そのまま伸ばしたような形。滑らかでスムーズで美しい。ポルシェ911やジャガーEタイプがその代表。

ポルシェ911…リアに向かってなめらかに落ちていくテールが、なんともなまめかしい911は“潜水艦型”デザインのリアだ
ジャガー Eタイプ…優雅なフォルムがリアに向かってなめらかに収束していく“潜水艦型”のEタイプはセクシー!

■大地に踏ん張る型リアデザイン

ホンダ N-ONE…安定感あるリアビューは、“大地に踏ん張る型”のN-ONE! そのリアフォルムもスポーティ

 クルマの場合、横幅が広くて全高が低かったり、断面が台形だと、安定感が高く速そうに見え、カッコよく感じる。タントよりN-ONEの方がカッコよく見えるのはこのため。

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 ここまでは速そう=カッコいいというパターンだが、スピード感とはあまり関係なしに、カッコいいテールもある。

■美しい箱型リアデザイン

 お尻の四角さのバランスや、面、造形が美しいクルマ。A8からA4あたりまでの多くのアウディが当てはまる。ハイエース(ハイルーフを除く)やエブリイワゴンのテールも、美しいと感じたりする。

アウディ A4…“美しい箱型”テールがアウディのしるし。共通のイメージを持つリアビューは羨望の的となる!

■コロンとしたお尻型リアデザイン

 そのものズバリ、キレイなお尻を連想させる、張りのある美しいリア曲面を持つクルマ。フィアット500やスバルR2、初代アウディTT、そして現行スズキ・スイフトなどなど。

スバル R2…台数的には苦戦したR2だが“コロンとしたお尻型”のリアビューには男心をくすぐる丸みがある
初代アウディTT…現行型ではワイド&ローでスリムなクーペルックに近づいてしまったが、初期型のアウディTTには、“コロンとしたお尻型”ゆえのなんともいえない愛らしさがあった!
フィアット500…そのかわいらしさはフロントマスクにあると思われがちだが、いい尻持っているのである

■尻下がり型リアデザイン

 ウェッジシェイプとは逆に、お尻の方が下がっていると、速さではなく余裕を感じさせる。歴代ロールスロイスや、以前のジャガー、レパードJフェリーなど。

日産 レパードJフェリー…お尻の下がったクルマは日本では売れないという言葉通りの失敗であったが、それでも好き者にはアピールするのだ

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 後ろ姿がカッコいいクルマは、どれもこれらの項目に単数~複数該当すると思います。

 現行モデルで言うと、国産車ではまずスイフト。これが日本一っす! コロンとした張りのあるお尻は、まさに魅惑のオシリーナ。思わず見とれてしまうデザイン。

スズキ スイフト…清水氏が日本車のリアビューでもっとも高く評価するのが、スイフトだ!コロンとした張りがあるなめらかなラインで“魅惑のオシリーナ”の称号を得た!

 オーリスは、リアの面がプリンと色っぽく張りつつ、噴射感もある。オーリスの場合、リアだけが美しいという珍しいパターンだ。

 プリウスは曲線を途中で切り落とした噴射口型で、ラインがなかなか美しい。スカイラインクーペは、切り落とした断面にさらに美しい噴射感があり、かつキュッと上向きのお尻感が同時に実現している。アコード/アコードツアラーは美しい四角。踏ん張り感もある。

トヨタ プリウス…“噴射口型”とエキサイティングな分類であるが、いい尻もこれだけ多いと食傷気味なのも事実だ……
日産 スカイラインクーペ…美しいフォルムだが、顔は好き嫌いが分かれる。とはいえ美しい噴射感のあるリアである
ホンダ アコードツアラー…アコードツアラーのリアビューは美しい箱形だ。遠くからも目立ち、カッコよい。しかし、近くで見るとその巨大さに驚いてしまう

 輸入車にはバックシャンが数多く、アウディはSUVを除いてほぼすべてがそうだ。アルファ・ジュリエッタはオーリスそっくり(逆か)。テールランプの渦巻きLEDも、誘惑に一役買っている。

 ちなみにテールランプの形状や材質も重要だ。形状はシンプル&インプレッシブが基本。LEDは、今のところ高級そうに見えるため、それだけでプラス査定だ。テールランプ全体の中のどこをどう光らせるかによっても、ステキ感を高めることができる。現行モデルのベストは、やっぱり渦巻きのジュリエッタ!

アルファロメオ ジュリエッタ…オーリスと似たテイスト(オーリスが似たのか?)のジュリエッタは、印象的なリアビューが美しいのだ!

 また、ウィンカーもLEDだとさらにプラス査定は高い。ウィンカーは点滅するものなので、LEDのキレのいい点滅が高級感をさらに高めるのだ。

 では、現行モデル最強のバックシャンはどれだ!?

 それはランボルギーニ・アヴェンタドールだ。おきて破りのワイド&ロー、とてつもない噴射感。これをやられたら手も足も出ません! 我が458イタリアも降参です。

ランボルギーニ アヴェンタドール…清水氏が世界最強のお尻と評するアヴェンタドール。造形に加えライトのデザインなど迫力満点のスーパースポーツだ!

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 画像ギャラリーでは、清水氏の選から漏れた日本車のリアビューをチェック! コンパクト、SUV、セダン、ワゴンとそれぞれ異なるジャンルとはいえ、どれも個性にあふれた“艶姿”だぞ!

(内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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