クラウンが登場してから、なんと約70年が経過しようとしている。この長~い歴史を紐解いていくと、実はクラウンは4世代ごとに大きな変化が起きていることが分かった。こうした変革はクラウンに何をもたらし、何を失わせたのか。現行型クラウンまでの歩みを、4代目・8代目・12代目・そして現行の16代目と振り返っていこう!!

文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部

■クラウン至上最も高級!? クジラクラウンの失敗が以降の成功へのカギとなる!

当時はセドリック/グロリアに及ばなかったものの、今なお根強いファンが残る通称「クジラクラウン」

 初代の登場から16年後の1971年、4代目となるMS60系が誕生する。通称「くじら」と呼ばれる、曲線基調のボディを持つクラウンだ。

 スピンドルシェイプと呼ばれるエクステリアデザインは、社会の美しさや豊かさを象徴したものだった。車名もトヨペットクラウンからクラウンへ変更している。

 現在でもファンの多いクジラクラウンだが、ライバルであったセドリック/グロリアに販売台数で逆転されたことから、失敗作と呼ばれることも多い。

 ただ、革新的なスタイリングへの挑戦は、クラウンがクラウンであり続けるために必要なことだったのだろう。

 またクジラクラウンは、史上最もセンチュリーに近づいたモデルでもある。漢字表記のボディカラーが使われ、新型の2.6Lエンジンも搭載し、個性ある高級車を目指したモデルだ。

 しかし、クラウンに圧倒的な個性は必要ないというのが、ユーザーの意見だったのだろう。

 丸くて大きなクラウンはクジラクラウンで打ち止めとなり、次世代から元のシャープな扱いやすいクルマへと回帰していった。

■「いつかはクラウン」を超えるため… そしてクラウンは原点に戻る

先代モデルを超えろ! 8代目に与えられたプレッシャー

 「いつかはクラウン」のキャッチコピーを残し、クラウン至上最高傑作という呼び声も高かった7代目を引き継ぐ形で登場したのが、1987年発売の8代目MS130型だ。

 エレクトロマルチビジョン、電子制御エアサスペンションなど、ハイテク・エレクトロニクスの要素がふんだんに入り新たな時代を予感させる。

 また、日本初のトラクションコントロールを搭載し、セルシオに先駆けて4.0LのV型8気筒エンジンを積み込んだのも当代クラウンの特徴だった。

 現在まで、時代に合わせてモデルチェンジを行ってきたクラウンの「変化の姿勢」を象徴する8代目。以降、日本の経済成長も終わりを迎え、8代目は躍動の時代に生まれた最後のクラウンとなった。

 そして長引く平成不況の最中、21世紀のクラウンとして登場したのが12代目のGSR180型である。「ZERO CROWN」の誕生だ。

 世界に通用するクルマという命題を自らに課し、原点からのクルマづくりに挑んだクラウン。

 熟考を重ねた結果、クラウンの原点は豪華絢爛な高級ではなく、質の高いドライビングプレジャーにあると結論付けられた。

 しっぽりと落ち着いた雰囲気の高級車とは違い、常に躍動し続けるのがクラウンである。当モデル以降、クラウンは、21世紀を力強い走りで駆け抜けていく。

■革新と躍動から誕生! 4つのクラウン

近未来感漂う、新型クラウン

 現行型の16代目は、DISCOVER YOUR CROWNをテーマに、クラウンが4タイプのボディをもっている。現在は、クロスオーバー、スポーツ、セダンが登場し、エステートの発売を待っている状態。

 それぞれ個性的なモデルに仕上がっているが、共通するのはクラウンが変化の末に手に入れた、最高の世界観だ。

 クジラクラウンのもたらした「革新」や、8代目・12代目で築き上げた「躍動」、これがクラウンの真髄であり、クラウンの在り方であろう。

 国産車では類を見ない、70年という長い歴史があるからこそ、革新や躍動の奥に深みが出て、これがクラウンの味わいになっている。

 4代ごとの大変革で、常にこれまでを超えるためにチャレンジを続けてきたクラウン。だからこそ、時には人気を失い、目標を失い、迷走をしたこともあっただろう。

 だが、そのミステイクが、今日の個性輝く4つのクラウンを生み出した。

 そして今、クラウンは4つのモデルで最高のユーザー満足を得ていることだろう。変化を嫌わず、進化を続けたクラウンだからこそ、現行型が象徴する最高の提案にたどり着けたのだ。

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