地方都市へ行くと、ディーゼル排ガス規制の都合で首都圏からは殆ど姿を消した、古い時代に作られたバスをたまに見かける。15年・20年と過ぎ、2024年現在で何と車齢30年を迎えた/超えた車両まであるほどだから驚きだ!!
文・写真:中山修一
(30年物の路線バスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■宇都宮に現れるレジェンドな1台
2024年春頃の時点で、他の新しい車両に混ざって使われている、車齢30年クラスに達した路線バス車両。その一つに挙げられそうな1台が、関東自動車のいすゞキュービック(栃木22 う770)だ。
関東自動車に当時新車で導入された1994年式の車で、年式換算すると2024年に30歳を迎えたことになる。角目4灯ヘッドライトと、大型の1枚フロントガラスに加え、前面両端の5角形窓が印象深い、いわゆるキュービック顔をしたタイプ。
フロントタイヤの前とリアタイヤの後ろに、それぞれ2枚折り戸を設けた「前後扉車」の仕様で、上下にスライドするアルミサッシ窓も今やすっかり懐かしくなったバスの風体と言える。行き先表示はLEDに交換されている。
宇都宮駅西口を拠点とした短距離もしくは近郊路線によく出没するようで、現地へ行けば割とアッサリ来てくれる(今後いつどうなるかは分からないけど…)のも、手軽にネオクラシックなバス車両を楽しめる大きな魅力だ。
■広大な十勝を制する大御所
次に注目するのは北海道。十勝エリアの帯広駅を中心に現在も活躍中のベテラン車両。十勝バスが保有している日野ブルーリボン(帯広22 う268)がそれにあたり、新車導入の1994年式(もしくはそれよりも古い)と言われている。
昔の日野製大型車に取り付けられていた、銀に輝く翼のエンブレムにHINOの文字を組み合わせた「ウイングマーク」が今も前面に掲げられ、遠くからでも懐かしさを放ってくるのが分かるほど目立つ。
丸目4灯ヘッドライトと、左右にスライドして開閉させるメトロ窓、前扉と中扉に2枚折戸を取り付けた車体構成となっている。こちらも行先表示はLEDに交換済だ。
現在の黄色一色の十勝バスカラーと異なり、虹色風に塗られ「南十勝夢街道」と大書きされたボディカラーが特徴の一つ。
元々は旧国鉄広尾線の代替バス向けに投入された車だそうだが、最近は代替バス専用車というわけではなく、帯広駅近隣を結ぶバス路線によく使われている模様。
■道北大都市の交通を支えるヌシ
最後も北海道の路線バスから。道北エリアの交通の一大拠点でもある旭川駅前のバスロータリーに、ちょくちょく出入りしている30年ランナーだ。
少し前に6輪大型バスMR430を復元して話題になった旭川電気軌道には、新車で導入して何十年経った今も現役の路線バス車両が何台か在籍しており、ここで紹介する日野ブルーリボン(旭川22 か835)がちょうど1994年式だ。
前述の十勝バスのブルーリボンと年式は同じ(と思われる)ものの、車体の外見は結構異なり、旭川電気軌道のブルーリボンは角目4灯ヘッドライトと上下開閉アルミサッシ窓、前と中扉に2枚折戸を取り付けた組み合わせ。
日野自動車のシンボルマークはなく、白地に赤いラインをデザインした、旭川電気軌道の旧塗装を今も維持しているのがポイント。行き先表示はLEDに交換されている。旭川駅前でバスウォッチをする際の注目株だ。
■2ケタは生え抜きの証?
今回は車齢30年+の大型路線車を3台ピックアップした。どのクルマにも共通しているのが、ナンバープレートが2ケタ(22)なところ。
2ケタナンバーは1998年までに登録されて、再登録せずに使われ続けているクルマだけに見られる勲章のようなもの。
バスの場合、1998年以前に中古で購入した車両が営業運転に就いているケースは稀なようで、現状2ケタナンバーを目撃したら、大抵は地元の生え抜きと判断して良いかもしれない。
■人間に置き換えると何歳?
ところで、車齢30年のバス車両を人間に置き換えたとしたら、何歳くらいに相当するのだろうか。例えば首都圏の大手バス事業者が車両を入れ替えるサイクルは17年くらい。
その後中古で売却して別の事業者で現役を続行する機会も多いので、17年を一般的な定年の60歳だとすると、車齢30年は人間換算で105歳(!)ということになる。
また、平均8年と言われている普通乗用車の買い替えサイクルを当てはめた場合、30年物のバスは人間換算で225歳。どこのSF映画ですか? と言わんばかりの超絶ご長寿っぷりに脱帽だ。
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