大谷翔平選手をメインキャラクターに起用して俄然注目を集める、ダンロップタイヤの住友ゴムが送り込んだ最新のオールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」。敢えてオールシーズンタイヤと表現したが、シンクロウェザーはこれまでのオールシーズンタイヤとは一線を画した性能を発揮する。特に驚くべき性能は、これまで一般的なオールシーズンタイヤが苦手としていた凍結路面での性能だ。シンクロウェザーの冬道での性能とは、どのようなものなのか?

文:梅木智晴(ベストカー編集委員)/写真:住友ゴム工業・ベストカー編集部

■高い氷雪路性能! 厳冬期の旭川でもシンクロウェザーは安心して走ることができた!!

発表会ではシンクロウェザーのCM映像も公開された。大谷翔平選手がベーブ・ルース選手と共演する、という演出。Babe RuthTM owned and licensed by Babe Ruth League, Inc. and the Family of
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 真冬、北海道旭川市郊外のテストコースでシンクロウェザーの氷雪路性能を確認した。外気温はマイナス7~8℃。凍結路面の表面を日差しと走るクルマのタイヤによる摩擦が融かし、うっすらと水膜が発生するという、スタッドレスタイヤの試乗テストでも「こりゃあ厳しいぞ」と身構える気象コンディション。しかし、だからこそシンクロウェザーの性能をしっかりと確認できる、願ってもないコンディションともいえるのだ。

2月の旭川市郊外。試乗当日は最高気温がマイナス7℃前後でやや「暖か」だった。氷結路に水膜が発生し、とても滑りやすいコンディションだ

 比較としてスタッドレスタイヤの「WINTER MAXX 02」、オールシーズンタイヤの「ALL SEASON MAXX AS1」が用意された。

右がシンクロウェザーで、左が比較試乗用に用意されたダンロップのスタンダードスタッドレスタイヤのWINTER MAXX 02だ

 結論から言えば、シンクロウェザーは圧雪路面、氷上路ともにWINTER MAXX 02とほぼ同等の安定したグリップと制動性能を発揮し、AS1を圧倒的に凌駕する性能を見せつけた。これはかなりの驚きだった。

 詳しく説明をしていこう。

 WINTER MAXX 02はショルダー部が角ばったスクエアショルダーを採用するのに対し、シンクロウェザーはなで肩のラウンドショルダー形状を採用する。この効果もあって、圧雪路のわだち乗り越しスムーズで大きくクルマが振られることがなく安定することを実際の走行で体感した。

 積雪路面での安定したブレーキング時のグリップはスタッドレスタイヤのWINTER MAXX 02とほぼ同等。ブレーキペダルを踏み込んだ瞬間にグッと路面を掴んで減速感を体感する。

シンクロウェザーの特徴的なV字型トレッドパターン。クロスしたブロックパターンの溝が雪面を踏み固め掴み取ることでグリップするのだ

 テストコース内の圧雪路面でスラロームを実施したが、ステアリング切り始めからしっかりと雪面を掴んでノーズは向きを変える。切り返しの反応や横グリップ、滑り出しの穏やかさなどもWINTER MAXX 02と大きな差を感じることはない。特徴的なV字型トレッドパターンに刻まれたブロックパターンが雪面を踏み固め、掴んでいる感覚がドライブしていて伝わってくる。

試乗はテストコース周囲の一般道でも実施。圧雪路面ではわだちを乗り越える際のスムーズな挙動が印象的だった。車体が振られず安定感が高いのだ

 テストコースの氷上路面で30㎞/hからのブレーキングを比較すると、AS1は滑空するような勢いで減速感が抜けてしまうのだが、シンクロウェザーはABSが作動しながらも確実な減速感があり、停止距離はスタッドレスタイヤのWINTER MAXX 02とほぼ同等の約28mだった。これは驚きの結果だ。

 氷盤テスト路で10㎞/h走行で旋回を試すと、WINTER MAXX 02は滑り出すギリギリの舵角での手応え感がシンクロウェザーよりも大きく、踏ん張りが効く印象。シンクロウェザーはグリップしながらもスススと抜けていく手応え感。これはショルダー形状の違いで、スクエアショルダーのWINTER MAXX 02のほうが最後の踏ん張りが効くのだ。一方でオールシーズンタイヤのAS1は操舵に対する手応え感が薄く、やはり氷上グリップはスタッドレスタイヤやシンクロウェザーはに対し大きく劣ることを実感する。

ドライ路もサマータイヤ以上にしっかり走れてアイス路もグリップする技術とは?

 技術的ポイントとなるのがアクティブトレッドと呼ばれるゴム配合技術だ。一般的にタイヤのトレッドゴムは温度が高いと軟らかくなり、低温下では硬くなり柔軟性を失う特性がある。スタッドレスタイヤは低温下での硬化を防ぐシリカや軟化剤を配合し、氷雪路でのトレッドゴムの密着性を高めるようにしている。

サマータイヤ、スタッドレスタイヤはそれぞれの使用環境に最適化されたトレッドゴムを採用している

 しかし、このゴムではサマータイヤとしてのガッチリとした剛性感やシャープな応答性を両立させるのは難しい。スタッドレスタイヤはブロック形状やサイプの入れ方などでドライ路面での操安性やグリップ性能を高める設計を工夫してきたが、やはり限界はある。

 アクティブトレッドのキーとなるのが「水スイッチ」と「温度スイッチ」だ。

・水スイッチ

 トレッドゴムに配合されるポリマーは、通常「共有結合」と呼ばれる強固な化学的結合で結びついており、これは加水などで緩むことはない。

 アクティブトレッドではこの共有化都合の一部を加水により緩む「イオン結合」に置き換えることで、トレッドゴムが水分に触れた際に柔軟化してウエット性能を高める効果を発揮する。イオン結合は水分が抜けた際に再結合し、ゴムの剛性が復活する可逆性を有することが点が大きなポイントなのだ。

ウエット路面や氷雪路面の水分に反応してトレッドゴムがソフトに変化する。水分が抜けると元の硬度に復活するのがポイントだ

・温度スイッチ

 従来、グリップ成分はポリマーと一体だったものを、一部成分をポリマーから分離して機能する材料を新開発。常温下ではサマータイヤ同等の剛性を保ちながら、氷雪路面の低温下ではスタッドレスタイヤ同等の柔軟性を発揮するゴムとしたのが「温度スイッチ」。

氷雪路面の低温に触れるとトレッドゴムの一部成分がソフトに変化し、アイス路面に柔軟に接地する。そして常温下では元のゴム硬度に復帰する

 これらの新技術を組み合わせることで、夏タイヤとスタッドレスタイヤの性能を、それぞれのタイヤが望まれる環境下で最適に発揮できるのがシンクロウェザーが二刀流と言われる理由なのだ。

圧雪路面に見えるが、ところどころ磨かれたアイスバーンも顔を覗かせる北海道の一般道。このような路面でもシンクロウェザーは安定したグリップ性能を発揮する

 シンクロウェザーには氷雪路性能の高さを示す「スノーフレークマーク」が付与されているのだが、さらに、国連規定で定められた氷上性能の基準をクリアしたタイヤにのみ付与される「アイスグリップシンボル」が付与されている。高いアイス性能を第三者機関が認証した、ということだ。もちろん冬季の「冬用タイヤ規制」に適合する。

「スノーフレークマーク」の左に刻印されるのが、国連規定で定められた氷上性能の基準をクリアしたタイヤにのみ付与される「アイスグリップシンボル」。より確実なアイス性能を示す証となる

 ドライ路面での走行性能はまた改めてお伝えするが、直進性や乗り心地、そしてオールシーズンタイヤではしばしば指摘される“シャー”という高周波のノイズなどもしっかりと抑えられていて、一般的なサマータイヤと同等か、それ以上の性能を確認している。

 シンクロウェザーは「アクティブトレッド」という革新的なトレッドゴム技術を採用したことで、これまでのタイヤの常識に挑んだ意欲作だ。その性能をぜひ体感していただきたい。

シンクロウェザーの発表会場で公開されたCM映像。まさに二刀流の実力を持つシンクロウェザーは大谷翔平選手のイメージと重なる

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