ハーレーダビッドソンのストリートボブ114試乗シーン(写真:ハーレーダビッドソンジャパン)

1903年にハーレーダビッドソン第1号機が誕生し、1907年にモーターサイクルカンパニー「ハーレーダビッドソン」を創業。今では、バイクに詳しくない人でもハーレーと聞けば、アメリカンバイクや大型バイクを連想するだろう。

そんなハーレーダビッドソンの2024年モデルが一堂に会するメディア試乗会が横浜で開催された。ちなみに横浜で試乗会が開催された経緯は、ハーレーダビッドソン ジャパンが開催する音楽とモーターサイクルを融合したライダーの祭典「ブルースカイヘブン2024」が横浜で行われることに関連し、この地を選んだという話だった。

今回は、ハーレーダビッドソンジャパンによる2024年モデル試乗会に参加し、最新モデルを体感してきたのでレポートしていく。

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王道スタイルの「BREAKOUTTM117」

ハーレーダビッドソン「ブレイクアウト117」の2024年モデル。価格は334万1800円~(写真:三木宏章)

まず、はじめに試乗したのは「BREAKOUTTM117(ブレイクアウト117)」。数多くのモデルをラインナップしている同社の中でも、ビジュアル的にもっともロー&ロングなスタイルが印象的な、いわゆるアメリカンVツインカスタムの王道とも言えるシルエットのマシンだ。

筆者が乗車した状態(写真:ハーレーダビッドソンジャパン)

身長176cmの筆者が跨ってみると足つき性は良好で、310kgという車両重量からくる不安感もなかった。ただ、少々遠く感じてしまうハンドルバーとフォワードステップに両足を乗せることは、スポーツバイクに乗ることの多い筆者にとって少々の慣れが必要に感じた。とはいえ、これはあまたのハーレーダビッドソンが登場する映画のワンシーンを思い出し、イメージトレーニングを行えば、気分はムービースター、すぐに体が馴染みだした。

バイクに詳しくない人でもイメージが湧いてくるスタイル。それは、ハーレーダビッドソンのブランディングがいかに成功しているのかを実感する。ハンドルに手を添えると、ブレーキレバーやクラッチレバーは縦方向に厚みがある形状で、指の面とレバーの面でブレーキの液圧を上げる感覚も国産や欧州車とは違うフィーリングだ。

ブレイクアウト117のハンドル左側(写真:三木宏章)ブレイクアウト117のハンドル右側(写真:三木宏章)

 

また、伝統的に使われているのが各モデル共通のウインカースイッチだ。現在、多くの市販車のウインカースイッチはハンドル左側にあり、1つのボタンを左右に動かすことで右左折時オン/オフを操作するのだが、ハーレーダビッドソンの場合、左折時には左側スイッチを操作し、右折時には右側にあるウインカースイッチを操作する。たしかに、モーターサイクルのライディング経験がなければ、その操作は直感的ではあるが、普段から乗っている人間にとっては慣れが必要かもしれない。ハーレーダビッドソンが持つ独自性の1つなのだろう。

ハーレーダビッドソン伝統のVツインエンジン

ブレイクアウト117に搭載されているエンジン(写真:三木宏章)

搭載されるVツインエンジンは、「ミルウォーキーエイト」と呼ばれる同社最大のエンジンケースを使ったもので排気量1923cc。そのエンジンは、3500rpmで168Nmの最大トルクを発生し、最高出力は5020rpmで102HP(76kW)を絞り出す。右手のアクセルグリップを軽くひねってやるだけで、素晴らしいトルクと、ハーレーダビッドソンならではのエンジンサウンドがシンクロし、310kgの車重でさえ軽々と前へ進めていく。

フロントタイヤは21インチホイールに130サイズ、リアは18インチホイールに240サイズのタイヤを採用し、スタンダードながらもフルカスタムの王道を貫く仕上げ。大きなエンジンだが圧倒的にシリンダーよりクランクまわりの重量があり、低重心ゆえの軽い切り返しを実現していることには驚かされた。扁平率40%となるリアタイヤのおかげで、乗り心地はダイレクト感があり、腰に負荷がかかるほどではないと感じた。

フォワードステップと腕をストレートに伸ばしたライディングスタイルは、風を全身で感じながら、一定の巡航速度でどこまでも走りたくなる感覚だ。スポーツバイク一筋の筆者ではあるが、この仕上がりのよさは、モーターサイクル最後の聖域と感じた。美しいステンレスポリッシュパーツやクローム仕上げなど、スタンダード仕様ながらカスタムビルドと見間違えるほどのスタイリングは、まさにハイウェイスターという気分を味わえた。

シンプルを極めた「STREET BOBTM114」

ストリートボブ114のスタイリング(写真:三木宏章)

一方、「STREET BOBTM114(ストリートボブ114)」は、排気量1868ccで、シンプルを極めたストリートスタイルが特徴だ。その力強いフォルムは、ハーレーダビッドソンが持つ伝統的なスタイリングに加え、ブラックアウトされたエンジンなど、細部からもこだわりが伝わってくる。マットブラック2本出しのサイレンサーや、骨太の6本ホイールスポークを見ても一目瞭然だろう。

ストリートボブ114に跨った様子(写真:ハーレーダビッドソンジャパン)

ライディングポジションは、ローシートに体を任せて直立して座るもので、足を前に投げ出すようなフォワードコントロールだったブレイクアウト117に対し、ストリートボブ114はそれよりも後方にステップが配置されたミッドコントロールと対象的。ハンドルグリップへ腕を伸ばすのではなく、比較的手前高めの位置に左右グリップがくるように設計されている点もブレイクアウト117とは異なる。

ストリートボブ114の試乗シーン(写真:ハーレーダビッドソンジャパン)

結果的にポジションがコンパクトになり、マシンのサイズを不必要に感じることなく、コンパクトな取りまわしが可能だ。実際にストリートでのストップ&ゴーといった極低速走行時、マシンに対して入力されたリアクションがつかみやすく、Uターンも含めたユーザビリティーの高さに好感が持てた。この事実は、乗り手を選ぶことなく、多くのユーザーに幅広く楽しめるマシンを提供したいと願うハーレーダビッドソンの心意気だろう。

エンジン出力についても不満をまったく感じず、伝統のVツインエンジンの鼓動を楽しみながら、ストリートで存分にその性能を楽しめるだろう。ハーレーダビッドソンは、最新のエンジニアリングで伝統を守りつつ、ほかのどのブランドの模造でもないオリジナルの製品を顧客に提供し続けている。そんなラインナップの中でも、今回試乗した「ストリートボブ114」は、スタンダードで乗るもよし、カスタムベースとしてのプラットフォームとして追求するもよし、オーナーが自由に楽しめるモデルと言えそうだ。

圧倒的な存在感を放つ「ROAD GLIDETM

ロードグライドのスタイリング(写真:三木宏章)

そして、今回もっとも注目すべき1台が「ROAD GLIDETM(ロードグライド)」だろう。グランドアメリカンツーリングと称された大型フェアリングを装着したシリーズで、2024モデルのアップデートにおいて、その筆頭に挙げられるのは「インフォテインメント」の充実だ。インナーフェアリングに装着されたモニターは、従来型モデルから大型化された312mmのTFTフルカラーモニターを導入し、ハーレーダビッドソンにとって過去最大級のサイズとなる。

ロードグライドの2024年モデルは、モニターが大きくなり、Apple CarPlayにも対応(写真:三木宏章)

カーユーザーなら馴染のある人も多いApple CarPlayにも対応し、Bluetooth接続を採用したことで煩わしいワイヤリングから開放された。もちろん有線での接続も可能なので、ご安心を。そして何より印象的なのが「シャークノーズフェアリング」と名付けられた大型LEDヘッドランプと一体化した大型カウル。デザインが一新されたウインドシールドにより空力の向上も図られ、複数のエアーベーンの採用で、より快適なライダーズプロパティーを達成。また、フレームにカウル本体がリジットマウントされているので、より明確なエアロダイナミクス効果を生み出している。

ロードグライドに跨った様子(写真:ハーレーダビッドソンジャパン)

液晶メーターには、クラシカルなツインメーターやナビゲーション情報に加え、「ロード」「スポーツ」「カスタム」「レイン」などのライディングモードといったライダーにとって必要な情報が提供される。搭載される伝統のVツインエンジンは、ミルウォーキー117と呼ばれる1923ccの最大排気量のタイプだ。車重380kgは手応え十分で、極低速時やUターンなどには気を使うことも事実だが、足つき性はよいのでコツさえつかめば問題はない。

ロードグライドの試乗シーン(写真:ハーレーダビッドソンジャパン)

これだけの車重はむしろ、高速安定性という大きなベネフィットを持ち合わせているといえる。新型カウルの効果は素晴らしく、膝まわりの調整式ベントもライダープロテクションに効果的で、夏場や冬場にはカウルから送り込まれるエアーボリュームの調整も可能。そして、そのカウルが生み出す高速安定性と、車重が持つ安定感によって生み出される走行フィーリングは、まさにアメリカンツーリングモデルの極みと言えるだろう。

伝統と先進が融合したブランド

ブレイクアウト117とストリートボブ114(写真:三木宏章)東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

今回、ハーレーダビッドソンの2024年モデル3台に試乗して、どのモデルも“ハーレーらしさ”を残しつつ、ユーザーの要望を取り入れた最先端の技術が盛り込まれていることが好印象だった。変わらない姿と、ユーザーの要望に応える新機能、それがハーレーダビッドソンというブランドを「キング・オブ・モーターサイクル」と言わしめるゆえんなのだろう。

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