2024年8月1日、日産自動車の内田誠社長と本田技研工業の三部敏宏社長が共同会見を実施した。両社は今年3月15日に、モビリティの電動化、知能化を中心に、次世代技術開発や調達など幅広い領域で共同開発を進めることを発表している。今回の会見では、話し合いを始めてから約100日が経過して、見えてきた一定の成果と方針が発表された。

文:ベストカーWeb編集部、画像:日産、ホンダ共同会見からのスクリーンショット

■モデルラインナップの相互補完!!

 今年3月の時点では、「まだお互いの情報を出し合って、何が出来るか、どこで困っているかの話し合いを始める段階」と言っていた日産内田社長とホンダ三部社長。それが今回の会見では「両社が力を合わせることで、想定以上の成果が上がることがわかった」とのこと。

 今回発表された両社の「主要協業領域」は以下の5つ。

(1)次世代SDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究
(2)バッテリーの補完・研究
(3)e-Axleの共通化
(4)車両の相互補完
(5)国内エネルギーサービス、資源循環領域での協業

5つの領域で協業が発表された

 どれも大変大きな発表であり、細部の具体的な共同開発領域や成果はこれからだが、「(1)次世代SDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究」については、これだけでそれぞれのメーカーが四桁億円の研究開発費を投資している領域であり、これが圧縮、協業による掛け算となることで大変な成果が期待できる。

記事リンク

前の記事

豊田章男会長「今の日本は頑張ろうという気になれない」の本当の宛先は…メディアだった

次の記事

【全内容】トヨタに国交省から初の是正命令、人気車の出荷停止解除も新たな不正も発覚…頼むよ……

 また「(2)バッテリーの補完・研究」も大きな話題で、日産・ホンダは今後バッテリーセルの共通化を目指すという。つまり同じバッテリーが両メーカーそれぞれの車両に利用できることになる(後述するが共通化されるバッテリーはBEVに限らずHVやPHEVにも利用できる見込み)。そのうえでこの話題のなかで「両社はモーターとインバーターも同じものを使う」という発言もあった。この方針決定は調達部門で大変なインパクトがある。

 そして、自動車情報専門メディアとして今回の会見の目玉のひとつが「(4)車両の相互補完」だろう。会見に出席した当編集部員が「この相互補完はBEV、次世代領域だけですか?」と質問したところ、「あえて領域を狭める考えはない。ガソリン車も、HVも、PHEVも、検討しています」(ホンダ三部社長)との回答を得た。マジか。

 複雑化し、拡大し続けるグローバル市場において、日産とホンダはモデルラインナップの相互補完を決めた。これはつまり、たとえば「大型SUVとピックアップは日産、軽とコンパクトクラスはホンダ…」といった共同戦線が張られる可能性が高まったわけだ。

 今年3月の共同会見の時点では「つまり、GT-RとNSXが姉妹車になる可能性が出てきたってこと…?」というような妄想がSNSで話題となったが(「ベストカーじゃないんだから」というリプライがあって、「確かに…」と思いました)、あながち「妄想」と言い切れなくなってきた。

 車両の相互補完は「それぞれの個性が失われるのでは」という懸念もあるが、たとえば日産と三菱の両社がラインナップする軽自動車、ルークスとデリカミニは、姉妹車ではあるがそれぞれのメーカーの個性がよく出ているいいクルマだ。販売もそれぞれ好調。こういうかたちで両社の個性を残しつつ、開発資源を「さらによりよいクルマづくり」に投資してもらったほうが、クルマ好きにはありがたい。

 この「(4)車両の相互補完」については、具体的に進んでいる分野もあり(両社長ともに「短期的に出来るところと中長期的に出来るところがあって、短期で出来ることはすぐにやっていく」という発言もあった)、「近いうちに具体的なことが発表できると思う」(ホンダ三部社長)とのこと。えらいこっちゃ。

 とどめの大ニュースとして、今回、日産、ホンダの共同開発に三菱自動車が加わることも発表された。日本自動車界はこれで、トヨタ・スバル・マツダ・スズキ・ダイハツ連合と、日産・ホンダ・三菱連合の2つでまとまって、グローバル市場と戦うことになる。胸が熱い。

三菱自動車も加わるとのこと。なお日産とルノーの関係は(この座組には今のところ加わらないものの)変わらず続くそう

「この時代に乗り遅れないためにも、スピード感を大事にしたい。2030年にはなんらかの成果を出す。でないと間に合わない」(日産内田社長)

 とのこと。おお…具体的成果が出るまであと5年半!! 規模がバカでかいのにすごいスピード感。どうも未来は想像以上に近く、ワクワクしたものになりそうだ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。