いすゞ自動車は7月29日、海外市場向け大型トラックのニューモデル「S&Eシリーズ」の生産開始を発表した。UDトラックスとの協業を活用した4番目のモデルで、タイのUD工場から供給し、ASEAN・中東・中南米などの市場で発売していく予定だ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/いすゞ自動車、UDトラックス、フルロード編集部

いすゞ・UDの協業モデル第4弾は海外市場向け

いすゞの海外市場向け大型トラック・S&Eシリーズ。写真はセミトラクタ車型の「Eシリーズ」3軸6×4駆動モデル(EWE?)。車格表示から10.8リッター410PSエンジン搭載車とみられ、GCW54トン級、あるいは現行車にはないGCW60トン超級かもしれない

 いすゞは、UDトラックスとの協業の一環としてトラック商品の共通化を進めており、2023年3月から24年7月にかけて、国内市場向けの大型トラクタ(いすゞギガ/UDクオン)、小型トラック(いすゞエルフ/UDカゼット)、中型/中型増トントラック(いすゞフォワード/UDコンドル)で実施された。
 
 今年4月に発表した中期経営計画(ISUZUトランスフォーメーション-Growth to 2030・通称IX)では、海外市場でもトラック商品を共通化する計画を明らかにし、大型トラックおよびトラクタ、中~大型トラック、小型トラックの各クラスでの共通化を打ち出している。

 現在いすゞでは、欧州・米国などを除いた世界各地に、大型トラックおよびトラクタを供給している。これらの海外向けには、「C&Eシリーズ」と「FXシリーズ」の2つの大型シャシーモデルを用意しており、市場によってどちらか、あるいは両方をラインナップしている。 

 新型の「S&Eシリーズ」は、このうち「C&Eシリーズ」の後継モデルとなるもので、UDトラックスが海外市場専用車として開発した大型トラック「クエスター」をベースとし、生産も同じくUDのタイ工場で行なうことにより、開発投資の合理化と量産効果といったシナジー創出を狙う。

新型S&Eシリーズのベース車であるUDトラックス クエスター。昨秋のジャパンモビリティショーでは、いすゞグループにおける海外市場向け商品の代表として、セミトラクタ6×4車型のクエスターGWE・Euro-5適合モデルが参考出品された

ニューモデルは「ギガ顔」のクエスター!

海外向けS&Eシリーズと国内向けギガトラクタ。どちらもUD車をベースにいすゞがフロントフェイスをデザインした。見た目も成り立ちも似ているが、シャシーとキャビンのサイズが違うので、造形は異なる。顔つきに大きく影響するヘッドライトには、いすゞオリジナル車と同じユニットを用いているのも特徴

 S&Eシリーズはクエスターの同型車ではあるが、いすゞデザインセンターによって、オリジナルのフロントデザインが仕立てられており(設計実務はUDが担当)、ヘッドライトには前述FXシリーズと同じユニットを装着するなど、国内向け「ギガトラクタ」(ベースはUDクオン)と同様の差別化手法が用いられている。さすがというべきか当然というべきか、見事にいすゞ車の顔つきになっている。インテリアは、ギガトラクタではいすゞ独自の内装色を採用しているが、S&Eシリーズではエンブレムの変更に留まるようだ。

 展開車型は、車両総重量(GVW)25~41トンの単車型・Sシリーズと、連結車両総重量(GCW) 36~80トンのセミトラクタ車型・Eシリーズで構成される。旧EシリーズではGCW60トンが上限だったが、新EシリーズはGCW60トン以上の超重量級トラクタレンジを設定し、ラインナップを拡充した。

 さらに従来のC&Eシリーズに対して、リア駆動軸にハブリダクションを組み込んだオフロード走破性の高いモデルを新設し、一部市場に留まっていたAMT(電子制御機械式自動変速機)搭載車については全市場へ導入を拡大するなど、商品力もより充実したものとなる。

 今回のリリースではパワートレーンについて触れられていない。現行型クエスターでは、10.8リッター直6の「GH11E型」と7.7リッター直6の「GH8E型」の2機種のエンジンを設定し、仕向け地で施行される排ガス規制(Euro-3/-5/-6)にもそれぞれ適合済みで、トランスミッションは6速・9速・12速の各マニュアルと12速AMT「ESCOT(エスコット)」が選択できる。ちなみに、いすゞ栃木工場で生産を開始したカミンズ設計の6.7リッター直6エンジン・DB6A型は、GH8E型と同じセグメントのエンジンなので、いますぐではなくとも、このクルマにも搭載される可能性があるのでは?と筆者は考えている。

いすゞ車の品質基準もクリア

クエスターEuro-5適合・右ハンドル仕様車のインテリア。いすゞによると、インテリアはクエスターとほとんど同じで、エンブレムをISUZUに改めているという。ちなみにギガトラクタでは、クオンに対してダッシュボードやトリム、シートのカラーリングがいすゞ専用となっている

 S&Eシリーズの仕向け地は、ASEAN(東南アジア諸国連合)、中東、中南米の各諸国を中心とする。現時点ではどの市場にいつ投入されるかを明らかにしていないが、順次発売する方針という。展開地域の拡大も計画しているが、一部C&Eシリーズを継続する市場(未公表)もあるとしている。

 生産は、クエスターやクローナー(UDの海外向け中型トラック)を生産しているUDトラックスのタイ工場で行なわれる。S&Eシリーズは、いすゞ車の品質基準を満たしており、既存いすゞ車ユーザーが安心して運用できるトラック/トラクタだとしている。

 いすゞでは、2030年度までにCV世界販売台数45万台以上(除くピックアップトラック)を目標としており、そのうち協業によるグループ販売連携台数については、国内2万3000台、海外1万1000台を策定している。

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