免許の取得時には一生懸命覚えた交通ルールも、クルマの運転に慣れてくると「コレって大丈夫なんだっけ?」と、曖昧になってしまいがち。日頃、何気なくやっているその運転、もしかしてルール違反になっていませんか?

文/井澤利昭、写真/写真AC

■運転中のスマホ操作はNG! では赤信号で停車中の場合は?

前のクルマへの追突や道路を横断中の歩行者などに気づかず接触してしまうなど、走行中のスマホの操作は大きな事故の原因にもなりうる危険な行為。もちろん道交法にも違反しており、2019年2月にはその罰則がさらに強化された

 追突など重大な事故につながることも多く、長年問題視されてきた「ながら運転」。

 ドライバーであればその危険性は誰もが理解しているはずだが、街中を行くクルマに目をやると、いまなおスマホやナビを操作しながら運転しているドライバーを見かかることがある。

 走行中のスマホでの通話やナビなどの画面を注視するといった行為はもちろん道路交通法に違反しており、令和元年(2019年)12月には「ながら運転」に関する道路交通法の一部が改正され、違反した場合の罰則がさらに重くなった。

 取り締まりの対象となれば、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金となり、普通車であれば反則金1万8000円と違反点数3点。

 さらにスマホの使用などが原因で事故などを起こすなど交通に危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に加えて違反点数も6点となり、一発免停となってしまう。

 このように、走行中のスマホなどの使用は危険なうえ厳しく罰せられることになるため、絶対にやってダメ。いっぽうで、赤信号や渋滞などで停車中の場合も違反となってしまうのだろうか?

 「ながら運転」を禁止する道路交通法第71条の5の5によると「自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止している時を除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」とされている。

 これを端的に言うと「クルマが停止している時を除き、スマホを使ったりカーナビの画面などを注視しない」ということ。

 つまりクルマが完全に停止している状態であれば、スマホやカーナビの操作をしても、道路交通法上は問題がないということだ。

 とはいえスマホの操作に夢中になってしまい、青信号に変わった際の発進が遅れたり、渋滞中の急な割り込みに気づかず発進して追突してしまうなど、とっさの事態に対応できないのにはやはり問題がある。

 違反になる可能性が低い停車中とはいえ、やはり「ながら運転」は危険なもの。安全性を優先するなら赤信号や渋滞時であっても、スマホやカーナビの操作はできるだけ控えるのが得策だろう。

■交差点近くにあるゼブラゾーンは走っても大丈夫?

 交通量の多い交差点周辺などに設けられた、白い縞模様が入ったが道路上のエリア。

 ドライバーの間では通称「ゼブラゾーン」などと呼ばれるこの部分は正式名称を「導流帯」と言い、クルマの安全かつ円滑な走行を誘導する必要のある場所に、道路法令のひとつである「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」に基づいて設けられたもの。

 渋滞時などには、前のクルマを避けて右左折レーンへと進むため、この「ゼブラゾーン」に進入しているクルマをよく見かけるが、道路交通法上の問題はないのだろうか?

 ドライバー向けの講習の教材として一般財団法人全日本交通安全協会が発行している交通教則では、「ゼブラゾーン」の説明として「クルマの通行を安全で円滑に誘導するため、クルマが通らないようにしている道路の部分」と記されているため、「ゼブラゾーンを走る=違反」と思っている人もいるかもしれない。

 ところが「ゼブラゾーン」は、道路交通法第17条の6でクルマの通行が禁止されている「安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分」にはあたらないため、そこを走ること自体は問題はなく、違反とはならないのだ。

 いっぽう、国内で唯一の例外として宮城県では、同県の公安委員会が定めた「ペイントによる道路標示の上にみだりに車輪をかけて、車両を運転しないこと」という独自の道路交通規則があり、「ゼブラゾーン」での走行が悪質とみなされた場合、取り締まりの対象となることもありうるという。

 一部の例外を除き、道路交通法上は問題のない「ゼブラゾーン」の走行だが、クルマを安全に誘導するためという本来の意味合いからすれば、できることなら走行を控え、進入する場合でも周辺の安全を十分に確認することが必要。

 「ゼブラゾーン」を走行して事故を起こした場合、保険金査定時の過失割合が不利に働くケースもあるというだけに気をつけたい。

■後部座席なら締めなくてもいい? シートベルトのルール

運転席や助手席といった前部座席でシートベルトの着用義務違反を犯してしまうと、リアシートの場合と異なり、高速道路や一般道といった道路の種類に関係なく違反点数1点が科せられる。反則金こそないものの、十分に気をつけよう

 交通事故に遭った場合の被害を大幅に軽減するために必須なシートベルトの着用。

 運転する際や助手席に座る時にはきちんと締めているにもかかわらず、ついついその着用を忘れてしまいがちなのがリアシートに座った場合だ。

 1985年から前部座席での着用義務化がはじまったシートベルトは、2008年の法改正によりリアシートを含む全座席での着用が義務付けされることに。

 これにより、車内いる誰かがシートベルトをしていないと、座席の位置に関係なく「座席ベルト装着義務違反」として、ドライバーがその責任を負うこととなった。

 ではその場合の罰則はというと、座席の位置や走行している道路の種類で少々事情が変わってくる。

 運転席や助手席といった前部座席でシートベルトをしていない場合は、道路の種類は関係なく、そのクルマを運転するドライバーに違反点数1点の罰則が与えられる。

 いっぽうリアシートでの違反の場合、高速道路では運転席や助手席と同様、違反点数1点となるが、一般道ではなんと違反点数が付けられることがないのだ。

 さらにいずれのケースでも、シートベルトの着用義務違反では反則金は発生しないため、一般道でのリアシートの違反であれば、仮に取り締まりの対象となっても、口頭での注意のみで済むということになる。

 とはいえ、前述のとおりシートベルトは万一の事故の際、クルマに乗る人の命を守る重要な装備。  違反点数や反則金がないからといって疎かにせず、ドライバーの責任として、車内にいる全員が走行中は常にシートベルトを着用するよう徹底したい。

■一時停止はどの位置でどれぐらい止まるのが正解?

 街中を走れば、ほぼ間違いなく出会うことになる「止まれ」の標識と道路上にペイントされた停止線。

 こうした場所では文字通り「一時停止」が必要となるわけだが、クルマを停止線のどの位置で止めるのが正しいのかを、曖昧なまま運転しているという人も案外多いのではないだろうか。

 このルールに関する道路交通法第43条によると、クルマが一時停止するべき場所は「道路標識等による停止線の直前」と規定されており、道路上に停止線が引かれている場所では、フロントバンパーがそれを越えない位置で止まるのが理想的。

 ちなみに教習所などでは停止線の2m以上手前で停止した場合は「停止線で止まった」とは判断されず、実技試験などでも減点の対象となることもあるため、ギリギリだとはみ出すのが心配……という人も、停止線から2m以内にはクルマを止めるように意識しておきたい。

 いっぽうで場所によっては、停止線の位置があまりに交差点の手前過ぎて左右から来るクルマや歩行者が見えない! という理由から、停止線を大きく越えて止まったり、なかには一時停止を無視してゆっくりと進みながら交差点に進入するクルマを見かけることも。

 これは停止線を設ける場所に、「横断歩道がある場合は、その2m手前の位置を標準とする」や「交差道路側の右左折車の走行に支障を与えない位置に設置する」といったルールが存在するため。

 こうした場所では、まず停止線の手前で一時停止し、左右の安全を確かめながら、ゆっくりと徐行しつつ交差点内へとクルマを進めていくのが正解だ。

 これを守らず一時停止をしないまま交差点に進入すると、突然飛び出してきた歩行者や、右左折してきた大型車などと接触する可能性もありうる。

 なお、一時停止の時間は道路交通法上では規定されていないものの、まずは「完全に停止」することが必要。左右の安全を確認するという時間から考えて3秒程度が目安と言われており、教習所などでもそう教えているところが多いようだ。

 交通ルールを曖昧なままにしたことで違反切符を切られた! なんてことになっては目も当てられない。運転中「コレってどうだっけ?」と少しでも疑問に思うことがあった場合はそのまま曖昧にせず、初心に帰ってきちんと調べ直してみることが大切だ。

記事リンク

前の記事

えぇ! 10年前と比べて検挙件数5倍増!? 増え続ける無法者自転車

次の記事

チャリを邪魔してるんじゃないのマジで!! じつはドライバーの義務! 自転車に乗る人に知ってほしい左折時のクルマの左寄せ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。