低燃費(=CO2排出低減)の方策のひとつとして、2000年ごろから普及し始めたアイドリングストップ。ただ昨今は、その効果を疑問視する声も多く、実際にトヨタやホンダでは、ガソリン車へのアイドリングストップ装置の搭載を見送っている例も少なくない。
ただその一方で、まだ搭載をつづけているメーカー、車種もある。メーカーごとの見解ももちろんあるだろうが、効果が疑問視されているいま、機能ONが前提なのは見直すべきではないだろうか。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_tarou230/写真:TOYOTA、Adobe Stock、写真AC
アイドリングストップ装置搭載を見送り始めた自動車メーカー
最初に、本稿で議論するのは、純ガソリンエンジン車(ディーゼル車含む)のアイドリングストップ機構であり、ハイブリッド車に搭載されるアイドリングストップ機構ではないということを触れておく。
さて、これまでアイドリングストップを率先して採用してきた日本車メーカーだが、冒頭でも触れたように、ここ4~5年は流れが変わってきており、たとえばトヨタの場合だと、ヤリス、カローラ(スポーツ、ツーリング、セダン、クロス、GR)、RAV4、ハリアー、ランドクルーザー300、ランドクルーザー70、ランドクルーザー250、アルファードなど(いずれもガソリン車)では、アイドリングストップ装置が搭載されていない。
ホンダは、Nシリーズ全種、ステップワゴンにはアイドリングストップ装置が搭載されているが、フィット、WR-V、ZR-V、ヴェゼル、新型フリードでは非搭載だ。日産は、ルークス、デイズ、セレナ、NV200バネットにはアイドリングストップ装置を搭載するが、スカイライン3Lターボには非搭載となっている。三菱デリカD:5やエクリプスクロスも非搭載だ。
スバルはインプレッサ、クロストレック、フォレスター、レイバック、アウトバックなどに搭載、マツダもCX-5、CX-60、ロードスター(AT車)など、主要車種はすべてアイドリングストップを搭載している。
搭載車でもユーザーは機能オフにする、そもそも環境によいのか疑問
アイドリングストップ機能に関しては、「信号待ちからの発進で出遅れる」「(信号待ちでは)エアコン機能が送風だけになる」「突然エンジンが再始動するので驚かされる」「アイドリングストップからきちんと復帰するのか不安」など、当初から煩わしさや不安を嘆く声が少なくなかった。
環境負荷軽減の面でも、アイドリングストップによって燃料消費はわずかながら削減できるものの、アイドリングストップ車用のバッテリーは(アイドリングストップをオンにしていると)寿命が短く、頻繁に交換する必要があることは、わずかな燃料消費を抑えるよりも、環境負荷が大きい可能性もある。また、アイドリングストップ車用のバッテリーは高性能であるために、そうでないバッテリーよりも高価であり、高価なバッテリーを高頻度で交換しなければならないことは、ユーザーにとって大きな負担だ。
トヨタ広報担当も、かつて取材した際、「(燃費やCO2といった環境性能で)充分に競合性があることと、アイドリングストップ搭載車であっても、ユーザーが機能を停止させているケースが多く、ガソリン車へのアイドリングストップ機構搭載は今後も採用しない方向で進めている」としていた。ただトヨタ車は、前述したように搭載していない車種が多いものの、GRスープラ、ハイラックス、ヴェルファイアのガソリンターボ車には、アイドリングストップ装置がついている。アルファードは非搭載なのにヴェルファイアには搭載している理由はわからないが、より売れるアルファードでは搭載されていないことを考えると、かつて取材した際から大きな方針変更はないのだろう。
装置をつけるならば、「OFF」を前提にしてくれないか
メーカーによって対応がバラバラな点については、メーカーとしては、もはや時代遅れとなりつつある純ガソリン車への装備に、コストをかけ続けたくない、という考えもあると思われる。もうこのままそっとしておいて、注目されがちなハイブリッド車などにコストも時間も人も費やしたほうが、ずっとパフォーマンスがいい。
ただ、そうであるならば、デフォルトを「機能ON」ではなく、「OFF」にしてほしいと思う。ユーザーが機能をOFFにしても、エンジンを始動する度に、アイドリングストップ装置にリセットがかかって「ON」に戻ってしまうクルマもあり、毎度OFFにする煩わしさが残ってしまう。効果を疑問に思っているならばなおさらだ。
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