お盆の観光でにぎわう沖縄。モノレール「ゆいレール」以外に鉄路がなく、移動はクルマが中心だ。こんな状況を打破しようと、那覇と名護の間に鉄道を通す計画があること知ってた?

文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobestock(トビラ写真=7maru@Adobestock)、ベストカーWeb編集部

■沖縄市から恩納村を結んで名護まで60分!

内閣府が構想する沖縄の新交通網。那覇から名護は普通鉄道(濃い青線)で結ぶ

 この時期、まさに沖縄にいて、渋滞にハマッているという人がいるかもしれない。とりわけ那覇周辺の渋滞は東京・大阪並みだから、特に空港へ向かう際などは注意が必要だ。

 そんな状況を打破しようと、実は内閣府が平成22年から「沖縄における鉄軌道をはじめとする新たな公共交通システム導入課題詳細調査」を始め、毎年報告書を公開している。

 この計画の全体図は、那覇のさらに南の糸満市役所から、名護のさらに奥にある美ら海水族館までをBRT(連接バス)とゆいレール(モノレール)、普通鉄道を使って結ぼうという壮大なもの。

 そのうち普通鉄道は、那覇の新都心を出て普天間、沖縄市を結び、うるま、石川、恩納村を繋いで名護に至るルートを幹線として構想している。距離にして約80km、目標所要時間は60分だ。

 とはいえ、こうした計画でまず考えねばならないのは、投じた費用に対してどれほどの便益があるのかということ。今回の沖縄のケースもこの費用便益比が厳しく、内閣府の調査も毎年いかにコストを削るかという点に涙ぐましい変更を積み重ねてきた。

 それでも現実は厳しく、2021年の試算では、普通鉄道は1日あたり6万5000人の利用者が見込めるものの、40年後の損益は約4640億円の赤字という結果に。報告書でも、コスト削減はほぼ限界と記載があり、事態は「詰んだ」と思われた。

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■ジャングリアの開園で潮目が変わる?

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 しかし諦めてはいけない。近年はぶち当たった壁を壊すようなニュースも届いているのだ。

 ひとつは名護の奥、本部半島の中央部に2025年オープンする巨大テーマパーク「ジャングリア」だ。同パークは年間来場者数が200万人とも言われ、美ら海水族館と並ぶ北部の人気コンテンツとなる。鉄道利用者の増加をもたらすことは確実だ。

 もう一つは鉄道建設の原資について、内閣府が「全国新幹線鉄道整備法」による整備スキームの導入可能性を検討し始めたことだ。この制度を使えば、鉄道建設にかかる政府の補助率がぐんと高まるため、地元の負担を大幅に減らすことができる。

 さらに上下分割方式を採れば、鉄道運営会社の支払う線路使用料が「受益の範囲内(=儲かったら払いなさい)」に抑えられるため、事業を黒字にしやすくなるのだ。

 現実的にはまだまだ予断を許さない沖縄の鉄道敷設計画だが、クルマだけに依存する沖縄の交通環境がオーバーフローしつつあることは確か。住人にも訪れる人にもメリットのある、新しい鉄道網を実現してほしい。

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