日本の自動車税(種別割)は、総排気量によって税金が変わる。登録車の場合、1.0L以下の2万5000円(2019年10月以降初度登録車)が基準となり、0.5L増えるごとに区分が1つ上がっていくのだ。とすると、1.3Lなら1.5Lエンジンと同じ税負担になってしまう。だがなぜ中途半端な排気量のエンジンを載せるのだろうか。そこには、税負担よりももっと重みのある、技術者の魂が関係していた。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部・AdobeStock(トップ画像=adel@AdobeStock)
■エンジンを知らない人が作った!? 今日の自動車税区分
税負担を考えると、1.3Lや1.8Lエンジンは少々不利な排気量だ。それぞれ、1.5L・2.0Lと同じ自動車税を収めなければならない。
さらに世の中には1.6Lエンジンという強者も。税金のことだけを考えれば、「もう少しだけ排気量を削って、なんとか1.5Lに収まらなかったのか!?」と言いたくなることもあるだろう。
ただ、これはお役人の決めた税負担区分に照らし合わせたときに出てくる話だ。多分、自動車税の区分を作った人は、クルマのエンジンが何たるかなどは、全く知らないで制度を作ったのだと思う。
「まぁ、キリがいいし500㏄刻みにしておくか」くらいの軽い気持ちだったはず。
この気持ちと、自動車エンジニアが排気量にかける気持ちは大きくかけ離れており、エンジン排気量が実に中途半端に見える自動車税の区分になってしまったのだろう。
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■キーワード…..それは1気筒400㏄!?
エンジンを作り上げる時には、最も効率のいいエンジンを作り上げるのがエンジニアの魂だ。この効率を突き詰めていくと、エンジンの中の1気筒に与える排気量が400㏄であることにたどり着くという。
つまり、2気筒エンジンなら800㏄、3気筒なら1.2L、4気筒なら1.6という具合だ。スポーツモデルの名車が、これらの排気量をよく選んでいる。
通称ヨタハチのトヨタ・スポーツ800は2気筒800㏄、火の玉ボーイで有名なスバル・ジャスティは3気筒の1.2Lだし、ハチロクでお馴染みのトヨタ・スプリンタートレノ/レビンは4気筒1.6Lエンジンだ。
名だたるスポーツカーが、気筒数×400㏄のエンジンを載せていることから、この仕様の効率の良さがうかがい知れる。
この数字は、現在のようなインジェクションではなく、キャブレターでガソリンと空気の混合気を作っていた時代のものだ。
現在では燃料噴射技術やコンピューター制御の向上などから、ズバリ1気筒を400㏄に割り当てる必要は無く、ガソリンエンジンの理想的な1気筒あたりの排気量は、約400㏄から600㏄となっている。
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■一見中途半端に見える排気量は熱効率を追求した結果生まれた!!
最近では、低振動・低騒音を両立する技術が発達し、エンジンの気筒数も4から3に減ってきた。コンパクトカーはもちろん、ミドルクラスのクルマまで3気筒というのも珍しくはない。
2010年に登場した日産・マーチでは、これまでの4気筒エンジンから3気筒エンジンに変更するにあたり、熱効率の最適値を検討している。
これによると、1気筒あたりの排気量を300㏄から400㏄にすることで、熱効率は2.0%上昇するというのだ。
現在では3気筒の1.6Lで、驚異的なエンジンスペックを誇る、GRヤリスのようなクルマもある。
低燃費・高効率なエンジンを考えていけば、今後も3気筒の1.2L~1.4Lエンジンを搭載するクルマが増えていくはずだ。
ここまでくると、日本の自動車税がいかに適当な尺度で決められたものかがよくわかる。中途半端だったのは、エンジン排気量ではなく自動車税の排気量区分だった。
いっそのこと、技術を理解していない排気量区分よりも、CO2排出量などで税額区分を作ってくれた方が良い。
技術者の皆さんは、これからも適当な税制にとらわれない、日本の技術の詰まった高効率なエンジンの開発に注力してください。日本の技術で、世界を驚かせましょう。
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