東北自動車道で発生した逆走による痛ましい事故。本当にこのような事故が後を絶たないのだが、どうにか防ぐことはできないのだろうか? 自動車専門メディアとして考え得る対応策を練ってみました。
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、NISSAN、ネクスコ東日本
データ引用:高速道路における逆走の発生状況
■逆走している人に「警告」をしても無駄なのでは?
まず高速道路の逆走についてみていこう。ネクスコ東日本の調査によれば2018年の全国の高速道路での逆走件数は年間200件。約2日に1回は逆走が発生しているという状況だ。本来であれば100%あってはならない逆走だが、2日に1回という頻度がかなり高いことがわかる。
さらに逆走者のデータとしては「65歳以上が69%、うち、75歳以上が48%(出典:ネクスコ東日本)」というデータもあり、高齢者による逆走が目立っている。
逆走の動機についても高速道路の出口を過ぎて逆走するといった「故意」、出入り口などで進路を誤った「過失」、そして「認識なし」「その他・不明」という4種類に分けてネクスコ東日本が発表している。
2018年は39%が過失、25%が故意、そして21%が認識なしとなっている。つまり逆走した認識がないという逆走車が全体の20%を占めている。さらに「認識なし」の詳細を見ると認知症による逆走が14%と過半数を占めている。
高齢化社会において非常に大きな問題だが、高速道路各社も逆走防止の案内看板、道路ペイントなどをしていても限界はあるようだ。ただいくら看板などで警告しても、逆走している当人がその認識がなければもうどうしようもない。
■拡充する車両の安全装備だが課題は包括的なコネクテッド?
こうなると逆走を自動で防ぐ、もしくは逆走してしまった車両を自動で路肩などへ停止させる技術を期待する声も大きい。
すでに自動車メーカー各社は運転者の異常時に路肩などへ安全に停止する技術を開発中だが、これは心臓発作などの急病時の対応であくまで順走時のもの。これらの技術を活用すれば逆走時でも路肩への自動避難は充分に可能になるはず。
ただ逆走となると重要なのが逆走後すぐに停車させること、そして本線に出さないことになる。速度の落ちた合流路の逆走ならまだ事故も軽度となる。
万が一本線に出てしまった場合は現状では逆走車に向けた看板での警告、そして走行中の他車への電光掲示での警告、パトカーなどでの通行止めなどで対応しかない。とはいえ将来的には車車間通信で走行中の車両に警告を出し、そして車路間の通信で通行止めや速度制限、パトカーによる誘導などがより即時的にできる可能性があるだろう。
もちろん現状ではそのような安全装備を装着した車両が普及するには時間がかかるし、行政も含めての包括的な対策がすぐに実現できるとは言い難い。アナログ戦術ですべてのインターチェンジの出入り口に人員を配置するのも難しければ、監視カメラ映像をAIを使い逆走車を判別するなどの対策は練れそうだ。
ネクスコ東日本の調べでは2018年には死傷事故が14件発生しておりそのうち1件は死亡事故になっている。その他の事故と比べ死傷に繋がるのは5倍の割合となっていて、逆走がもたらす被害の大きさはすさまじいことが分かるだろう。
どうにかこれ以上、クルマで苦しむ人が生まれないようメディアとしても安全装備の拡充など啓蒙活動を続けていきたい。
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