今回のワンポイント確認は、「ホンダはアコードを、日本で売る気があるのか」である。

日本市場に於いて、国産セダンは絶滅危惧種に登録されるんじゃないかと心配している私である。令和初期までは、「人と荷物のスペースは分けたい」というセダン信者の意見もかろうじてあったけれど、このところの夏の酷暑では、人のスペースとつながっていないトランクはエアコンの冷気がまったくいかず、入れた荷物がもんわりと熱くなってしまう。

気候変動は、使い勝手の良し悪しすら左右してくる。もっとも、このクラスの国産セダンのトランクに精肉や牛乳を入れるケースは少ないのかもしれないけれど。

◆このデザインなら、このセダンなら乗ってみたい

ホンダ アコード 新型

ロングボディで、高さをぐっと抑えられた『アコード』のデザインは、おっさんセダンとは一線を画す。スポーティ感と軽やかさを身にまとい、このところ街中で見かけるたびに、おっと二度見するほどだ。

全長×全幅×高さ(4975mm×1860mm×1450mm)の微妙で絶妙なバランス。そして、不快にならないギリギリセーフゆえにクセになる顔立ち(これまではギリギリでアウトだった)。この私が、ホンダデザインに心を揺らされるとは。国産セダンに乗る価値なしとまで思い始めていたものの、このデザインなら、このセダンなら乗ってみたい。そう思ってしまうのだ。

ホンダ アコード 新型

シート座面は、低そうに見えて乗り降りはしやすい。購買層の腹筋や脚力を考えて、ほどよい位置を狙っているようだ。ドラポジを合わせ、アクセルペダルを踏み込むと、e:HEV(ホンダのハイブリッドシステム)で、するりと加速していく。ボディは大柄だけれど、重さを微塵も感じさせず、それでいて軽すぎない加速感。悪くない。もうこれだけで及第点だ。ハンドル操作にもクセがなく、過不足なく期待通りの反応を見せる。この過不足なくというポイントを見出すための努力が背後にあるのだが。

ハンドル脇についているパドルシフトを操作することで、エンジンブレーキを効かせることができるのだが、e:HEVのいいところは、インパネに4速、3速……といった数字ではなく、下向き矢印で教えてくれることだ。数字にとらわれることなく、身体で感じながら減速していく操作が心地いい。

ホンダ アコード 新型

◆基本部分はいいが、カーナビやエアコンが使いにくい

さて、乗り心地や、後席の広さ。ロングボディゆえの圧倒的なトランクの広さなど基本部分はいいのだが、上乗せ部分、特に、カーナビやエアコンが使いにくい。

まずカーナビ。Google Mapsを採用しているのだが、Google Mapsといえば、地図表示は見にくいわ、道選びはGoogle修行(細い道を選びがち)だわ、曲がるべき場所がよくわからないわで、実に使いにくい。Google Mapsは、北米などのざっくりとした街ならいいのだろうけれど、日本の道でカーナビとして使うときは本当に凡人には使いこなせないと思う。

この場合、Apple CarPlayか、Android Autoでつないで、アプリの地図を表示させたほうが早い。私はmoviLinkを愛用している……って、トヨタだっけ。

ホンダ アコード 新型

そして、エアコン。酷暑の日本の夏に風量をこまめにかえたいとき、タッチ画面は遠いし、2度タップしないといけないしで、とっても面倒くさい……と思っていたら、Googleアシスタントがあるのでマイク機能をオンにすれば口頭で操作できるらしい。カーナビもしかりだ。ただ、カーナビにしてもエアコンにしても、一人で乗っているならいいけれど、複数人、しかも、同乗者が寝ているときの音声操作はあまり使いたくない。基本は手で、操作しやすく作っておいてほしいのである。

◆ホンダはアコードを、日本で売る気があるのか

今回のワンポイント確認「ホンダはアコードを、日本で売る気があるのか」は、サイズにしろ、使い勝手にしろ、やはり北米重視の感が否めない。北米向けにするから日本ユーザーがいじけるのか、日本ユーザーが国産セダンを選ばないから北米好みにせざるを得ないのか(まちがいなく後者)。

だけど、濃い色合いのボディカラーをまとったアコードは、ちょっと悪っぽくて日本の道でもさりげなく目立っていて、やっぱりこのデザインはなんだか惹かれちゃうんだよね。

ホンダ アコード 新型

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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