よく「黒いクルマより白いクルマのほうが熱くなりにくい」といわれるが、日産がとんでもない技術を開発した。なんと「塗ると積極的に温度が下がる塗料」! 塗るだけで車体表面が12℃、車内で5℃涼しくなるというのだから、マジですごくない?

文:ベストカーWeb編集部/写真:日産自動車

■冬の明け方起きる放射冷却を車体で再現?

新型塗料の車体は既存塗料よりも明らかに温度が低い

 ホンダとの提携話が盛り上がる日産だが、なにげにすごい発表を行った。8月上旬、「塗るだけで車体温度を下げられる塗料(自己放射冷却塗装)」という技術の実験結果を公開したのだ。

 なにやら難しい名前の技術だが、とにかくこの塗料を塗った日産リーフを炎天下に老いて置いたところ、普通の塗料を塗ったリーフと温まり方に差が付いたのだという。その差がすごい。車体表面で12℃、車内で5℃も温度が下がったというのだ。

 どうやってこんなことをやっているのか。原理はメタマテリアルという人工物質の働きでとても複雑なものらしいのだが、例えていうと、晴れた冬の明け方などに起きる「放射冷却」という現象を車体表面で再現しているのだそうだ。

 放射冷却は、太陽が地球を暖める熱(赤外線)よりも地表から大気圏外へ放出される熱のほうが多いときに起きる。日産の「自己放射冷却塗料」も同様で、塗料の中に含まれるメタマテリアルが日光の熱を反射するとともに、車内の熱エネルギーを積極的に大気圏外へ放出して、温度を下げるのだ。

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■自動車用塗料にも使える薄膜化に成功

羽田空港では自己放射冷却塗料を塗ったクルマが長期試験に供されているという

 この技術、放射冷却を研究し商品化などに繋げているラディクールという会社との共同開発から生まれたという。

 同社の技術はすでにレジャー用品や建築用塗料などとして実用化しているが、日産は自動車用塗料として求められる耐性や色の一貫性などを確保したうえで、エアスプレー作業が可能なほど塗膜を薄膜化することに成功した点が画期的だといえる。

 日産ではすでに試験車両にこの塗料を塗り、羽田空港で長期的な実験にも取り組んでいるそうだ。車両価格を左右するためすぐさま乗用車には採用できないが、まずは炎天下でも走らざるを得ない物流トラックや救急車といった車両の特装架装としての採用を検討するという。

 クルマのエアコンはエンジン(EVでは搭載バッテリー)のパワーを使っているわけだから、車体の温度上昇が抑えられればエアコン稼働率が下がり、航続距離の向上などにも繋げられるだろう。「自己放射冷却塗料」はこれからの気候変動を切り抜ける、重要なクルマの武器となるかもしれない。

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